鶴亀堂
妻はとんこつラーメンが大好きだ。東京に住んでいた頃は、深夜に車で足立区の田中商店まで何度か食べに行ったことがある。新宿の天神ラーメンにも行った。福岡には一緒に行ったことが…あったかな。記憶にないな。
結婚して、けいたまが生まれ、ゆうたまが生まれ、簡単に旅行に行くことが難しくなった。私は週の半分は出張で県外にいるので、お土産にラーメンを買ってくるのだが、妊娠中の妻は妊娠糖尿のためにラーメンを食べることができず、加えて切迫早産による長期の入院で、ラーメンなど夢の夢であった。
ゆうたまが産まれる直前に出所ではなく退院したときは、真っ先に首里の麺屋白虎にとんこつラーメンを食べに行ったが、妻が食べたいのは、いわゆる長浜ラーメンなのだ。
それが、我が家から徒歩数分の場所に博多豚骨ラーメンの店ができたのだ。殺し屋のアニメでも明太子の店でもない。まごうことなき長浜スタイルのラーメンだ。本店は名古屋地区とのことだが、一度壁に行ったところなかなか美味かったので、妻を誘うと喜んでいた。ゆうたまは抱っこ紐デビューだ。初めての炎天下なのだ。
前回、食べたときに、次に来るなら塩とんこつと心に込めていた。ホームページでメニューを確認し、妻に事前にオーダーを決めておくように告げる。とんこつ全部のせだと言う。うむ、まさ定石の注文なのだ。
店に入ると、券売機で食券を買う。予定通り、私は塩とんこつに半ちゃんセット、とんこつラーメン全部のせに餃子。チャーハンと餃子は二人で食べるのだ。テーブル席があると思ったのは私の勘違いで、一番奥のカウンター席に案内された。
麺の硬さは私も妻もバリカタだ。替玉は無用。店員の方が、その後ろに子供用椅子を二つ並べて、ゆうたまが横になれるようにセッティングしてくれた。
まずは私の塩とんこつラーメンが運ばれてきた。チャーシュートッピングだ。まずはスープを一口。うん、あっさりこってり、甘くない。パンチのない優しい味だ。
妻が沖縄そばのようなスープだと言う。そう、多くの人が好んで食べる沖縄そばは鰹と豚骨合わせ出汁なのだが、昔ながらの沖縄そばは豚骨だけで出汁をとるのだ。地元沖縄人(ウチナーンチュ)は、豚骨出汁を好む人が少なくない。ナイチャーとウチナーンチュで沖縄そばランキングで店が激しく異なるのもこのためだ。
「地元の人に美味いからと言われて食べたのに、全然だった。」
これも同じ理由から発生するのだ。
続いて妻の博多とんこつ全部のせ。こちらはまったりと甘みがある。
麺はバリカタストレート麺。スープがよく絡む喉ごしの良い麺だ。替え玉をしないからグイグイスープを飲む。チャーシューと麺を一緒に食べると気分はどんぶりだ。
チャーシューは柔らかく味薄め。スープにマッチする。噛むと口の中で溶ける。
餃子は皮がもちパリ。具も香りよく、皮と具のバランスもいい。ラーメンにもご飯にも合う。
ここでどんぶりに紅生姜を投入。ベージュのスープに緑のネギ、白い麺、赤い生姜がカラフルで美しい。味も変化する。
チャーハンはセントラルキッチンの冷凍ものかと思ったら、鍋を振っていた。薄味で自己主張のない味は、ラーメンも餃子も邪魔しない。餃子とチャーハンは持ち帰り可能だ。けいたまが食べるかなあと妻が尋ねる。
先に食べ終わった私は、妻からゆうたまを受け取る。スヤスヤとよく寝ている。うーん、また夜中に眠らなかったらどうしよう。私はこれから北海道だ。妻は大丈夫だろうか。少し心配になる。
久しぶりのラーメンに妻は大満足だ。よかった。ゆうたまはだんだんと大きくなる。もうすぐで三ヶ月だ。首が座ったら、家族であちこちに行けるようになる。そして、年末には内地に行って、ゆうたまの温泉デビューを目論んでいる私と妻であった。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)