青塚食堂 刺し盛 中トロ

北海道小樽市 民宿 青塚食堂 海鮮責め地獄

民宿 青塚食堂

待合せは17時半。現在時刻は18時を過ぎた。車はまだ札幌を出たばかり。行先はおたる水族館近くの青塚食堂である。知人の小樽市民と数名でこじんまりと会食するはずだったのが、数日前に突然参加者が増え、気が付けば10名以上に。場所も小樽市街の鮨屋から青塚食堂へと変更された。

11月初旬の北海道は日が暮れるのも早い。真っ暗な道をひたすら車は走る。当初は電車で向かう予定であったが、同行者がひとり、今日は酒を飲みたくないので運転手をしますと、レンタカーで向かうことになったのだ。砂川からまっすぐ小樽へ向かうはずが、私以外の全員が札幌市内でホテルにチェックインすると言う。想定外のタイムロスだ。様々な予定外の阻害要因が重なり、気が付けば30分の遅刻。いや、一時間の遅刻も確定である。

高速を降り、小樽市街を抜け、海岸沿いの真っ暗な道を走った先にポツンと見えた灯り。ここが目的地。車を停めると建物に向かった。

民宿、と書いてある。お土産屋と言うか、店頭で魚介類のバーベキューを売っているような雰囲気だが、実際にそうだとのことだった。一階にはテーブル席とお座敷席が広がる。我々一行は奥の階段から二階に登るように告げられた。

二階に上がると個室に案内された。そこにはすでにテーブルセッティングが完了した宴席と、待ちくたびれた数名の小樽市民がいた。

「待ってましたよ~!」

そう、遅刻すること70分。よくも待っていてくれたものである。今はネットがあるので、随時状況を連絡していたが、それでも人を待つのは疲れるものである。申し訳ないことである。

お通しと揚げ物

お通しは毛ガニ。いきなり重量級が来た。まるで戦術機による初戦闘でレーザー級が大量に現れたようなものだ。これが北海道だ。

それとシャコ。こんなに大きいのは石狩湾で獲れたものだろうか、シーズンが始まったらだろうか、身がしっかりと詰まっているのが分かる。すでに皮がきれいに剥かれている状態だ。個人的にはシャコが好きなので嬉しい。前に小樽の鮨屋でもシャコを食べた。石狩湾のシャコは美味いのである。

大羽の出汁揚げ。大羽(おおば)とはこのあたりの呼び名で、標準名はハツメである。メバルの仲間の近海魚だ。東北ではこの魚を「柳の舞」と呼ぶらしいが、北海道で獲れる「柳の舞」はまったくの別種である。ややこしい。癖のないあっさりとした上品な魚だ。

刺身

刺身はビジュアル的にも素晴らしい。日本の居酒屋ではお目にかかれない鮮度の食材である。大きなつぶ貝の身は歯ごたえがしっかりしていて、噛めば噛むほど香りとエキスが口の中に広がる。エビの身もねっとりとして香り良く甘い。頭の殻を引きはがして現れたの海老味噌が黒いので、もしや鮮度が悪いのかと心配になったが、この店で鮮度落ちなどありえないらしいので食べてみたところ、まったく臭みがなく、エビ味噌らしい甘さと香りを堪能できた。素晴らしい。

真イカは半透明だ。新鮮だ。しょうが醤油でいただく。身がコリコリしてうまい、熟成していないのでねっとり感はないが、十分な甘さを感じる。

塩水うにはバフンうに。なにもつけずに食べるように言われる。あたりまえだ、もったいない。せいぜいワサビだけで十分なのである。

焼き物に揚げ物

はたはたの塩焼きである。干物はよく見かけるが、塩焼きは初めてか。東北ではよく食される魚だが、私には身近ではないので、自発的に食べようとはあまり思わない魚だ。オスなので中に白子を抱えていると告げられる。

確かに腹からは、その身のサイズからは似つかわしくない大きな白子が出てきた。加熱されてエキスが濃縮された白子は甘くて上品な旨さだ。これがはたはたの実力なのか。ホロホロの身も美味いのだが、白子のインパクトが強すぎてかすんでしまった。

揚げ物。あまりくどいとは感じない味わいだ。

貝三昧

漁師の奥さん方からやっているのがウリの店、何でも新鮮。どれでも獲れたてを焼いて食べてしまうとのことだ。まずは焼き牡蠣。ふっくらとした身からあふれ出す濃厚なミルク。生もいいが、焼きもたまらない。食感は生に劣るが、味わいは明らかに上である。

アワビは刺身か陶板焼のいずれかを選べる。陶板焼をセレクト。火が消えるまでそのままにしておくと説明される。蝦夷アワビ、刺身もいいがその魅力を堪能するには水分を抜くに限る。焼きと言うより蒸した感じで、しっかりと濃縮されたアワビは柔らかく、力強い香りと味が口の中に広がってゆく。たまらん。

ホッキ貝のつぼ焼きのような料理。ああ、やはり美味い。味付けは本来の味わいを邪魔することなく、魅力を引き出すことに徹している。貝類をここまで堪能できるとは恐るべし。

締めの料理

カジカ汁。白味噌仕立てで優しい味だ。カジカは北海道ではメジャーな魚だ。和名はトゲカジカ。海産であり、川に住む内地のカジカとは同じ仲間ではあるが、別種の魚である。カジカ汁は別名「鍋壊し」とも呼ばれる料理だ。あまりの旨さに箸で鍋の底をつついて破壊してしまうからだと言うが、箸で鍋を壊すなど、北斗神拳伝承者でもなければ難しいのではなかろうか。

締めはいくらご飯だ。先ほど、食べずに残しておいたバフンウニをのせる。ミニミニ二色丼。しかも北海道産の素材。贅沢なのだ。

腹が一杯だ。美味いもの責め、人によっては拷問だろう。これだけの素材が食べきれない量で押し寄せてくるのだ。食べたいのに体が付いてこない。マグネットコーティングをしていないガンダムで戦うアムロの気持ちが分かる。だがミノフスキー博士でも人間の身体の性能向上は研究外だ。ギャル曽根なら三人前くらい食べても平気だろう。うらやましい。

さらにデザート。市内で有名な和菓子屋さんの最中を使用してるとのことだ。腹がいっぱいなのに、五十路のおっさんでも別腹なのだろうか。するっと食べてしまった。

もう十分だ。しばらく海鮮は見たくもない。だが、しばらくすれば、また食べたくなるだろう。新鮮な鮮魚類には中毒性があるのだと認識させられる。とりあえず、花園町(小樽市の繁華街)に行って腹を落ちつけよう。

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