沼津港ふみの マグロとネギトロ丼生シラストッピングノーマルご飯(not酢飯)

沼津港 ふみ野 マグロとネギトロ丼

沼津港(ぬまづみなと) ふみ野

沼津駅前にてのイベントは正午で終了した。せっかくなので沼津港でランチを食べることにした。駅前からバスに乗り、終点で降りればいいだけだ。

着いてみると沼津港飲食店街が激混みであった。14時になったために支度中になる店もポツポツと出てきた。早く入店しなければ、ここまで来てランチ難民となってしまう。

私と同じく駅前で開催されたイベントに参加したスーツ軍団が、まさか沼津港までこれほどまでに押し寄せているとは、思いもよらなかった。

色の濃いスーツを着てキャリーバッグを転がしている中年男性の団体は観光地にはまったく似つかわしくない装いなのであるが、個人的にはしょっちゅう目にする光景である。

下手をすると私もあちら側にいる。

混ざりたくないので、わざわざホテルで着替え、時間をずらして単独行動をしたのだ。この後にまたスーツに着替えるのである。解団式と言う最後のイベントに出れば、ザッオーフィニッシュなのである。

目的の店はいくつか候補を決めていた。そのうちの一つを目指す。

メニュー

この店の選択肢は生シラス、釜揚げしらす、生桜海老、マグロにサーモンである。

海鮮丼には明らかに地元では水揚げされない食材が混ざっているので、生シラスとマグロに絞り込むが、そのような組み合わせの一品がない。

ならばマグロに生シラストッピングと言う荒業を使うしかない。

店内

ドアを開けて店に入る。店内は満席だ。わずか3席のカウンターに案内された。

となりの老夫婦の客が私の漬物や皿まで回してくれた。ホールスタッフも余裕がないのだろう、接客が雑であるのは仕方がないか。

お母さんたちがホールも調理も担当しているようだ。ご飯を装って魚を載せるだけだ。

まずはピンクのガリに黄色い卵焼き、緑のキュウリに白い蒲鉾。カラフルである。

突然、厨房から罵声が聞こえてきた。押し寄せる注文に対応しきれず、ややパニック気味のところに、何か不都合というか、調理場的にはあり得ないことが起きたらしい。

完全にテンパっているようだ。

それほどまでに今日は混んでいるのだろうか。考えてみれば14時なのに満席に近いのである。確かに異常事態かも知れぬ。

マグロとネギトロ丼with生シラス

生しらすが小鉢で運ばれてきた。トッピングと言ったのになぜに小鉢?

トッピングとは別皿のことを指すのか、それともこの小鉢の中身を自身でどんぶりにかけるのがこの店の流儀なのか、もしくはデフォルトですべてのどんぶりに生しらすがついているのだろうか。それでは商売にならないだろう。

意図が読めぬ。

隣の老夫婦にも生しらすの小鉢が置かれていた。食べようかどうか迷っていると、背後からお母さんが小さな丼を差し出した。こちらにも生シラスがトッピングされている。

「マグロ丼生しらすトッピングです。」

女性がメニューを復唱した。
何かおかしい。

スタッフのお母さんらはフロア内をバタバタと慌ただしく動いているため、どうも声をかけづらい。何とかタイミングを見つけて手を上げた。

「すいません生しらすが2つあるのですが。」

カウンターを見たお母さんがびっくり。別のお母さんが言った。

「隣のお客さんのでしょう。」

だが隣の老夫婦は先ほどから生しらすの小鉢を食べている。

どういうことだ?

するとそれを見たお母さんが再び告げた。

「最後のお客さんのだ。」

しっかりしてくださいねと、もうひとりのお母さんに声をかけていた。これで過不足なく私の注文は揃った。

味噌汁が濃い。鍋に底に残った部分のようだ。出汁も濃いが味噌も濃い。

魚がキンキンに冷えている。冷たい。凍ってもいないしルイベでもないのだがすごく冷たい。鮮度を保つために低温保存は必須だが、凍結寸前のような冷たさでは魚の味があまりしない。生しらすも、ねぎとろも、マグロも全てが冷却されすぎている。

ボリュームはかなりなものだ。ご飯は見た目にねっとりとしている。もしや酢飯ではないだろうか。食べてみる。食感はまさに酢飯であるが、酸味も甘みも感じられない。

炊飯時の水分が多くてベタベタになったご飯なのだろうか。それとも何か違う。

ああ、そうか。

おそらく過冷却された具材の下のご温度を奪われ、水蒸気がすべて水分となりご飯に逆流。魚からの水分も下に漏れ、あらゆる水分を米飯が吸収し、ベタベタになっていると推察された。

なので何か味がおかしい。一つ一つの素材の味は素晴らしい。生しらすは臭みもなく、苦味もなく、生姜との組み合わせも抜群だ。欲を言えば、卵の黄身が欲しかった。マグロも甘くうまみも十分にある。しっかりと熟成されている。

一つ一つは素晴らしいのに組み合わせると最悪だ。

どんぶりにご飯を装い、刻み海苔を散らし、魚を乗せる。シンプルな処理だ。ただそれだけのことだ。

なのにどうしてこんなにも素材を殺すような仕上げになってしまったのだろうか。寿司と違い技術がいるわけでもない。目利きは既に終わっている。調理場を覗くと、お母さんたちがどんぶりにご飯をよそって魚を載せている。

普段は意識しない料理の奥深さを思い知らされるような料理だ。

ごちそうさま

沼津魚市場、魚市場と言う名のレストラン街、観光地である。素人が魚を買いに来ても目的が達せられることはないだろう。明日の朝早くここを訪れるつもりでいたが、下見をしてよかった。黄金鮨の大将のセリフが頭をよぎった。

「沼津港、あんなとこいったって何も買うもんねぇよ。」

やはりその道のプロが言うことは正しいのだと改めて思い知らされた。今度来る時があるとしたら、はやはり食事が目的となるだろう。

明朝は別の場所で魚を買うことにしよう。

(Visited 1 times, 1 visits today)