蕎麦 紅花
旭川から名寄までの列車の中で、私は名寄駅前の食堂で食事をすることに決めていた。名寄の蕎麦店は15時で閉まる。駅前食堂は休憩時間の記載がない。嬉しいじゃないか。しかも、この店にはガッツリ系の名物メニューがあると言う。タクシー乗り場を通り過ぎ、食堂に向かう。
閉まってる。休憩時間だ。
辺りを見回しても、飲食店は見当たらない。
慌ててタクシー乗り場に向かうと、停まっていた車に乗り込み、運転手に告げた。
「すいません、食事ができる店に連れて行ってください。」
運転手は困った顔で答えた。
「この時間ねぇ…食事ねえ。どこが開いてるかな。」
ふと思い出して、駄目元で言ってみた。
「紅花って店はどうですか?」
運転手の表情がさっと明るくなった。
「ああ、紅花さんね!あそこなら開いてます。」
五分後、着いた先の店は暖簾がかかっていた。間に合った。
メニュー
店内に入ると、客はほぼいない。お昼には遅い時間だ。好きな席にどうぞと言うことなので、窓際の明るい席に座る。店内は落ち着いた感じで、心地よい。メニューを手に取り、最初のページを開くと、いきなり「おろしカツそば」が迫ってくる。ありそうでなかったメニューだ。心が動きそうだが、まだ1ページ目だ。メニューをめくる。
「当店人気ナンバー1 かつめしセット」むむ!これも魅力的だ。この店はカツをこよなく愛する蕎麦店なのか、地域性なのか。そう言えば、名寄は豚の産地だったような。
さらにめくる。
やまべの天ざるそば。これもそそられる。普通のメニューはないのだろうか。
ある。梅のさっぱりおろしそば。今はガッツリ食べたい。さらにページをめくる。
刺身天ぷら定食。蕎麦が付いてないよ。
さあ、どうする?
かつめしセット、ご飯少なめ。これが悩んだ末に私が導き出した答えだ。もう迷わぬ、退かぬ、顧みぬ!
トイレは店外にある。洋式で温水洗浄便座付きだ。壁には道場六三郎のサインが掲げられている。
かつめしセット
ほどなくしてかつめしセットが運ばれてきた。
まずはサラダから。おろしドレッシングがうまい。自家製だろうか。窓際に「名寄産 ひまわり油 北の輝き」を使用したオリジナルドレッシングを販売していると、説明書きがあった。なるほど。
かつめしは熱々のトンカツを、刻み海苔をかけた、これまた熱々のご飯の上にのせて、天丼のつゆをかけたものだ。衣はサクサクでなく、固めにカリカリに揚げてある。だからつゆをかけられてもベシャベシャにならない。なるほど。これは箸が進む。美味い。肉は肩ロースだ。沖縄で言うところのBロースだ。
蕎麦は喉越し良く、香りもいい。手打ちではなさそうだ。もう少し細い方が好みだが、まあ、いいだろう。つゆは甘くも辛くもない。ちょうどいい感じだ。
かつめしを喰らい、蕎麦をすすり、たまに漬物をかじる。このループを繰り返す。ご飯は少なめでなくても良かったかもしれない。天丼と蕎麦もいいのだが、かつめしもいいものだ。カツ丼のようにべちゃべちゃではない。揚げもの本来の味を楽しむには、この方がいいのかもしれない。
食べ終えて、一息つく。店員が外に出て行き、暖簾をしまっていた。店内のラジオが3時を告げる。間に合ってよかった。
蕎麦湯を二口ほど飲んで店を後にする。これで980円は大満足だ。人気ナンバーワンなのもうなづける。次回は「やまべの天ざるそば」を食べてみたいものだ。
後ほど知ったが、この店の名物は「トンカツ南蛮そば」らしい。うーん、これはあまりそそられないな。
紅花(べにはな)公式HP
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)