牛肉のラグーとウドのタリアテッレ

東京 浜松町 RISTRANTE Casa Setouchi

カーサ瀬戸内

昨日はランチもディナーも豚肉だった。今朝などは朝から豚バラ肉とパクチー炒めを食べてしまったのだ。朝食の前には昨晩から八時間煮た豚てびち赤ワイン煮の仕上げを行った。

しばらく豚肉は食べたくない。

肉を食べるなら牛か鳥だ。今晩は和食だし、昨日は中華ばかりだったから麻婆豆腐も刀削麺も無しである。これらから導かれる答えは洋食だろうか。

以上から本日のランチ、ルールは「豚肉及び和食無し縛り」である。などと思いつつ狙っていた蕎麦屋は定休日だ

どないすんねん?

あてもなく金杉橋に向かって歩く私の前に現れたのはオシャンティーなレストラン。以前から前を通るたびに気はなっていた。この店は本日の条件に合致する。いい機会だ。

メニュー

コースは二つ。パスタオンリーとパスタ+メインである。ちなみにパスタの量は80gというので明らかに足りない。大盛は120gとのことだが、いっそのことメインもつけてしまえばいいだろう。

ランチに2700円はゴージャスだが、たまにはいいだろう。せっかくの落ち着いた店だりゆっくりと食べようではないか。

BGMは静かに響く会話だ。音楽は聴こえるか聴こえないかの音量。太陽が吹き抜けから燦々と降り注ぐ。コロナウイルス騒動など忘れさせてくれるかのような設えだ。

落ち着く。
心から落ち着く。

サービスもなかなかのものだ。忙しいランチタイムでは味わえない、ここだけ時間の流れが異なる。まさか、次元断層ではないだろうな。

カトラリー置きがあるが、ナイフとデザートスプーンは前菜のみ使用のようだ。下げられた。

前菜

イタリアのハム、モルタデッラ。少々塩辛いがハムカツを食べてるような味わいだ。初カツオ、さわらのフリット、キャベツとホンビノス界のスープ、パーニャカウダ、豆が甘い。アンチョビソースとの相性もいい。野菜のカットが食べやすいようにかつビジュアル的に映えるよう考え抜かれている。

カツオは酸味の効いたソースとの相性が抜群だ。フリットとはカリッと上がって香ばしい。スープはほんのりと磯の香りが漂う甘さ控えめな上品なポタージュ。

牛肉のラグーとウドのタリアテッレ

あっさりとした柔らかく煮込まれた牛のラグーにうどを合わせた一品である。ラグーとは煮込み料理のことだ。ミートソースもラグーの一種である。

ちなみにタリアテッレとはイタリア北部での呼称で、日本人には「フェットチーネ」の方がなじみがあるだろう。こちらはイタリア中南部での呼称のようだ。

パスタの香り、チーズのコク、ウドの味わいをしっかりと吸着させたフェットチーネ、時折口の中に広がる刺激は粒胡椒か。

うどと牛肉の相性はどうかと一抹の疑念もあったのだが食べて納得。うど好きにははたまらない一品だ。味わいもライトなのがいい。

春の訪れを爽やかに告げつつ、肉でしっかりと重みを出したバランス感覚が素晴らしい。

「どうですか?」

スタッフに感想を求められたが、とっさに出た言葉は「美味しいです。」なんのひねりも芸も無い。つまらない男だな、私は。

さわらのソテー白ワインバターソース

皿が熱い。料理が冷めないような工夫はそこらへんのランチではあり得ない。マヨネーズにも似た香り、ソースに柑橘が入っているのだろう。

カリッと皮が焼けたさわらは食感も香りも良い。付け合わせはレンコン、芽キャベツ、スティックセニョール。グリルされて香ばしい。素材の味を素直に感じられる。

芽キャベツの甘さ、スティックセニョールの匂いが春の訪れを告げるかのようだ。鰆も魚偏に春と書く。身も柔らかく臭みなど微塵もなく、こんなに美味い魚料理を食べたのは久しぶりだ。

ごちそうさま

締めは熱々の紅茶。ああ、落ち着く。

静かにピアノが流れる店内。男性客は私だけ。よくあるパターンだ。いわゆる「場違い」と言うやつだ。

いくら空気が読めない私でも、この空間でパチスロ必勝マガジンを読んだりはしない。そもそも雑誌など買わないではないか。スマホアプリのdマガジンで読めばいいのだが、半年以上起動していない気がする。

スマホの画面を見て現実に引き戻される。時間だ。行かねばならぬ。

この店は通うことにしよう。自分にご褒美の日のランチにうってつけである。

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