手づくりの味 食事処たかつな
北海道釧路市。冬に訪れるのは初めてかもしれない。空は快晴。雲ひとつない。街中を通る車も少ない。人影はまばら。スピーカーから流れる屋外放送の声がよく響く。なんだか薄ら寂しい。今日のランチはバスターミナルでもあるmioで食べようと決めていた。ここを訪れるのも二回目だ。飲食店街は二階だと思ったので階段を上ったが、屋台は閉まっていた。階段を戻り一階の入口から中に入る。建物内は人も少なく静かだ。冬の釧路は観光シーズンではないのだろう。売場を通りながら飲食店を探す。
この店だ。店頭メニューを確認する。冬の道東と言えば、おいしい海鮮が豊富な季節だ。昼間に海の幸をたっぷり味わうなら海鮮丼が定番だと考えた。腹も減っている。ラーメンに定食、そしてどんぶり。
かに、さけ、うに、いくら、豚丼などなど、様々な種類のどんぶりがある。私はできるだけ多種類の海鮮を味わいたい。イクラ丼やうに丼など尿酸値が上がるような御馳走にもひかれるが、私のチョイスは北海丼、最初から目をつけていたこいつなのだ。
カウンターに座り注文を済ます。先客は一人、私が食べる始める前に店を去った。若い女性だ。お会計が750円ということは、ラーメンを食べていたのだろう。
メニュー
店頭でも確認したのだが、海鮮丼が出てくるまで時間がある。せっかくなのでメニューを見てみる。
かに、いくら、サーモン、うに、豚丼である。道東地域は魚卵やウニ、甲殻類の一大産地である。優柔不断な客のために浜丼と市場丼が用意されている。
酒のあてや珍味も多少あるのだが、メインは食事なのだろう。市場の中だ。食事のついでに一杯飲む人はいるだろうが、しっかりと酒を飲むなら近くの繁華街に行く人がほとんどだろう。
カウンターテーブルに置かれた調味料は一味と拉麺胡椒、醤油とシンプルだ。このサイズの故障が置いてあると言うことは、ラーメンを食べに来る客が少なくないことを意味しているのだろう。ランチタイムが禁煙なのは嬉しい。
海鮮丼(上)
しばらくして海鮮丼が運ばれてきた。バラ海苔の味噌汁と沢庵が付いている。私に醤油皿は不要だ。通はワサビだけで刺身を食すのである。いや、そうではない。高血圧のため単なる減塩である。バラのりの味噌汁は程よく出汁がきいて薄味だ。
サーモンの刺身はホワホワとした食感。北海道で食べると必ずこうである。臭みもなく豊潤な香りが口の中に広がる、これをゴハンが受け止める。いくらといっょに食べれば親子丼。身とは対照的な弾力のある魚卵を噛み潰すと、旨味と磯の香りが炸裂する。味もまた対照的だ。
海老は鮮度が抜群だ。海老味噌が甘い。実はプリプリでねっとりとあまい。大きいので二口で食べる。蟹は水っぽくない、しょっぱくもない。しっかりと旨みと甘味を味わえる。帆立も甘いねっとり、北海道の鮮度抜群の帆立の証拠だ。いくらと一緒に食べると旨さ倍増。いい組み合わせだ。
ホッキ貝は茹でてあるので香りが弱いが不味くはない。これもいくらが味を一段昇格させる。
丼が小さめだったので、果たしてご飯が足りるのかと不安もあったのだが、それは杞憂であった。十分な量だ。最後はほとんどいくらご飯と化していた。ああ、魚介万歳、道東万歳。
ごちそうさま
会議中、私がFacebookに投稿した写真を見た根室市民が私にたずねてきた。
「これいくらですか?」
「1800円だよ。」
根室市民は軽くのけぞって驚いていた。ランチで使う金額ではない。根室市民には海鮮など子どもの頃から食べ飽きてるのだろうが、海なし県で育ち、沖縄に住む私にすれば、道東に来て海鮮を食べないなど、焼肉屋で焼肉を食べないようなものだ。
だが、言われてみれば、ボタンエビにいくらがこれだけのっていれば1800円、それぐらいはするだろう。ケチをつけるとすればウニがいなかったことだ。冬場は根室のウニが旬なのである。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)