妻とうな重
まもなく年末。今年中にきちんとしたうなぎを妻に食べさせたかった。お土産に買ってきてもいいのだが、それでは本格的なうな重にはならない。職人が割いて、焼いて、盛り付けた熱々のうな重でなければならないのだ。
この一年、私は何度、うなぎを食べたろうか。岐阜の可児、愛知は豊橋に静岡は浜松、新宿でもハルハルと食べた。いくらとうなぎは年々高騰しているご時世に、一尾まるまる食べたこともある。だからこそ、妻にお疲れ様と一尾食べさせたかった。
沖縄にも鰻屋はある。一軒は公設市場近くだ。行きにくい。数ヶ月前に妻とサンエー経塚シティーに買い物に来た時、一軒の鰻屋を見つけた。妻がこの店に見覚えがあるという。どう見ても新しい店舗なのだが、昔は首里石嶺にあって、子供の頃に食べたことがあるというのだ。うな重の持ち帰りができて、サービスに骨せんべいが出てくることだけ覚えているそうだ。
妻が子供の頃に長期間風邪が治らず、医者に美味いものを食べさせろと言われた義母が、うなぎを買いに来たらしい。
メニュー
さて、何を食べようか。
妻は一尾と決めている。大蒲焼重なのだ。私は風邪をひいて鼻が詰まっている。上等なうな重を食べるにはもったいない体調だ。
一番安いランチ、お昼のちょこっと丼2200円で十分だろう。ランチは原価率が高いのだろうか、現金清算と書いてある。妻に食べさせるのは、一尾使用の大蒲焼重、6500円也。
うな重
それほど待たずに二人のうなぎが運ばれてきた。私はどんぶり、妻はお重。
サラダは新鮮でシャキシャキ、みずみずしい野菜に甘口の酸味控えめドレッシング。りんご味だろうか。妻も美味しいと言う。
店内の写真のうな重は腹開きだが、この店のうなぎは背開きだ。ランチとうな重で味が明らかに違う。見た目すら違う。中国産のような味がするが皮は厚くない。スーパーで売っているうなぎのようだ。
そうか、このうなぎは串打ちされていない。あとで妻から聞いたが、この店ではうなぎをトングで焼いていたそうだ。マジか…
大好きな山椒を多めに鰻に振りかけて食べる。香りがしない。あの独特のさわやかな香りがまったくしない。 そうか、鼻が詰まって機能していない。却ってラッキーだったのだろうか。
鰻作 大蒲焼重
妻がうなぎを分けてくれた。身の厚みと脂ののりが違っていた。おそらくランチは小さめの鰻なのではないだろうか。そのために身が薄く脂ののりも控えめでさっぱりしている分、旨味も少ない。厚みのある身は脂ののりも良く、焦げた皮目もまた美味い。少し甘めのタレと脂ののったうなぎ、このままだと流石にうな重といえど味が単調になるが、白菜の浅漬けが口の中をサッパリとさせてくれる。
ご飯は固め。つゆだくにしてもぐしゃぐしゃベチョベチョにならない。うな丼はボリューム優先なのでたっぷりとつゆがかかっているが、うな重はうなぎの味を堪能できるようにつゆが少なめだ。後がけできるように、つゆの入った醤油差しが付いてくる。
お椀は肝吸いではなく味噌汁だ。
黙々とうなぎを食べる妻。言葉少なだ。
妻と感想戦
店を出てから妻に聞いた。美味しかった?
「うなぎが生臭くて、ご飯がべちゃべちゃだった。山椒を山ほどかけようかと思ったよ。」
そう?私は山椒の香りがまったくわからなかった。そもそも今日は鼻が詰まって、緑茶とほうじ茶の違いもわからないくらいだ。
「人吉のうなぎがすごく美味しかったから。値段も変わらないよね。沖縄だからかな…」
でもランチのうなぎは味がイマイチでも生臭くなかったよね?
「うん、生臭くなかった。私のが臭かった。」
ネットで調べると、うなぎ蒲焼きが生臭くなる原因は、捌いてから時間が経ってから焼いたためとある。ランチは限定20食。回転が早い。大蒲焼重は注文してからすぐに出てきた。内地でこの値段の店ならば、注文してからさばくので、出てくるまで時間がかかる。この辺りに原因がありそうだ。
うーむ、残念。沖縄で内地と同じレベルのうなぎを食べられる店はないのだろうか。鼻が詰まっていた私は、やはりラッキーだったのだろうか。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)