沼津駅 深夜ディナー
静岡県沼津市23時。長い長い会議と大会が終わった反動で色々と一人で楽しんでいたところ、晩御飯はこんな時間になってしまった。
浜松町でも23時を過ぎれば食事がなかなか困難である。東京ならばおとなしく諦めてセブンイレブンの冷凍食品を塩分量をにらみながら買って帰るのだが、ここは沼津だ。しっかりと地元を味わいたい。
魚を食べたいが、昼の海鮮丼でやられた感がいっぱいなので和食以外にしたい。
ラーメン屋、それはない。
中華屋、いくつか見てみたが微妙だ。
何を食べればいいのだ?
夕げを求めて沼津駅前南口は俳諧していると、ふと目に入ってきたのはフレンチ居酒屋の文字。一旦通り過ぎたが考え直した。
そうか、カルパッチョも刺身だ。沼津港で水揚げされた新鮮な魚のカルパッチョならばさぞ美味であろう。よしよし、フレンチ居酒屋。今日の晩飯はここだ。
フレンチ居酒屋aiai
階段を上り2階に向かう。ドアを開けるとおしゃれな店内。若い女性客ばかりだ。五十路の親父は明らかに異邦人だが、そんなことを気にしてはいられない。
カウンターに案内される。23時で食事がラストオーダーと告げられる。現在時刻はフタサンヒトマル、23時01分。いや、今ならまだ大丈夫ですと店員が言った。
メニュー
さて、何を食べようか。
パスタはいらない。
カレットやフレンチフライもあるが、これらは遠慮しとこう。
まずは野菜、そして魚介、そして肉。こんな感じだろうか。
お通しはサラダかハムかを選べるとのことなので、サラダにしてもらった。
一杯目は静岡麦酒(しずおかばくしゅ)にしよう。サッポロビール静岡工場限定品とのことだ。
食事にはピクルス、アヒージョ、煮込みの3種類をセレクトした。
サラダ
サラダはブロッコリーにカイワレ、菊芋、赤かぶ、ピクルス、人参、水菜などなど。色鮮やかな見た目にも新鮮な野菜。そしてほんのり甘い薄味のドレッシングが少量かかっている。
これは嬉しい。
おそらく素材の味をしっかりと味わえるようにと言う配慮なのだろう。
ガッツリとドレッシングをかけてしまうと酸味と香りが立ってしまい、野菜の味わいを損ねる。ドレッシングはあくまでも脇役だ。素材の魅力を引き出すのが仕事だ。
服はモデルが着るものであって、モデルが服に着られるわけではない。服は服の仕事をしなければならないのだ。
まさにドレッシング。
お通しの一品だけで店の本懐を見たように感じる。
ピクルス
008から1澤いい、甘すぎず酸味も控えめ。酸味がきつくてどれを食べても同じ味がするなんてことはない。かといって単なる浅漬けではなく、しっかりとしたピクルスの味わいがある。それぞれの野菜の素材の魅力をしっかりと生かしている。
ビールのおつまみとても良い。
ホタルイカと海老のアヒージョ
ホタルイカとえびだ。自宅で作るときはニンニクと玉ねぎをがっつりと加え、ガーリックの風味とオニオンの甘みをベースに塩味で整えている。たっぷりと出汁を吸ったアヒージョのオイルをそのままご飯にかけてもおいしい位だ。
しかしこの店は違った。
油はやはりあくまでも引き立て役。
塩味もほんのり。
繊細なほたるイカとエビの香りを損なわないよう、付け合わせは最低限になっている。
シンプルでかつうまい。
新鮮な沼津の海の幸をしっかりと堪能できる味付けだ。素晴らしい。これもまた酒に合う。
牛ほほ肉赤ワイン煮込み
そしてメイン。とても柔らかい。少しで太めの繊維質が特徴のほほ肉が、口の中でほろりとほぐれる。束ねた糸が切れたように分解していく。
味付けは上品だ。
どっしりとしたコクを残しつつあっさりとした味わい。けっしてヘビーではない。
オレンジ色をしたポテトと肉のコンビネーションも素晴らしい。ご飯やパスタと一緒に食べても間違いなくおいしいだろう。
今回は沼津ハイボールと一緒に食べた。
沼津ハイボール
酒粕を蒸留しジェリー樽で熟成させた焼酎の炭酸割が沼津ハイボールである。
とは言え、やはり日本酒の酒粕であるから、所詮は米焼酎だ。
ごちそうさま
スタッフが沖縄好きだと言うので一段と話が盛り上がった。
帰りがけに紹介されたのはサバのオイル漬け。オイルサバディン。オイルサーディンはイワシを使うが、鯖バージョンだそうだ。お土産にいいですよと勧めてくれた。
調理も雰囲気も酒も美味い魅力的な店であった。次に沼津を訪れるときは、もう少し早めの時間に来てゆったりと食事を楽しみたいと思いつつ、店を後にした。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)