郷土料理 武田
だからといって、ランチにキノコを食べる気などはさらさらない。ラーメンや豚丼はどうでもいい。道東なら海鮮。
ネットで検索だ。
ほう、この「郷土料理 武田」がよさそうではないか。ホタテ稚貝の味噌汁にも心惹かれる。ここから三分ほどで着くみたいだ。うん、いいね。ここにしよう。
メニュー
さて、何を食べようか。
激しく迷う。普通に考えれば、店がイチオシの海鮮巴丼だ。この時期の、この辺りのウニは美味いものだろうか。タラバガニにはあまり興味がない。
メニューを見る。丼ものは何か気が乗らない。海鮮丼はなくちらし寿司になるとある。
メニューをめくる。ホタテカレー。惹かれる。カレーと海鮮の組み合わせもなかなかなのだ。これか、標津産のホタテ子と貝ひもを具にしたとある。
ホタテ子と貝ひもか…ある意味、産廃だな。
さらにめくる。お刺身定食もありか。いっそトンカツ定食にするか。
うーむ。
迷う。
激しくカレーに惹かれる。
海鮮は食べ飽きてきたかも。それに夏はダメだ。花咲カニ以外は話にならない。海鮮を味わうならば、寒い時期に来なければならぬ。
ん?標津鮭三代漬け丼だと?
鮭、ホタテの漬け、イクラに鮭節。標津町の特産物がてんこ盛り。これだよ、これ!早速オーダーするのだ。
「プラス190円で、味噌汁を鮭のあら汁かホタテ稚貝の味噌汁に変更できまーす。」
ホールの女子の明るい声が私の判断力を鈍らせた。味噌汁でいいと決めていたのに、ホタテ稚貝の味噌汁に変更してしまった。
まあ、いいや。
飛行機の時間に間に合えば、それで良い。一人カウンターでぼーっとしている私を見かねてか、ホールの女子がテレビをつけてくれた。なんだ、ボクシング協会の会長が辞めたのか。深夜一時にインタビューって。助成金を返すのにロレックスを売ったとか、言わなくてもいいことを。
静かだ。お座敷には客が大勢いるようだが、カウンターには私一人だ。店員すらいない。テレビの音だけが大きく響く。邪魔が入らなくていい。食事は一人で食べた方が味わえるのだ。
いや、本音を言えば家族と一緒に食べたい。
ホタテ稚貝の味噌汁
ぼーっとしている私の前にそいつが運ばれてきた。
まずはホタテ稚貝の味噌汁。ものすごい存在感だ。まるで帆立があさり感覚だ。初めての経験にわくわくする。まずは一口。
ほー。
帆立の香りが匂い立つ。あさりと違って身がふんわりしている。稚貝でも、小さくても、しっかり帆立しているのだ。殻があると食べにくい。すべての稚貝から身を外す。色が二種類あるな。これは表と裏の違いだ。表の殻は茶色、裏というか、下側のほうが白いのだ。お椀から殻がなくなると、見た目にはますますあさりの味噌汁と区別がつかないが、食べれば帆立だ。
標津鮭三代漬け丼
鮭の身の上においてあるワサビを、何も考えずに醤油に溶いてから後悔した。
これ、漬けだ。鮭とホタテは漬けだって、メニューに書いてあったじゃないか。
いいや、鮭をわさび醤油につけて食べてみる。身がふんわり。ネタとご飯の間にはガリとゴマが敷いてある。いいアクセントだ。でも、やっぱりワサビのほうがいい。店員を呼んで、わさびを追加で出してもらった。
鮭は臭みなく甘い。ちうか、鮭独特の香りがしない。帆立とねっとりして漬けで甘さが増幅。イクラうまい。鮭節と相性バッチリ。ご飯がススム。米の量が控えめなのも嬉しい。浅漬けもうまい。鮭漬けとイクラ、帆立漬けとイクラのコンビネーションを楽しむ。ほんのり甘口で具沢山の帆立稚貝の味噌汁が、漬け丼の味を引き立てる。
最後はイクラご飯でフィニッシュだ。
頼んで正解。また食べに来たい。うーん、夜に飲みに来たいな。そのときは落葉も食べられる嬉しい。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)