東京都 新宿三丁目駅 玄品ふぐ 【冬安居】吟旬コース

玄品ふぐ 新宿三丁目の関

冬は鍋の季節だ。鍋の王様と言えばなんといってもフグである。事前にコースを予約しておいた。新宿三丁目駅のC5出口から歩いて一分のビルの二階だ。

階段を登ると店の入り口にたどり着く。

店に入ると個室に通された。席は予約済である。隣の席は食事を終えたばかりのようだ。

メニュー

メニューを見る。ふぐを堪能するなら、刺身、鍋に唐揚げの三種類は欠かせない。特に唐揚げは刺身や鍋と違い、揚げることでフグの味わいを濃厚にするだけでなく、揚げ油が魚に欠けがちなコクと甘みを添加することで、一味違うフグを堪能できるのだ。いずれも絶対に外せない。

それに白子。ポン酢でも焼きでもいいのだが、個人的には焼きがお薦めだ。いやいやフグ皮も忘れてはならない。まさにふぐ三昧。肝以外はすべて楽しめるのがフグの魅力なのである。

今回は「■飲み放題付■11月~2月末の冬限定【冬安居】吟旬コース 7,500円」を予約済みなのである。楽しみである。

冬限定【冬安居】吟旬コース

ふぐ皮湯引き

コリコリしてうまいがポン酢が多すぎだ。塩っぱい。余分なポン酢を捨てて食べる。最初に少なめと言えばよかった。

てっさ(ふぐ刺身)

刺身は数百円を追加すればぶつ切りに変更できるとスタッフから説明があった。しかしなんといってもふぐ刺しの醍醐味は薄造りである。あれを箸でガーっと数枚まとめて食べるのが、庶民のささやかな贅沢なのだ。

見た目にも美しいふぐ刺身。

てっさ、てっちり。なぜにふぐさし、ふぐちりと呼ばれるのか。フグに当たれば死ぬ。鉄砲も当たれば死ぬ。だから関西ではフグを鉄砲と呼ぶ。鉄砲の刺身だからてっさ、鉄砲のちり鍋なのでてっちり。だが、フグの唐揚げを「てっから」と呼ぶのは聞いたことがない。

まずは食べる前の重要な儀式。刺身に添えられた、櫛切りされた小さな球体の一部はスダチだ。徳島県民の誇りだ。これをしっかりと絞り、まんべんなく果汁をふりかける。魚と柑橘、誰が発見したのかは知らないが、クエン酸はタンパク質からアミノ酸の旨味をしっかりと引き出す役割がある。

続いて透明感のある、脂がほのかに輝くその白い身に、原色緑の薬味ネギと、真っ白に輝く細い細いネギ、そして、原色赤に近いもみじおろしを少々のせる。海苔のように箸でくるっと巻く。おお!刺身は弾力があって臭みがない、魚とは思えない味わいだ。甘味があって、ほどよく脂がのって上品な味。薬味が短調になりがちな淡白な刺身にリッチな風味を足していく。フグの魅力を存分に引き出す。

ああ、久しぶりのフグだ。恐らく、岡山で食べて以来だ。

だが、これは薄造りと呼ぶには少々厚めだ。何枚かを一度に箸でがばっとすくって食べる、そのように調理されていない。薄造りには極薄の柳葉包丁と熟練された技術を必要とする。ふぐ料理の調理免許を持っているからと言って、必ずしも薄造りの技量があるわけでは無いのだろう。

だが、ものづくり大国である日本が、機械化しないわけがない。調べてみるとやはり存在した。

「ふぐ刺身スライサー BK-2」

1.4mmの極薄まで機械がフグをスライスできると言う。土産店で売っている冷凍刺身セットはこいつを使って生産するのだろう。

それともこの店のフグは、セントラルキッチンで加工された身欠きのふぐを使っているのだろうか。それならばふぐ調理師が店にいなくとも、フグ料理を提供することができる。この人手不足の時代、薄造りの技術を持つ料理人の確保もままならないのだろうか。

最初に食べたフグ皮の湯引きを食べて、この店は味付けが濃い事は分かっていた。その上、塩を控えている私は刺身に醤油やポン酢を使わない。そもそもスダチは徳島では果汁を「スダチ酢」として売っている。それほど酸味が強い。ふぐに薬味をのせダイレクトに味わう。今までとは違ったふぐと魅力に気づくことができる。

これならば、うす造りでなくとも、いや少し厚めの方が、ふぐをしっかりと味わえるとだと気付いた。

私にはこれもアリだ。

ふぐの唐揚げ

これはまたしっかりとフグを味わうことができる調理法だ。身が厚い部位を使い、薄くコーティングされた衣はカリカリと香ばしく、内側から出現する純白のホクホクとした身は、加熱により水分が抜け、旨味が濃縮されている。刺身よりも力強い味わいにはレモンだけで充分である。

そう言えば、けいたまもフグの一夜干しを貪り食っていたな。

ふぐちり

そして本日のメイン、てっちりの登場である。美濃紙を使った紙鍋だ。白い紙に黄金色の出汁がたゆたう。

先に骨周りの部位と野菜を入れ、五分ほど加熱して出汁を取る。その後、フグと野菜を食べ終えたら、フグ皮のあたりをしゃぶしゃぶにして食べるとのことだ。

フグのしゃぶしゃぶは初体験であるな。いつも思うことだが、ふぐちりはアクがほとんど出ない。魚を入れると、その生臭さ、汚れた部分が灰色のアクとなり、煮立った鍋のよどみに瘴気のごとく浮かび漂う。これをすくい取って鍋を浄化し、雑味が出ないようにするのが鍋奉行の重要な仕事である。

だがふぐちりでは澱みが真っ白である。これをアクと呼んで良いのだろうか。鍋奉行の仕事はあまりない。

白菜がくたくたに煮えたところで、一旦火を弱める。IHなので、スイッチを押すだけだ。簡単かつ安全だ。鍋料理には良いだろう。しっかりとフグの旨味を吸収した野菜を食べる。さすがに塩分控えめの私でも、ごく少量のポン酢をつけて食べる。最初に出された薬味がたっぷりと入ったポン酢から上澄みの薬味だけを別皿に移し、私専用の鍋調味料としたのだ。

美味なり。

野菜もいいのだが、たっぷりと旨味を吸ったくずきりがたまらない。私はくずきりが大好きだ。

フグ皮しゃぶしゃぶ

そしてついにこの時がやってきてしまった。初体験のふぐのしゃぶしゃぶだ。フグ皮を沸騰した液体に浸す。30秒ほどで取り出す。コリコリと弾力のある食感をイメージしながら口に入れた。

あれ?

口の中ですーっと溶けた。溶解した。消滅した。なんだこれは。

続いて透明な皮のような部位を鍋に入れる。なんと、鍋の中でみるみる小さくなっていくではないか。慌てて箸で取り出そうとするが、つるつるっと滑って掴むことができない。鍋すくいに持ち替え、煮えたぎる液体の中からサルベージし、自分のとんすいに置いた。すかさず口に入れる。まるでオブラートだ。驚いた。フグ皮はコラーゲンだと初めて体感した。

そして薄くカットされた最後の一片。皮とコラーゲンで学習した私は、煮過ぎないように気をつけてしゃぶしゃぶにする。薬味及び微量のポン酢とともに食べる。

おや?

こいつはしっかりとした弾力がある。湯引きのようなコリコリとした食感はないが、しっかりとした筋肉、まさに地鶏の肉を噛んでいるかのような不思議な食感だ。しつこいようだが、魚を食べているような感じがしない。

ああ、フグとはかくも美味なるものか。

白子焼き(オプション)

コースの料理は終了した。残るは雑炊のみ。だが、まだ味わっていない逸品がある。そう、フグの白子だ。ポン酢で食べるのもいいのだが、食感と言い、味わいと言い、個人的にお薦めは焼き白子なのである。オプションで注文する。

芳ばしそうに軽く焦げた、張りのある極薄の皮に包まれた白子。口に入れれば甘くてコクのある、濃厚でクリーミーな味わいが一気に口中に広がる。ああ、これだ。焼き白子だからこそ享受できるというものだ。ああ、冬が来たのだな。

〆の雑炊

こうしてすべてのプログラムが終了した。あとは〆を残すのみだ。ざるに開けられたご飯と青ネギ、溶き卵に漬物が運ばれてきた。ご飯を洗うとぬめりが減るので、仕上がりがさっぱりするのである。

ふぐと野菜いの旨味をたっぷりと含んだ出汁にご飯を入れる。雑炊はすべて店のスタッフが作ってくれるので、見ているだけでいい。ある程度、ご飯が煮えたら溶き卵を手際よくいれる。白いご飯の中に、黄色いカーテンが舞う様だ。火を止めたら青ネギを投入。完成だ。

雑炊を香の物といただく。ああ、濁りの無い淡白な味わいに少々塩気が効いた漬物がとてもよく合う。減塩主義の私は食べすぎ注意なのである。少しだけかじる。

こうしてコースは完了した。満腹だ。ふぐをしっかりと堪能できた。関西のように、東京でも気軽にフグが食えるようになったのだと実感する。次に味わえるのはいつのことだろうか。

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