ハンバーグデミグラスソース

東京 ビストロ ローブン 三田 ハンバーグ

ビストロ ローブン 三田

春雨の降る港区芝の界隈。風も強く、雨は冷たく、外は寒い。こんな天気の中、どうして私はわざわざ足を運んでランチを食べていくのだろうか。それは部屋の周りに飲食店が何もないからだ。

ネットで見つけたおいしそうなハンバーグの店。なんだか見覚えのある店名だが、気のせいだろう。ここのところ、和食や中華に食事が偏っていた。

洋食が食べたい。
ハンバーグが食べたい。

いつもであれば、自分で作って家族みんなで食べるのだが、ここは東京、社宅のワンルームにいるのは私一人。仕事のために缶詰だ。

楽しみは食べることぐらいしかない。

朝5時に起きて仕事をしているが、すでに時刻は11時。起床してから今だ固形物を口にしてはいない。二日酔いではない。深い事情があるのだ。

昨晩、近所のコンビニでカットりんごが売り切れていた。以前ならばおにぎりでも買っていたのだが、減塩を心がけてからというもの「おにぎり」は敵である。

たった1個に2グラム以上もの塩分を含んでいる。

どうしてそんなには塩分が必要なのだろうか。昔ならいざ知らず、コンビニでは冷蔵庫で温度管理も徹底されている。さほど塩分がなくても痛むことは無いはずだ。

減塩を実践して4ヶ月が経った。そのかいあってか、先日の検診では血圧が126-75であった。120代の血圧など、15年以上も見たことがない。いやおそらく30歳を過ぎてから最も低い血圧だ。

減塩によって薬の効きも良くなったのだろう。

なんとしても私はあと30年は生きなければならない。せめて子供たちの孫の顔を見てからメイドカフェに行きたい、違う、冥途に旅立ちたいと思う自己満足なのである。

こんな悪天候の中を歩いてたどり着いた先にあったのは小さな一軒家であった。ビル街の古民家とネットに記述があったが、まさにその通り。ただ、古民家と言っても洋館である。

ランチタイムは11時半から。現在時刻は11時25分。店はまだ開いていなかった。

雨が降る寒い中、風が吹きサブ中傘をさして店の前に立つ。そんな私の横を老人の団体が素通りして店に入っていった。

「もう11時29分だよ。いい加減空いてるだろう。」

自分勝手なこと言いながら店のドアを開けていた。

「まだ開店していません。」

店員に冷たくあしらわれ、押し戻されていた。ドアに「Close」と書いてあるのだから、開店前なのは明白だ。店内の準備が終わり客の受け入れ体制が整えば、自動的にスタッフがドアを開け、冷たい風が吹きすさぶ店外に並ぶ我々を暖かく笑顔で迎え入れてくれるだろう。

いい歳をしてそんなこともわからないのだろうか。まさに暴走老人である。

メニュー

数分後、店のドアが開いた。中から出てきた女性スタッフが私に尋ねた。

「予約のお客様ですか?」

そうでは無いことを告げると「少々お待ちください。」と言われた。老人の団体客は予約客だったので、すぐさま店の中へと通された。さらに待つこと5分。ようやく私は入店を許可された。団体客は二階の席に案内されたようだ。私は1階のカウンターの最奥部の席に案内される。

次々と来客があるのだが全員が予約客だ。二階席に案内される。カウンター席と厨房の一階にいる客は私一人である。新型コロナウイルスの感染対策のため、出歩く人が非常に少ないというのに、人気店だけは相変わらず繁盛してる。

さて、何を食べようか。

ランチメニューは特化してるとのことだ。うーむ、あの店と似ている。

  • ロールキャベツ(デミグラス・トマト・ホワイトソース)
  • ハンバーグ(デミグラス・トマト・ホワイトソース)
  • カレー

ハンバーグを食べに来たのだ。オーソドックスにドミグラスソースをセレクトした。

ミニサラダとポタージュ

オニオンの効いた薄味のドレッシング、みずみずしい野菜と相性がバッチリである。野菜の旨みを引き出す酸味控えめの甘酸っぱい味わいがレタスをリッチな味わいに仕立て上げる。

アクセントの干し葡萄の甘さがこの店が只者ではないことを暗示しているかのようだ。

惜しむらくはボリュームだ。ミニサラダというよりもマイクロサラダである。個人的にはこの10倍は食べたいところである。吾輩はわがままなのである。

スープはサラッとしたポタージュ仕立てのオニオンスープ。香りがいい。薄味仕立ての優しい味わい。久しぶりにスープを飲んだ気がする。胃に染み入るようだ。ああ、これは足りないと思うくらいの量でいいのだろう。

突然、店内に軽快なポップスが大音量で流れ出した。ボリュームの設定が間違っていたらしい。開店直後あるあるなのだ。すぐさまボリュームを下げて適量…だろうか。なんだか店の雰囲気にマッチしない、かなりポップな選曲である。こんなにも落ち着いた佇まいであれば別の選択肢もあるだろうに、オーナーの好みだろうか。

しばらくすると60年代アメリカ映画のサントラのようなムード音楽に変わった。こちらの方がいいだろう。

ハンバーグの到来を待ち望んでいると、急に店内の温度が下がった。客の一人がドアを開けて外に向かって叫んでいる。冷たい風が店内に侵入してくる。

寒い。すごく寒い。
早く閉めて欲しい。

スタッフに声をかけるならドアの外でやって欲しい。私よりも年上の女性だが、そんな分別もないのだろうか。暴走老人たちのちょっとした自己中心的な行為の積み重ねが今の日本をダメにしているように思うのだ。

ハンバーグ

先ほどから入ってくる予約客はほぼ年配客だ。客層の年齢が高めの店では、サラッとしたライトなドミグラスソースであることが少なくない。

だが、この店のドミグラスソースはコクと甘味があるがどっしりとしてない。ライトでもない。いや、このソースはハンバーグに最適化された味付けに感じる。

一般的にドミグラスソースはビーフシチューや各種の料理に用いられるが、これはハンバーグソースに近い味わいがある。ロコモコ丼にかけても、ハンバーグライスにかけても、激しくうまいだろうと言う想像しか湧かない。

ハンバーグはナイフを入れると肉汁が溢れてくる、と言うような事は無い。粗挽きのひき肉をしっかりとこねたハンバーグだ。つなぎと調味料は最低限に、赤身を中心とした肉本来の味わいを堪能できる作りとなっている。

これがハンバーグ用のドミグラスソースと相まって、半端ない一体感を醸し出しているのだ。

チェーン店やハンバーガーなどとは次元の異なる味わいだ。年配の客が多いのもうなずける。さらっとしていないのにくどくない、まったりとコクもあるのしつこくない。ご飯も少し硬めに炊かれていてソースをたっぷりとつけたハンバーグと食感もマッチする。

付け合わせの野菜は味付けもされてない。素材が持つ食感と味わいを楽しめるような調理となっている。もちろんドミグラスソースとの相性も抜群だ。

カレーソースのようなパンチのある自己主張は無いのだが、素材の魅力と融合し味を拡張していく。これでは箸が、いや、フォークが止らない。どんどんと食べ進んでしまう。

ご飯はお茶碗いっぱい分だ。これでは、男性には少し物足りない量かもしれない。朝飯を食べてないからそう感じたのかもしれない。メニューには大盛無料と記載があったが、見落としていたかもしれない。

だが、冷静に考えてみると、この店のランチは私の朝食の量と変わらない。やはり客層は年配者が圧倒的に多く、そしておそらく女子が多いのだろう。

価格帯からして量を求めガツガツと食べたい客が来ると思えない。おいしいものゆっくりと味わいたい、そんな人がこの店を訪れるのだろう。

ごちそうさま

爪楊枝の先端が緑色になっていた。ハッカつきのやつだ。爽快さが心地よい。

帰りがけにいそぐるを検索してみた。ビストロローブン 芝公園。やはりそうだ、きっとこれは姉妹店なのだろう。メニューが同じだった。

今度はぜひともロールキャベツを食べてみよう。

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