キッチン プルプル
本来であれば、朝から春日部の地に行かねばならぬのだが、急ぎで作らなければならない仕事の資料が発生した。朝五時に起きて作業しているが、まだ終わらない。やむを得ぬ。午後から行くことにしよう。
そうなると谷塚駅を12時20分の電車に乗ることになる。ランチは駅前だな。昨晩、気になる洋食店を見かけた。行ってみることにしよう。その店の名は「プルプル」。フランス語で”pourpre”、英語に訳すと”crimson”、つまり「深紅」という意味だ。
店の外にメニューが張り出されている。なにがあるのだろうか。パスタやピザは気分ではないな。ライスが、コメが、ご飯が食べたい。
カツもいいな。ポークソテーも食べたい。
限定10食。カキフライも付いている期間限定。プレミアムじゃないか。たべたくなるじゃないか。手こねハンバーグが美味そうだ。
店内に入ると、窓際のテーブル席に案内された。壁にまたまたメニューがいくつも貼ってある。ぐらばーぐも美味そうだ。どれにするべきか迷う。うーん、アジフライとカキフライのセットをチョイス。
アジフライとカキフライのセット
昼食には少々早い時間のせいか、土曜日ということもあるのだろうか、店内に客はいない。これからゆっくりと混み始めるのだろう。しばらくして私のランチが運ばれてきた。
まずはカキフライから食べてみよう。サクッと軽く上がった衣の中には牡蠣の身がぎっしりと詰まっている。水分が抜けってムッチムチだ。クリーミーなタルタルソースは自己主張控えめで、カキフライの味を邪魔しない、むしろ味を引き立てる。付け合わせの野菜はみずみずしくてシャキシャキである。これにかかっているドレッシングが、これまた美味い。おそらくオリジナルのドレッシングである。間違いない。
プルプルドレッシング480円と書いた紙が壁に貼ってある。
アジフライをソースとマスターとで食べてみる。サクッと軽く上がった衣の歯ざわりがいい。アジには臭みなく、口の中いっぱいに味わいが広がる。アジフライの見た目は小さいが、食べてみると身が厚い。
カキフライをソースで食べてみる。いまいち。アジフライをタルタルソースで食べてみる。こちらも合わない。カキフライはタルタルで、アジフライはソースで食べるのが、この店の流儀と得たり。
トイレは和式だ。ここは洋食屋だ。店名はおフランス語だ。なればトイレも様式であるべきではないか。温水洗浄便座だのと贅沢は言わない。だが、食事は箸で食べる。洋食なのに味噌汁がつく。箸で食べ、味噌汁を飲むのにご飯ではなくライスだ。茶碗ではなく皿だ。
なぜだ。
確かに皿の方が平らなので食洗機に入れるには楽だ。手で洗うにしても茶碗より洗いやすいだろう。ならばお椀はどう説明するのだ。スープ皿に入れてしまうと、スプーンで飲むことになる。箸では食べられないし、スープ皿には直接、口をつけるものではない。
長年の経営で幾多の試行錯誤と変遷を経てこの形となった、合理性と必然性があってこのスタイルになったのだろうかと、思いを馳せてみた。
私もヒマだな。
美味かった。今度は肉料理を食べてみたいが、この界隈に来る機会はおそらくないだろう。締めの紅茶を飲むと、会計を済まし、店を後にした。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)