何年もの間、ずーっと気になっていた店がある
昼間の岩見沢市内。駅前から四条通りに広がる商店街にはあまり人影がない。商業施設「であえーる」でお年寄りのグループを見かけるくらいだ。昔からこうなのか。岩見沢で生まれ育ち今でも住んでいる知人に聞くと「いやぁ、昔はこの辺り人が多かったですよ。」という。統計データをネットで探すと人口は40年前とさほどかわっていない。住民が歳をとって外に出なくなったり、店を閉めてしまったりして活気がなくなってしまったのか。
岩見沢に来たばかりの頃はどこに何かあるのかぜんぜんわからなかったので、街中を歩き回ってみた。北海道の街は道が碁盤目のようになっているから迷うことはない。当てもなくブラブラ歩くだけでもいろんな発見ができる。どこの街でも目を引く建物や看板があるものだ。ここでもずっと気になっている店があった。
「街の小さな天ぷら家」
碁盤目になっている道から外れた、路地裏の呑み屋街というか昭和というか、長屋横丁みたいなところにある。場所が分かりにくいせいなのか、商店街に案内の看板が出ている。営業時間は昼のみ。メニューは天ぷらと天丼のみ。何年も前に見つけたけど、行く機会がなかなかない。一度だけ行ったけど休みだった。
ついにチャンス到来!
その日は朝から予定外の会議が急に入った。前日の会議が終わったのは深夜0時半。今朝は二度寝、三度寝したもののなんとか気合いで起きた。いつもなら魚卵で攻める朝食をカレーにした。なんとか時間までに商工会議所にたどり着いた。なんだかんだで昼前に会議は終わった。帰りの電車の時間まで一時間ほど。しかも今はお昼。
お、これはチャンスか?
今、食べずにいつ食べる?
行くしかない。
荷物を商工会議所に置いて外に出た。「であえーる」を目指して歩く。四条通りを進むと目印の看板がある。右に曲がるとすぐに店がある。何軒か店が並んでいる。カレー屋に居酒屋。実はこのカレー屋も気になっていた。居酒屋には興味が湧かなかった。この手の店は当たりハズレが激しいのだけど、自分の勘は「当たり」だとざわついていた。意を決して扉を開けると、思っていたより明るく、しかも満席の店内に驚いてしまった。
カウンターに2席ほど空きがあったのだけど、おばちゃんに
「相席でもいいですか?」
と言われ、女性のグループ客が座っているテーブル席に案内された。メニューは2種類ではなく3種類。外には書かれていない「海老天丼」が店内には書かれていた。
定食を頼むと、しばらくしてお茶と漬物、甘納豆のような味の豆の煮物が運ばれてきた。満席だった店内が少し落ち着き、カウンター席がひとつ空いた。そこに新しく入って来た客が座ろうとするのを女将さんが制止する。不思議に思って見ていると、女将さんは隣の店から客を連れて来て席に案内した。そう、この店は隣のカレー屋、店の名前もズバリ「隣のカレー屋」とつながっていたのだ。
自分好みの天ぷらに満足
カウンターには天丼がどんどん運ばれていく。ほどなく女将さんが私の定食を持ってきた。カリッとした細かい衣が私好みだ。おくら、エリンギ、かぼちゃ、ナス、キスに海老が二本。盛りつけも職人の仕事っぽく感じてしまう。天つゆは甘くもなく辛くもなく程よい塩加減が衣に絡み、素材の味を引き立ててくれる。なにも言うまい。美味い。それだけだ。漬物も見た目にそぐわず薄味で箸が進む。
電車の時間が近づいていたので急いで食べる。席を立ち先ほどのカウンターに座った客を見るとカレーを食べていた。隣のカレー屋も人気なのか。次回は必ずやカレーを食べようと心に誓った。
店を出ると数人が入れ替わりに入っていった。本当に人気店だ。飲食店が少ないとはいえ、これだけひっきりなしに客が来るなんて、私の目に狂いはなかった。
食べログで探すと3.15と評価が低いが、ふつうに美味いのだ。これでいいのだ。次回は必ずや天丼を食べようと心に誓った。
いろいろと心に誓い過ぎなのである。
てんぷら家
住所:北海道岩見沢市4条西4丁目
電話:0126-23-8113
営業時間:11:00~15:00
定休日:土曜・日曜・祝日
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)