味噌汁とちゃんぽんを求めて
昨晩は横浜でビジネス交流会に参加の後に、品のいいクラブで呑み、社宅へと戻った。本日は朝の便で沖縄に戻る。飛行機がお昼ちょうどに那覇に着くので、妻と外食することにした。
どこに行こうか。
空港から我が家に戻る道中の大半は豊見城市である。市内に良さげな食堂はないのか、ネットで調べると、見つけてしまった。
かねふく食堂。
食堂と言えば、味噌汁とちゃんぽん。私と妻はまだ諦めていない。だるま食堂を超える味噌汁と、パチンコチャンピオン一日橋店のレストランで食べたちゃんぽんを探し当てると言うミッション、いや、ここまでくるとライフワークと言っても過言ではない。
だるま食堂は美味いのだが、入りにくい、店が狭い。家族連れで食べに行ける店ではない。チャンピオンはすでに別の店に変わってしまい、レストランも様変わりしてしまった。あのおばちゃんの職人技が光る、半熟とろとろの玉子に福神漬けの絶品ちゃんぽんは、煮過ぎた玉子のかかった、雑な料理と化していた。
私達夫婦は、ただただ、お座敷のあるゆったりとした食堂で、うまい味噌汁とちゃんぽんを食べたいだけなのだ。こんなささやかな夢を叶えるためだけに、今までにどれだけの時間を費やしただろうか。未だ叶わぬ見果てぬ夢なのだ。
ネットで「味噌汁が美味い」とのコメントを見かければ、足を運んで、食べて愕然。これを書いたやつは、間違いなくだるま食堂の味噌汁を食ったことがないだろうと断言できる。まるでドクロストーンを探すボヤッキーの気分なのだ。妻にドロンジョのような色気はないので、特にコメントしない。ああ、懐かしいな。ドロンジョにおまかせ。初めて打った四号機。こいつがきっかけでパチスロを…話が長くなりそうなので、やめておく。
と言うわけで、びっくりドッキリメカなどは持たず、丸腰の妻と私とゆうたまで、かねふく食堂に突撃なのだコロン。
かねふく食堂
その店は住宅街の中にあった。駐車場は店の脇に数台分。向かいの駐車場は月極なのに、レンタカーが停められている。観光客が勘違いしたのだろう。
店の前にブーゲンビリアが咲いている。
メニュー
店外にメニューがてんこ盛りだ。典型的な沖縄の食堂だ。
店内に入るが、誰も出てこない。客は三組ほどだろうか。しばし妻と二人でぼっーと突っ立っていたのだが、やはり店の人が出てこないので、厨房の中のおかあさんに声を掛ける。
「奥のお座敷、いいですか?」
「お座敷?」
想定外の切り返し。やりとりを続けるが、話が噛み合わない。会話が通じない。
なんだなんだ?
とにかくお座敷に上がり込んで座る。ゆうたまは何が起きたのか分からないような顔をしている。画面左下に子供の手が写っている。
誰の手だ?
けいたまはいないし、私たちのそばには誰もいなかった。妻の手にしては小さすぎるのだが…レンズのせいだろうか。
気味が悪い。
店内には地元客と台湾人観光客。外国人が来るなんて、なかなか流行ってる店なのだな。店を切り盛りしているのはご主人とお母さん?の二人。明らかに手が回っていない。
水もセルフだが、注文も自分で厨房に言わなければならない。ピッチャーの水も一つは空のままだ。お母さんは、先ほどオーダーを伝えた客の注文を完全に忘れている。苦笑いしながらもう一度注文していた。
「とんかつー!」
厨房を見ると、調理は普通にしているので、慣れないフロアでパニクってるようにも見える。コップはワンカップ酒のものだ。汗だくのご主人が厨房から出てきて、店内の客に改めて注文を聞いてまわっている。これは大変そうだ。
中川家の弟にそっくりな台湾人観光客がセルフで皿を下げている。客が助け合わなくては食事にありつけそうにない。ついにご主人がフロアを回り始めた。手が回らなくてすいませんと客に頭を下げている。お母さんは調理担当だったのか。
みそ汁
待つこと20分。ようやく味噌汁が運ばれてきた。
妻の味噌汁はポーク、豆腐、大根にチキナーだ。ここのも具沢山の味噌汁だ。豆腐は硬めの絹どうふのようだ。島豆腐だとは思うが、独特のにがり臭さがない。大根は輪切り。珍しい。
カツオのきいた味噌汁は美味いのだが、パンチがない。この店もまた、私たち夫婦が求める味噌汁ではなかった。
ちゃんぽん
沖縄のちゃんぽんとは麺料理ではなく、ご飯ものだ。さて、お味の方はどうかな。食べてみる。味付けは甘め、野菜の旨味が引き出されている。もやし、にんじん、玉ねぎ、キャベツ。卵は半熟トロトロ。肉はコンビーフハッシュ…ではない、牛肉を柔らかく煮込んだものだ。
初めての味だ。ちゃんぽんと言えば塩味だと思っていたが、この味付けはなんだろうか。妻も食べる。
「これ、ステューの味がするね。」
え?あの、缶詰の?ああ、だから牛肉が…妻が続ける。
「ステューに野菜を入れて炒めたら、こんな味になるはずよ。」
それで味付けが甘めなのか…えええええ?!そんなのあり?缶詰で野菜を炒めただけって、そんなのあり?
ガッカリだよ!
と言いつつ食べる。漬物の塩気とちゃんぽんの甘みの対比がいい感じだ。どんぶり系の単調な味に漬物がアクセントを加えてくれる。付け合わせの味噌汁は、かつおダシがきいている。シャキシャキのチキナーがなかなか美味い。
ごちそうさま
ご主人が常連客と話していた。中国人の客が来るなんて思わなかった。調子が狂ってしまったと言っている。
「国際的になったねー?」
客が茶化す。ご主人が答える。
「今はネットの時代だから、みんな調べてわざわざ食べに来るんだよね。」
私らも同じです…
トイレは洋式便座だ。さて、我が家に帰ろう。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)