国分町ディナー
仕事で仙台を訪れた。ホテルに着いたのは18時過ぎ。今晩は充電時間である。自分の体をいたわりたい。
さて、何を食べようか
仙台と言えば牛タンと新鮮な魚貝類。今日の夕食は何にするか朝から考えていた。
思い付かない。
明日は岩手県の久慈市に行く。昼も夜も間違いなく鮮魚だ。牛タンは今さらもういい。
今日のランチは、佐世保駅前のスーパーで購入した山菜などを天ぷらにし、生のグリンピースで塩ご飯を炊いた。子供たちの夜の食事も準備した。
なので揚げものは食べたくない。串揚げ、とんかつ、脂っこい焼肉もパスだ。
あっさりしていて、揚げ物ではなくて、魚介でもない。洋食も中華もこってりしているので条件を満たさない。
何を食えばいいのか。
途方に暮れる私には十分に考える時間があった。だが沖縄発仙台行きの全日空便はWi-Fiが搭載されていなかった。ネットなしに調査をすることは不可能だ。世の中から断絶された空間で私ができる事は妄想しかなかった。
チェックインを済ませると速やかにホテルを出た。すぐ近くの東芝仙台ビルに飲食店街を見つけた。
うまいもんこうじ。そうか、仙台といえば「せり鍋」もあったな。根っこまで食べるのが特徴だ。たしかにパクチーも根茎の方がダシがよくとれる。
せっかくなので他の店も見て地下街を歩くと、奥の寿司屋が目に入った。なかなか私好みの店構えだ。どんなものが食べれるのかメニューを見ていると、女性から声をかけられた。
うちの店もいいですよ。
そうなのか、店頭のメニューを見る。悪くない。当初の作戦とは展開が異なるが、この店で食べることにした。
すし 古径(こけい)
店内に客はいなかった。清潔感あふれる内装だ。ヒノキのカウンターがすし屋を主張している。
メニューを見る。おまかせが基本のようだ。ならば遠慮なくわがままを言わせてもらおう。まずはとりあえず生ビールである。
ハートランドだ。麦芽100%の知る人ぞ知る銘柄だ。この店を選んで正解だった。
おつまみ
お通しは特にない。おつまみを頼む。いきなりトロだ。わさびは静岡産を鮫皮でおろしている。
脂がたっぷりのったトロに大量のわさびを載せて食べる。ああ、たまらん。ねっとりとした生わさびの滑らかな食感と香り。トロのまったりとした舌触りとコク、ワサビのまろやかかつ鮮烈な刺激、鮮やかな緑と赤は補色関係。まさに凹凸コンビ。だがこの組み合わせは最高だ。
刺身三点盛り
続いてホタテ三品盛りだ。ホタテはしゃくしゃくとした食感だが十分にねっとりとしている。わさびがさらに魅力を引き立てる。
やはりおろしたての本わさびはいい。ねりわさびやチューブものとはまったく違う。雑味がない。本ものとはこういうものだ。
タコは北海道産である。水ダコだろう。ゆでていない生たこは塩味が効いていて食感も良く、旨味をしっかりと引き出してくれる。茹でた方が味が濃くなるが、ここは食感をとる。特に吸盤は生の方がうまい。
白身はヒラメ。縁側はかなり大きめのサイズだ。これも臭みなく脂がのっている。甘くてうまい。そしてたっぷりのおろししょうがを載せることで、さらに隠された魅力が引き出される。
しめ鯖
たらきく(鱈菊)
仙台ではまだらの白子をこう呼ぶのだ。北海道なら真タチである。ポン酢を別皿に出してもらい、きゅうりのスライスをハケ代わりにして白子にポン酢を塗りつけた。
三陸産の鱈菊はクリーミーでねっとりとして甘い。官能的ですらある。甘味は北海道産の方が強いだろうか。だが、臭みもなくしっかりと仕事がしてある。
かんぱちカマ焼き
本来は塩焼きなのを、素焼きにしてもらった。レモンをたっぷりと絞り、大根おろしと一緒に食べる。
うん、あっさりとしているがコクもある。臭みはなく、レモンがカンパチから旨みをじっくりと引き出している。酒が進む。
ボタン海老
秋田産である。大きい。舌に絡みつくようなねっとりとした感触、口の中に広がる強い甘味とエビの香り、大きいので3つに切り分けた。写真は失敗。iPhoneはマクロ撮影が苦手なのか、たびたび後ろにピントが合う。
サヨリ
地物である。大将がおろしたてのワサビを追加してくれる。美しい黄緑色が細かく飾り包丁を入れたサヨリの身に映える。
うん、脂がのって甘味と旨味をしっかりと味わえる。
少し塩気がある。大将に確認すると、少々振り塩をしてあるとのことだ。いい仕事をしている。
アナゴの白焼き
オプションできゅうりの細切りとガリの粗みじん切り、そして焼き海苔をお願いする。私のわがままにも笑顔で対応してくれるのが嬉しい。
大将は店長であり、私と同い年であった。同じく高血圧でもあった。
ノリの上にきゅうりとガリを少々のせて、その上に穴子を置き、ワサビを添えて海苔を巻く。パクッと食べる。
ああ、いいなあ。
握り寿司
締めに寿司をいただく。まずはすし屋の定番である小肌。
シャリは小さめでほんのり温かい。続いてヤリイカ。
ごちそうさま
大将と会話を楽しみつつ、仕事の行き届いた食事を楽しむことができた。こんな店が身近にあったとは驚きだ。再び訪れたいと思いつつ店を後にした。
※閉店しました
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)