肉マ-スそば

沖縄県那覇市 安里 肉マースソバ マサミ

安里駅 肉マースソバ マサミ

午前中に会社で会議を終えた後、栄町市場でランチにしようと思ったのだが、これといった店が見つからなかったので、ネットで検索した沖縄そばの店に行くことにした。

肉マースそば。

沖縄そばは塩が肝心だ。こだわりの店主によっては麺とスープで使う塩を変えているくらいだ。そして肉。三枚肉にしろ、ソーキにしろ、丁寧に軟らかく調理したものがそばに合う。

しかしここで一つ疑問が湧いた。「マース」を名乗るのであれば、「そば」ではなく「すば」ではないだろうか。「沖縄すば」が正式な地元での呼称だ。

なぜならば沖縄の方言には母音が3つしかない。「あいうえお」は「あいういう」となる。

選挙で「江原さん」と「伊原さん」が立候補したときに、いずれもが「いはらをよろしく!」と連呼するので混乱したとの逸話があるくらいだ。

などと考えているうちに店にたどり着いた。

メニュー

店に入ると相対したのは券売機。味付けとサイズの組み合わせの実である。サイドメニューはライスの実。ここまでシンプルだと潔ささえ感じる。

選択したのは普通の大。

そばが出てくるまで

店内は観光客ばかり。少しとっつきにくそうな店主が一人でワンオペしている店である。その店主が無表情で私に告げた。

「食券は風で飛ばされるので手元に置いといてください。」

店内は黒基調のシックな内装。カウンター8席のみ。テレビでは昔の米国映画が流れている。モノクロだ。水はセルフだ。ワンオペの基本だ。琉球グラスだ。

カウンターテーブルに設置された調味料は4種類。お洒落で清潔な金属容器に格納されている。トイレは店の外、ただの洋式トイレである。

なかなかそばが出てこない。まるでラーメンを作るかの如く、複雑な工程で黙々と店主は調理している。どんぶりに丁寧に麺を盛っている。まるで高級な和食を作っているかのような手つきである。

食券を買ってから18分が過ぎ、ようやく私の番だ。食券を店主に手渡す。カウンターに盆が置かれる。調理が始まる。

  • まずは肉をスライスする
  • 筋切りだろうか、肉を包丁で刻む
  • どんぶりに油とスープの素、その他を入れる
  • 麺をゆでる
  • 麺をゆがく
  • どんぶりのスープを出汁で割る
  • 余分な油をとっているのだろうか

こんな複雑な工程で作る沖縄そばを初めて見た。そうしてようやく私の眼前に丼が置かれた。

肉マースそば

中身を確認する。

え?
塩ラーメン?

「マース」は沖縄の言葉で塩を意味する。「肉マースそば」を標準語に直せば「肉塩そば」となる。だが、店名にウチナーグチ(沖縄本島の方言)が冠してあれば、沖縄そばだと思うのは必定であろう。

なるほど、だから「すば」ではなく「そば」なのだな。

スープ

透明感あふれる黄金色。麺がとても白い。ラーメンを思わせる。確かネットには米粉を使っていると書いてあった。みずみずしく鮮やかな緑のスプラウト及びネギのトッピングが、ビジュアル的にも食欲をそそる。

まずはスープを飲んでみた。脂っこさはなくあっさりしている。おそらく鶏油である。塩が少々きついが旨味もコクもしかりしている。

これはやばい。

一口だけ、あと一口だけと思いながらも、ついついスープ飲んでいる自分がいる。あと一回だけを朝まで繰り返すファミコンで留年した大学時代を彷彿とさせる。いや、銀河英雄伝説(旧作、全110話)をあと一話だけと気がつけば朝になって生活リズムが…

どうでもええわ!

とにかく、これはあかんやつだ。このままでは本日の塩分許容量を軽く超えてしまう。飲んじゃっダメだ、飲んじゃダメだ、飲んじゃダメだ。

気持ちとは裏腹にスプーンが止まらない。体は正直やなあ、言ってることとやってることがちゃうやんけ。

何とか最後の理性を絞って飲むのを止めた。

続いては白い麺である。米粉が使われているとネットに書かれていた。断面が四角くない。おそらく製麺機で押し出して整形しているのだろう。

縮れていないまっすぐなうどんのようだが、食べればしっかりとラーメンの味わいが口の中に広がる。コシもしっかりしている。

チャーシュー

刻まれたの、包丁が入れられたもの、スライスしただけの3種類。物理的な状態で味わいが異なることを証明している。

共通してるのはどれも豚肉の持つ力強い肉肉しさを堪能できるということだ。

メンマ

柔らかく、かといって自己主張が少ない、スープにも麺にもマッチしたシナチクである。一品一品が吟味された店主のこだわりを感じることができる。

それはラーメンの調理スタイルからも十分に感じた。

まとめ

後半に柚子七味を加えて食べるようにと、店主より勧められたので試してみる。調味料の容器はマグネットでくっついてるので非常に扱いやすい。

まさに柚子胡椒味がいっそう価値を上げ、リッチなラーメンとなる。前半がおしとやかならば落ち着いた色彩とすれば、後半はまさに花開いた極彩色のようだ。

ごちそうさま

こいつはうまい。塩ラーメンは非常に難しく、ラーメン屋も敬遠すると聞く。非常に実力のある調理師でなければ塩ラーメンを前面に押し出すことはできないだろう。

それが長らくラーメン不毛の地と呼ばれた沖縄で、こんな素晴らしいラーメンに出会えるとは、人生何が起こるかわからない。

そもそも私は沖縄そばを食べに来たのだ。ラーメンを食べにきたわけじゃない。それなのに満足だ。うれしい出会いであった。

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