嵯峨谷 もりそば

東京都港区浜松町 嵯峨谷 天もりとかき揚げ蕎麦

浜松町の立ち食い蕎麦

社宅のある芝の商店街からは二つの駅にアクセスできる。近いのは芝公園駅だ。こちらには道すがらに飲食店がほとんどない。遠いのが浜松町だ。こちらは通り道にいくつもの飲食店がある。立ち食い蕎麦だけでも四軒あるのだ。駅ナカを入れれば五軒になる。そのうち四軒は食べたことがある。残りの一軒は立ち食い蕎麦ながら十割蕎麦を出している嵯峨谷だ。食べログの点数は3.58だ。期待も膨らむというものだ。

一ヶ月ほど前に店の存在を知り、ネットの情報では日曜日営業とのことだったので店に向かったところ、定休日だった。そのリベンジを果たす日がついにやってきた…のかな。今日は会社を休んで、北京から日本の大学を受験にきた娘とデートなのだ。これから実家に向かい、レンタカーを借りてドライブなのだが、その前に腹ごしらえだ。昨晩は締めに蕎麦を食べようとして、食べ損ねたのが心残りでもある。

身支度を済ませ、社宅を出ると、浜松町駅に向かう。スマホの天気予報では快晴と表示されているが、雲ばかりで日差しがない。どないなってんのや。そんな天気のもと、私は迷うことなく蕎麦へ蕎麦へと向かう。見せてもらおうか、十割蕎麦の性能とやらを。

店に着くと、朝蕎麦セットの看板が目に入る。いや、若者じゃあるまいし、朝からこのボリュームはキツイだろう。システムは立ち食い蕎麦と変わらない。食券を買い、店内に入るのだ。

さて、何を食べようか。

ぶっかけ系の蕎麦を食いたいのだが、それらしいのはあまりない。とり天そば…うーん。天もりと天ざるは何がちがうのだろう。

靴音がした。後ろに人が並んだ。まずい、背後を取られた。早くこの状況から脱しないと、舌打ちなどされたら、朝から最悪だ。仕方ない、天もり510円だ。食券とお釣りを取ると、そそくさと店内に入り、注文カウンターに差し出した。

蕎麦 冷麦 嵯峨谷

荷物もあったので、入口そばのカウンター席に座る。電動石臼機がそば粉を引いている。丸亀製麺のように、店内製麺なのだろうか。え?蕎麦は細麺と太麺が選べるのだと?温かい蕎麦は細麺が、冷たいそばには太麺がお勧めとあるのだが、私は太い蕎麦が苦手だ。オーダーのときは何も聞かれなかったが、すぐに「細麺で。」と伝えると、無言で対応された。

店内は渋い作りだ。昔良き蕎麦屋の内装だ。

「天盛りの方」

呼ばれて蕎麦を取りに行く。見た目は立ち食い蕎麦のレベルでは無い。ついつい期待のボルテージが上がってしまう。こいつは朝から美味い蕎麦が食えるか?

蕎麦は少し縮れた平麺、のどごし滑らか。コシも程よい。だが、何か物足りない。返しは辛口だが、出汁が弱いか。なるほど、これは天ぷらに合わない。塩がついてるわけだ。かき揚げもも何か味が濃い。塩味とも違う。塩をつけるとしょっぱい。衣に味が付いているのだろうか。とにかく、蕎麦、つゆ、天ぷらのバランスがイマイチだ。食べにくい。

トイレは洋式だが洗浄便座では無い。

せっかくなので蕎麦湯をいただく。ポットに入っているのを自分で注ぐ。ん?やはり何か物足りないが、返しは抜群に美味くなった。なんだろう。

わかった。

香りが足りないのだ。鼻に抜けるほのかな蕎麦の香りがしないのだ。

510円で天ぷらも十割蕎麦も食べれるからコスパは抜群だ。ただ「十割」という言葉に大きく期待してしまう分、肩透かしを食らった感がある。価格を考えたら、頑張ってるとも言えるだろう。

だが、初めて富士そばを食べたときの感動も、初めてゆで太郎を食べたときの衝撃も無い。こんなものかな、という感想が正直なところだ。

立ち食い蕎麦と比較すれば、価格は変わらない。同じ値段ならここで食べようと思うが、次は温かいそばにしようか。冷たいのを食べたいなら、ゆで太郎は三田まで行かないとないのですよ。

数日後、再チャレンジ

今度は温かい天ぷらそばに挑戦してみた。相変わらずそばの太さは訊かれない。食券を出して、それほど時間をおかずに天ぷら蕎麦が出てきた。こないだは気がつかなかったが、カウンターには大きめのツボにワカメが入っている。トングでつまんでどんぶりに入れる。七味もさじですくって入れる。

まずはツユから。やはりコクがないというか、出汁が薄いというか、なんとも。蕎麦を食べてみる。伸びているのか、ぶちぶち切れて箸で掴めない。なんだこれ?食べているうちに蕎麦がどんどんと細分化していく。箸で食べるのが苦痛になってきた。天ぷらは汁に溶け出す。

カオスだ。

しかし、汁に溶けた天ぷらの油がめんつゆに甘みを加える。悪くない。しかし、蕎麦はすべて3センチ未満の長さに千切れている。どんぶりのようにかっこんで蕎麦を食べる。なんだこれ、味は悪くないが、納得いかない。富士そばや小諸そばでも、こんなに麺はブツブツ切れない。

やはり立ち食いそばの域を出ないのか。

腹が減っていたのですべて食べたが、スッキリしない自分がいた。もういいや、と何かを悟った気持ちで店を出ようとしたその時、カウンターに置かれている、他の客が頼んだ盛りそばの太麺が目に入ってきた。

美味そうではないか!

三度目の正直だ。二度あることは三度あるとも言うが、もう一度、この店で食べてみようと固く誓ったのだった。

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