清水駅 清水魚市場
静岡はサッカーが盛んな県だ。静岡県には2チームある。清水エスパルスとジュビロ磐田だ。清水エスパルスは静岡市に拠点を構えるが、もともとは清水市である。静岡市と合併したのだ。
清水市は故さくらももこ氏の生まれ育った地でもあるので、駅にはちびまる子ちゃんの看板も設置されている。
その清水駅近くに位置するのが清水魚市場。鮮魚店と飲食店が併設されている。沼津港のように大規模ではないが、鮮魚が購入できるのは魅力的である。
冷凍生シラスなど、沖縄では手に入らない。
もちろんその日の獲れた地魚も手に入る。
沼津から沖縄に帰るのに静岡空港から那覇行の直行便に乗ることにした。その途中、清水港に立ち寄ったのである。
うおかん
鮮魚を購入し早めのランチタイム。このために朝食は抜いてきた。
刺身は食べたくない。魚市場の食堂だから刺身だらけだ。買ったばかりの鮮魚を自宅に持ち帰り、今夜は家族で刺身を楽しむのだから、今は生魚を食べたくないのだ。
なので当初は魚市場での食事をやめようと考えていたのだが、フライトの時間もあるので、思考を変えてみた。
生魚を食べれない設定でランチを探せば良いだけなのである。
さて、何を食べようか。
糖質はダメ、塩分もダメときてその上に生もの禁止だ。あくまでも設定だ。まず目についたのがマグロメンチとキャベツが食べ放題の店。うーん、なんとなくパス。
次に目についたのがこの店だ。
なかなかよさそうな気がしたので店に入る。店内はまばらに混んでいた。
メニュー
いよいよ本日のランチについて脳内協議に入る。刺身や海鮮丼メインの食事は禁止である。店頭で見かけた揚げ物、いわゆるおさかなフライなんぞがいいのかもしれぬ。
ランチメニューが10時から食べられるのは市場ならではだろう。いずれも魅力的だが、メインが生魚であるからスルーだ。
脱力感あふれる手書き文字で記された本日のおすすめ。なんだかちびまる子ちゃんを彷彿とさせるのは、この地ゆえだからか。いずれも生魚だ。それだけ新鮮なのだろう、鮮度に自信があるのだろう、魚が美味いのだろう。
自宅に帰ってからが楽しみだ。
結局、店頭メニューで目をひかれた地魚フライ定職をセレクトした。
地魚フライ定食
お冷やの緑茶が静岡にいることを実感させてくれる。お茶が生活に密着しているのだろう。焼酎お茶わりのことも静岡割と呼ぶくらいだ。
定食は本日のおすすめ、刺身、フライにご飯と味噌汁、箸休め2種で構成されている。
本日のサービス
マグロほほ肉の煮付け。かなりのボリュームである。形状はまるでソーキだ。色といい形といい、沖縄そばの載っている骨付きの本ソーキそのものである。
骨からするっと剥がれた肉を食べてみる。味付けは見た目よりも薄い。マグロの煮付けを食べる機会はそうそうないが、ほほ肉だけは別だろう。煮つけが定番の気がする。
そういえばだいぶ前に沖縄の小料理屋でマグロの目玉入りうどんを食べたことがある。なかなかインパクトというかグロい料理であった。火の通し方が甘かったのだろうか、やたら生臭かったのが記憶に残っている。
だが、こいつは生臭くなどない。カツオよりも癖がない。マグロの煮付けとはこのような味なのだろうかと感心しながら食べるが、ご飯が欲しくなったので、いったん箸を止めた。
しばらくしてフライと刺身が運ばれてきた。
刺身盛り合わせ
刺身はタチウオ炙りとイシモチ、マグロの赤身とビンチョウだ。同じマグロなのに、光沢も色彩もこれほどまでに違うのかと毎回感心する。
ピンクはびん長まぐろ、赤身はおそらくメバチだ。
タチウオはとても淡白な魚だ。身が柔らかいので皮付きのまま、火で炙り皮を柔らかくする。焦げ目が皮の裏に潜む旨味を濃縮し、単調なタチウオの味に広がりを加える。それをワサビだけでいただく。
うん、脂ものっていて悪くない。
石持ちはたっぷりと脂がのっている。とはいえ白身なので味は淡白だ。舌触りが良い、ご飯と一緒に食べるのも問題ない。まぁ、こんなものか。
いしもちフライ
いよいよフライの番である。タルタルソースをつけ、箸でつまんだフライをかじる。
なんだこれは?
さくっと軽い歯ざわりとともに薄い衣の中から出現したのはほんわりとした白身の魚。フライを食べてこんなにもふわふわな経験はあまり身に覚えがない。メンチカツどころではない。野菜とも違う。まさに魚だからこそなせる技か。
味ははっきりってフィレオフィッシュだ。マクドナルドのバイト時代を思い出させる。
しかし、その味わいは似て非なるものである。工場で機械が均一に生産し急速冷凍され日本各地に運ばれたマクドナルドとは別物だ。
一緒にするのは失礼だ。
職人がさばいたイシモチに手ごねで丁寧に衣をつける。だからこそこの薄くて軽い衣が実現する。業務用の冷凍ではこれほどの薄くできない。
そして身だ。冷凍ものを一律には非難しない。だがこのあまりにもふわふわとした上品な味わいと食感は、機械で生産した料理や、冷凍の魚では実現できないではないだろうか。
もちろん鮮度の良い特殊な冷凍技術を用いたものであれば別だが、それにしても生の状態に戻してから揚げる必要があるだろう。
こんなにうまい魚のフライ送ったのは初めてだ。こないだハタハタのフライを食べてもうまいと思ったが、イシモチはそれをかなり上回る。
なんといっても厚みが1センチ以上はあるのにこれほどのフワフワなのだ。イシモチはそれほど厚みのある魚ではない。おひょうとも異なる。
さらにタルタルソース、たまねきの爽やかな香り漂う酸味控えめで薄味のソースは、あくまでもフライのサポートに徹した味付けである。
これがあるとないとでは全くフライの味が異なる。
最近は揚げ物にソースをつけて食べるのが苦手になってしまった。だがタルタルソースは私に許された数少ない調味料のひとつだ。
フライだけで食べるのと、タルタルをつけて食べるのとではテイストも風味の広がりも全く違う。
2切れほど食べたところでタルタルソースがなくなってしまったが、スタッフに追加を求めると笑顔で応じてくれた。
これは食べ切らなければ失礼だ。遠慮なくたっぷりといしもちフライにタルタルソースをつける。大量につけても酸っぱすぎることもなく、しょっぱすぎることもない、なんとバランスが取れたタルタルソースなのだろうか。
おそらくこの店手作りのオリジナルであろう。
ごちそうさま
お腹が満杯である。ご飯をお代わりしなくて正解であった。
さかなフライの奥深さをさらに思い知らされた逸品であった。味やサンマ、シシャモなどの青魚がすべてなのではない。地魚もフライにすることで、上品なタルタルソースを合わせることで、魅力を限界まで引き出すことができることを経験した。
店を出て、マグロカツ食べ放題の店を見た。最初はここに入ろうとしたが、いしもちのフライを食べて正解だった。
まだまだ私の知らない素朴な魚料理が、世の中には満ちあふれている。そんなことを再発見できたのが今日の成果だろう。
さあ、沖縄に帰ろう。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)