大阪市 新梅田食道街 天ぷら ひいらぎ
沖縄から伊丹経由で梅田に来た。明日の不動産セミナーのためだ。いつもは担当スタッフと前夜祭、ランチ、打ち上げと三食を共にするのだが、この日は仕事が立て込んでいて、私だけ別行動と相成った。ホテルに着くとパソコンを広げて資料を作り出した。明日の朝の打合せに使うのだ。
一段落したのは二十時過ぎだった。メシを食べに行こう。新梅田食道街はホテルのすぐそばだ。何か食べられるだろう。軽い気持ちで向かったのが間違いであったと、このときは想像だにしなかった。
さて、何を食べようか。
条件はそれほどない。一人ゆっくり食べられる店だ。しかし、そんな店がない。居酒屋は激混み。粉物も激混み。
空いている店などない。
そんなことはないだろう。これだけの店があるのだ。一つくらいは…見つからない。気がつけばもう四十分は店を求めてさまよっている。どんどん腹が減る、喉も乾く。一人だからこそ悩む。ひとりだから入れる店がある。
お?これは?
カウンター数席しかない店だ。三人組が限界だ。ドアを開けると三人組が一組だけカウンターに座っていた。私もカウンターに座る。
メニュー
メニューを見る。コースが三種類、品数が違うだけだ。よし、ここは12種類の天ぷらで行こう。店名と同じ、ひいらぎコースだ。
ひいらぎコース
野菜スティック
調味料はピンク岩塩、わさび塩、もろみ味噌。
海老天・エリンギ・ぐじ・紫蘇巻き銀杏しんじょう
お好みでレモンを絞れと言う。お好みとは好きな調味料と言う意味で、レモンは必須である。頭がカリカリでうまい。ビールに合う、身は衣と一体化している。剥がれることはない。しっかりと水分が抜けて海老の味が濃縮されたている。
続いてはエリンギ、お好みで食すとのこと。天つゆが出てきた。きのこは天つゆと相性がいい。ヌキュヌキュした独特の食感にきのこの香り。ビールの次はレモンサワーだ。甘鯛、関西では「ぐじ」と呼ぶ。お好みとのことだ。塩で食べてみる。身がホクホクで柔らかい。まごうことなきアマダイことぐじだ。身は半ナマでトロトロだ。レモンを絞ればよかったと後悔。紫蘇巻き銀杏しんじょう。お好みだ。塩で食べる。アツアツホクホク。、シソの香りが鼻に抜ける。臭みない魚の味がぎゅっと詰まっている。レモンをかけると正解。うまさ倍増だ。
薄揚げのカナッペ
岩のりととびっこ、山芋だ。そのまま食べる。わさびのりか?朝飯のおかずみたいだが、油の甘さが天ぷらであることを思い出させてくれる。とびっこも美味い。こちらは適度な塩気だ。考え抜かれたふた品である。スルメイカは塩だ。うまい。隠し包丁が入っている。黒ごま豆腐は天つゆだ。最初は揚げ出し豆腐なような味だが、あとから黒ごまが攻めてくる。しかも甘い。豆腐は口の中でとろけてしまった。
万願寺とうがらし
塩で食べる。厚みのある身の食感に唐辛子の香りと脂の甘みを塩が引き出す。太刀魚は梅肉が苦味と臭みを消す。力強い海の香りと梅の心地よい酸味が口の中に広がる。これは、まごうことなき太刀魚だ。口直しはヒジキ大豆煮だ。少し濃いめの味付けが酒に合う。
店内に流れるBGMは70年代Jポップ。オフコースのイエスノーが、流れている。懐かしい。中学生の頃から、サヨナラよりもこちらの方が好きだった。トイレは共用だが、まさかまさかの温水洗浄便座だ。すごい。
マツタケ
お好みということだが、塩で半分食べてみる。微妙だ。バランスが悪い。きのこは天つゆだ。うおっ!香りが鼻に抜ける。まごうことなき松茸だ。隣の客がかき揚げを所望だ。でかいとのことだ。
白魚のかき揚げ
見た目が美しい。お好みだ。アツアツのカリカリ、中身はホクホク。白魚特有の苦味はない。天つゆで食べても美味いが、ご飯が欲しくなる。これだけ天ぷらを食べてもくどくない。
ラストは近江赤こんにゃく。味噌田楽の味に衣が絡んで面白い。
ここでラストオーダー。紅生姜をリクエスト。
「かき揚げって技が必要なんですよね。揚げながら寄せないとバラバラに…」
店主が言う。
「実はこんな道具があるんですよ。」
マジか?フライパンで卵を丸く焼くアレに似たやつか?Amazonで調べたらかき揚げリングなる道具が多数出てきた。
はー。
紅ショウガ
紅生姜はスライスだ。千切りではない。この素朴な味にホッとする。BGMはなぜか小室だ。安室ではない。TMネットワークだ。だよね、紅ショウガの千切りを天ぷらにはしないよな。天バルみさとはメニューを直せ。ついでにポーク玉子に甘いだし巻き玉子を使う山田村も間違ってんだよ、沖縄人は甘い玉子なんぞ食わねーんだよ。
満足だ。
ハイボールと炭酸水を買って、ホテルに戻ろう。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)