ざるそば屋
昨晩は飲みすぎた。朝飯を食えなかった。なんだかがっつり食べてみたい。そうだ、あそこに行ってみよう。前回、そう、二年前の5月16日にチャレンジした時は、食べきれずに敗退した店だ。今日ならいけそうな気がするぞ。
芝商店街の一角にたたずむこの店はいつも満席だ。幸いなことに並んでいるのは一人だけ。これなら五分も待てば座れるとみた私は、すかさず店内に入った。カウンターのおかあさんに注文を尋ねられた。
メニュー
そんな、急に聞かれても…まだ、心の準備ができていない。前回は週替わり蕎麦で敗退した。冷やしたぬきレモン風味も気になるが、この店の基本から攻めるべきだろう。
赤か黒か。
鳥か豚か。
カレーは飲み物。でも同じように悩んだ気がするが、ここは蕎麦屋だ。
うーん。
昨晩が激辛だから、赤はない。いつもなら豚をチョイスするが、今日は鳥だ。ということで、鳥ざる黒をオーダー。番号札を渡される。このように、店先のレジで先にオーダーを済ますシステムである。蕎麦は通常が500g、大盛りが1kgだ。
店は何もかもセルフである。そば茶も自分で注ぐ。食べ終わったら容器をカウンターにあげて、机を拭いてから立ち去るのが礼儀だ。
鳥ざる黒
蕎麦ができあがるたびに番号が読み上げられる。私の番号までは、まだ少しかかりそうだ。この後、会議があるのでああまりゆっくりはできない。まだかまだかと焦り始めた私に天の声が!
「29番!」
すかさず手を挙げる。まるでクイズ番組の解答者だ。蕎麦をのせた盆を渡される。
目につくのは、天かすとネギが浮いているつけ汁だ。少し飲んでみた。辛口のつゆ。ハシでつけ汁を探ってみる。鶏肉とナスにウズラの卵。
毎度思う。500gの蕎麦って多すぎないだろうか。
食べてみるか。蕎麦をとり、つけ汁につけ、口に入れる。少しコシが弱めだが問題ない。私好みの蕎麦だ。いや、相変わらずのボリュームだな。躊躇していると食べきれなくなる。ここは、ひたすら食べるのだ。
つけ汁の中には鶏肉がゴロゴロしている。蕎麦と一緒に食べても美味い。特に海苔と鶏肉がいいコンビネーションだ。磯の香りが加わると、味わいがぐっと広がるのが楽しい。
蕎麦を全部つけると辛い。半分で十分だ。揚げなすが柔らかい。
蕎麦がスルスル入る。ここでウズラの卵の黄身を割る。甘みが加わる。鶏肉の脂、揚げなすの油、玉子の黄身。辛口のつゆがしっかりと受け止める。そこに蕎麦を突っ込む。
不味いわけがない。それにこのボリュームだ。濃い目でなければすぐに薄まって、水っぽくなってしまう。
迷いなく食べている私のとなりに女子が座った。店内には食べきれそうもない人は小盛りを注文しろと書いてあるが、彼女はノーマルを食べている。この店は誰にでも容赦ない。
少し腹がきつくなったが完食だ。美味かった!前回は天ぷらを食べたのが失敗だったのだろう。今回、蕎麦以外に炭水化物はない。
攻略の仕方さえ分かれば問題ない。次回は黒豚か赤鶏を楽しもうではないか。その日までさらばなのだ。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)