こんなところにトンカツ店
朝早く起きてホテルの朝食コーナーに行く。ここは朝ごはんが自慢のホテルなんだそうだ。それは楽しみなことだと勇んで行ってみたものの、やはり私としては豪華とは思わない。きっと、普通はこれですごいんだ。確かに充実してると思うよ。
だけどね、北海道で朝食を食べてしまったら、もう戻れないんだよ。あれこそ豪華朝食なんだよ。魚卵食べ放題。焼きたてのグリル。充実のおかず。洋食も和食も飽きたらカレーがオススメ。
ああ、ホテルサンプラザ。
そそくさと朝食を済ませ、空港に向かう。福岡から羽田に行き、リムジンバスで新宿へ向かうのだ。空の上はいつでも快晴だ。夏の風物詩、入道雲が遠くに見えた。
こんなところにトンカツ店
新宿で打ち合わせをささっと済ませると、ランチの時間だ。打ち合わせ先の中本氏が店を案内してくれると言う。なんの店かと聞けば、トンカツだとのこと。
いいねえ、トンカツ。大好きだよ。
高層ビル群の一つ、一階が車のミニの販売店になっているビルに入って行く。
新宿グリーンタワービル。
こんなところに飲食店があるの?テナントは歯医者とか、建設会社とか、そんなのばかりなのだが。
戸惑う私をよそに彼は建物の奥に躊躇なく進んで行く。私の感が囁く。
「彼は常連だな。間違いない。」
通い慣れた道を行くがごとく、自信に溢れた足取りで歩を進める彼が頼もしく見える。通路の先で、急に視界がひらけた。吹き抜けだ。こんなところに店が本当にある…んだ。
とんかつ 伊勢
店はさほど混んでない。座敷席に通されると、早速メニューを見る。この日は四元豚のヒレカツ定食がランチサービスなのだと言う。
ヒレカツもいいのだが、私は豚の脂を味わいたい。ロースカツだ。三種類のどれにするか。
- ランチロースカツ
- ロースカツ定食
- 特選ロースカツ定食
店員に違いを聞く。肉の質が違うのだと言う。一番いいのは特選で、無印、ランチと肉のランクが落ちるとのことだ。
うーん、今回は無印で。
中本氏はテーブルの上に置かれている、マスタードの容器を手に取ると、蓋を開け、すごい勢いで混ぜ出した。あっけにとられて見ている私に、中本氏が解説する。
「この店のカラシ、こうしてよく混ぜておかないと、全然効かないんですよ!」
三分間は混ぜていたように思う。
店内は落ち着いた内装で、テーブル席とお座敷に分かれている。中本氏によれば、13時を過ぎると急に客が引くとのことだ。
ランチロースカツ
トンカツが運ばれてきた。ごはん、味噌汁、香の物。キャベツとごはんはお代わりできるそうだ。見た目は美味そう。衣も厚くなく、肉の厚みは十分だ。キャベツの薄さはまあまあかな。ソースはねっとりの濃口とサラサラの薄口の二種類だ。トンカツソースとウスターソースみたいにも思えるのだが。ここは濃口で行くのだ。気がつけば中本氏がまたカラシをこねている。やっぱり趣味なんじゃないのかな。練りあがった(?)ばかりのカラシを分けてもらい、キャベツには和風ドレッシングをかける。こいつはノンオイルではない、本物のドレッシングだ。
まずはカツを一口。衣がサクッと、続いて肉がジュワッと。ああ、やっぱり肉は脂だな。肉と脂が一体となって醸し出す味わいが口の中に広がる。
美味い。
すかさずドレッシングのかかったキャベツを口に放り込む。ご飯はいい。トンカツを口に入れたら、キャベツかご飯かどちらかなのだ。なぜなら、トンカツにキャベツは鉄板に美味い。口の中もさっぱりする。最初にこのコンビネーションを見つけ出した人は誰だ。
調べてみたら、日本でトンカツを考案した銀座煉瓦亭で、若いコックたちが日露戦争で兵役にとられてしまい、簡単に作れる付け合わせはないかと試行錯誤をしていたら、店主が「キャベツは一夜漬けでも美味いのだから、生でも美味いに違いない!」と思い、試しに細切りにしてトンカツと食べてみたら、なまらうまかった、ちがう、でーじやったさー、そうじゃない、すごく美味しかったそうだ。当時の日本人は野菜を生で食べる習慣がなかったが、客がトンカツと生キャベツの千切りに魅惑され、広まったのだとか。
もちろん、トンカツとご飯の相性は言わずもがな。では、トンカツとキャベツとごはんをすべて口に入れてしまうと、化学反応により旨みが10倍に増してしまい、食欲が刺激されることにより、トンカツ、キャベツ、ご飯の無限ループが実行されると言う、恐ろしいことになるのだ。何を言っているかわからない?かいつまんで言えば、美味すぎるので、食べすぎてしまうと言うことだ。
とんかつ万歳!
キャベツはお代わりするも、ご飯のおかわりはなんとか我慢した。若者はいい。いくら食っても太らない。でもね、アラフィフになると基礎代謝も落ちてね、脂肪も落ちなくてね、お腹も凹まないのだ。糖質制限ではない。きちんと一杯は食べた。お代わりをしなかっただけだ。カロリー制限ですらない。「食べ過ぎ注意」なのだ。
満足じゃ。これから東京支店に顔を出してから、明日のために豊橋まで移動だ。
午後も頑張ろう。
とんかつ 伊勢(食べログ)
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)