谷塚 まるや

埼玉県草加市 谷塚駅 まるや お通しはマグロ漬けの握り

谷塚駅 まるや

台北から羽田に飛び、リムジンバスで草加駅へ。そこから東武伊勢崎線で隣の谷塚駅に。今日から三泊だ。ホテルに荷物を置いて食事に出る。

さて、何を食べればいいのか。

肉か。台北で散々食べたぞ。考えてみれば、昨日の機内食はチキン夜も鶏肉、朝飯代わりのラウンジはチキンカレー、んでもって帰りの機内食は鳥唐揚げ。

この二日間、鶏肉オンリーではないか!

肉以外にしよう。でも魚も食べる気がしない。ここは埼玉だ。海無し県だ。魚が美味いわけないのだ。朝霞に住んだ時も鮮魚を手に入れるのに苦労したのだ。ああ、豆腐が食べたい。冷奴が食べたい。うん、そうしよう。必然的に和食になる。居酒屋だ。ならばホテルのそばにある店がよかろうもん。

ここだ。

メニュー

ドアを開ける。カウンターがほぼ満席だ。あれ?二組ほどお会計をしている。カウンターが空いた。

メニューを見る。冷奴ない。

出ようかな。

お通し

でもビールを頼んでしまった。仕方ない。トマトアボカドサラダにしよう。店主が言う。これは量が多いのでハーフにしましょうか。お願いしますよ。

お通しだ。マグロ漬けの握りにモズク。キュウリと塩昆布の和えたもの?違う、たくあんと水菜の漬物を刻んだものだ。なかなかイケるな。モズクも酸味控えめ、ダシが効いてモズクソーメンみたいな味だ。イケるよ。漬けもうまい。少しガーリックが効いている?ネットリとしたマグロの赤身、きめ細かいシルクのような舌触り。

いい意味で裏切られた。店内のBGMはマイケルジャクソンだ。バリバリの赤提灯の店内とまったく合っていないが、私はマイケルジャクソンが好きだからなんの問題もない。

もしかして、この店は当たりか?

トマトアボカドサラダ

レタスとベビーリーフをあえて、バジルの効いたオリジナルドレッシングがかかっている。美味い。箸が止まらなくなりそうだ。

これはイケるか?

ならば見せてもらおうか、この店の実力とやらを。しめ鯖を頼むぞ。

牛すじ煮込み

え?終わった?

うーん。大将一人で店を回しているから、注文が多いと大変そうだ。手の空いたタイミングを見計らって、牛すじ煮込みと角ハイを注文する。大将が冷蔵庫から大きな雪平鍋を取り出す。おそらくこいつの中に牛すじ煮込みが格納されているのだろう。カウンターの中で黙々と白ネギを刻む大将。それは私の分だと考えて差し支えなかろう。

牛すじ煮込み。白ネギと牛すじのコントラストが美しい。白ネギを沈めると、牛すじ軍団が顔を出す。ごぼうはホクホクに炊きあがって美味い。牛すじは柔らかく、醤油でシンプルに味付けされている。七味が欲しいな。

見当たらない。

大将に七味の有無を尋ねる。あると言う。ハウスの小瓶が出てくるものと思っていたら、キチンとした薬味入れに入っていた。小さじで取り、煮込みに振りかける。うむ。香りも味わいも段違いに広がる。七味は大事だ。具はゴボウと玉こんにゃく。大根が入っていないのが珍しい気もする。牛すじはトロットロだ。

トイレに立つ。、カウンターで隣に座っていた女性が食べているうどんがキラッキラに光っていてものすごくうまそうだ。

トイレは温水洗浄便座だ。台北ではホテルの部屋にしかお目にかかれない。レストランも含めて、公衆ののトイレには設置されていない。

塩煎り銀杏

飯を食ったのが日本時間で十五時だ。食べ終わったのは十六時だ。現在時刻はふたひとふたはち、ではなく21時28分。重いカバンを持って歩き回ったぞ。なのにそれほど腹が減っていない。なるば無理に食べることもない。うどんはどうしようかと思うが、鳥南蛮だ。鳥はもういい。

塩煎り銀杏と角ハイをリクエストだ。独特の臭いと言うか甘いと言うか銀杏の香りが鼻をくすぐる。大将からは熱いから気をつけろとの一言があった。

どうすればいい?

しばらく放置だな。銀杏は熱々でなければならないと言うわけではない。でも食べたい。触ってみたらガマンできる熱さだ。殻を割り、薄皮の中から半透明グリーンの宝石のような銀杏を取り出す。軽く塩をつけ、躊躇なく口に入れる。ああ、ホクホクだ。銀杏の香りと甘みが口の中に広がる。

秋なんだなあ。

ごちそうさま

その時、となりに座る女性が食べていたうどんが目に入った。「鳥南蛮うどん」とは、いわゆるかけうどんに長ネギと鶏肉を入れたものだ。蕎麦屋で中台をしていた私が言うのだから間違いない。なのに、これは何だ?黒い皿の上にキラキラと輝く、手延べうどんのような真っ白い細麺。これを鶏肉とネギが入った熱い汁につけて食べている。

絶対に美味いだろう。

メニューもおかしい。これなら鳥南蛮つけ汁うどんと書かなければ、誤解を招く。実際に私は誤解して選択肢から外していた。すでに被害は出ているんだ。今すぐに私も頼みたいきもちはあるが、身体がついていかない。もう、腹がいっぱいなのだ。うどんは別腹ではないのだ。

無念。

なんだか、負けた気分で店を後にした。

寝よう。

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