徳島ランチ
午前中に打ち合わせを終えると、徳島駅に向かった。昨晩はバスでひどい目にあったが、今度は列車だ。駅でランチを済ませてから、列車に乗る算段である。
さて、何を食べようか。
徳島と言われて思いつく食べ物は、徳島ラーメンくらいであるが、ラーメンは要らない。昨夜食べた。以前なら徳島バーガーがあったのだが、すでに黒歴史と化したらしい。その話はするな、忘れてくれと地元民から懇願された。詳しい事情を説明されたが、酔っているから覚えていない。分かったことは、すでに亡き料理だということだ。
ならば、何を食べろというのか。答えを探しに駅前を歩こうとしたが、雨が降っている。駅近にレストラン街があるようなので、そこで答えを見つけるしかない。
これか。選択肢は八種類。うち、いきなりステーキは除外である。
店を見て回る。どれもいまいち決め手に欠ける。ふと、目に入ったのは、アンガス牛のローストビーフ丼。徳島でUS牛を食べてもなあと思う私の目に付いたのは黒ビールデミグラス煮込みハンバーグ。
これ、よくね?
店はバーのようだ。カウンター席か。荷物があるので、テーブルで座って食べたい。反対側には男前唐揚げ。これも惹かれるが、唐揚げは今はいいかな。
反対側には男前唐揚げ。これも惹かれるが、唐揚げは今はいいかな。
男前はハイボール酒場なのか。呑んでるのがいるよ。
店の裏側がテーブル席になっていた。正面はいきなりステーキだ。あちらは客が列をなしているが、こちらの店は誰も座っていない。よし、ここにしよう。
黒ビールデミグラス煮込みハンバーグ
注文を済ませて、メニューを見る。ビールが充実しているようだ。迷いなく、煮込みハンバーグをオーダーする。
ほどなくして料理が運ばれてきた。まずはスープだ。とろみはあるがあっさりしているポタージュ。サラダは野菜がみずみずしく、オニオンだろうか、ドレッシングもいい。この五倍くらいは食べたいところだ。量が少ない。ハンバーグは鶏肉メインか。この価格なら牛とは思わないが、あっさりしたドミグラスソースにぷるぷるの温泉たまごを絡めてスプーンですくう。
うーん、何か物足りない。もっとどっしりとしたコクのあるデミグラスソースが食べたい。こいつはライトすぎる。ご飯はボリュームあるのだが、おかずとのバランスが悪い。ハンバーグとサラダはもっと量が欲しい。今の私は相当に腹が減っている。まさにオークロードなのだ。飢えが満たされない。食い物をよこせ。
ああ、向かいの看板が眩しい。向かいのいきなりステーキでワイルドハンバーグ300gを食べればよかったと言うのだろうか。いや、この店は空いている。ソファーにも座れた。ゆっくりと飯を食べたし、電車までの時間もまったりと過ごせる。
熱々の鉄板と言われはしたが、本当に熱々ならば半熟玉子は固形化しているはずだ。玉子が固まる温度は70度。ぷるぷるの白身を維持するならば60度でなければならない。触れば軽い火傷はするだろうが、いきなりステーキのような、肉が焼ける温度ではない。鉄板で出す意味があるのだろうか。ハンバーグだって、この鉄板ではなくグリルで焼いているはずだ。煮込むのは鍋でもできるし、シチュー皿でも可能だ。
つまり、この鉄板はインテリアであり、演出であり、調理する上では特に意味を持たないのだ。
なんてこった?!
やはり隣で男前カツ定食を食べたほうがよかったのだろうか。いや、あちらは飲み屋だ。カウンターにはでかい声で関西弁を話すオバちゃんが座っているではないか。ハイボールなのか?タバコを吸っているから、飯を食っているわけではなさそうだ。昼酒か?えらい盛り上がっているな。あそこで昼定食を食べたら完全に場違いだ。
ここはビール工場?
血糖値が上がってきたのか、少し飢えが収まった。改めて店内を見回す。
ん?
これって、店内でビールを醸造しているのか?単なる地ビール屋さんではないのだろうか。それに店名がわからない。
この店のコンセプトが書いてあるぞ。自家製ソーセージにできたてビール酒場。私が食べたのは黒ビールデミグラス煮込みハンバーグ。どちらもひき肉つながりではあるが、ソーセージの材料で作られたハンバーグなのか。ランチにビールを飲まない私が悪いのか。つまりは、この店でハンバーグを食べるのは筋違いだというのかあっ?!
なら、メニューに出すな!それか、ハンバーグに自家製ソーセージを付け合わせにするか、オプションにしろよ!サラダもこれっぽっちじゃ足らん!
あ、そうか。黒ビールのデミグラスソースと書いてあったな。赤ワインのようにどっしりとせず、黒ビールならではのライトなソース、それでは牛肉の脂を受け止めきれないから、鳥肉や豚肉を使うのか。がっつり食べたければ、最初から別の店に行くべきは私であったか。
よくよく考えれば分かることを、空腹で見逃したがために、ランチに満足しきれなかった自分がいた。伝票を持ってカウンターに向かう。改札とみどりの窓口では使えないSuicaが、駅地下の飲食店では使えるという皮肉に、地方の現実を垣間見たのであった。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)