焼肉 はなび苑
徳島を訪れたのは、徳島商工会議所青年部の設立三十周年を祝うためだ。グランヴィリアホテルでの祝賀会は盛会に終わった。だが、腹が減った。ホテル飯は飽きてしまうのだ。ちょこちょこっとだけ食べたら、久しぶりに会った知人たちと話が盛り上がる。飲みすぎないように、ハイボールと一緒に炭酸水をもらいら、薄くしながら飲んでいた。
二次会は設定されていたのかいないのか、ホテルから飲屋街までバスが用意されていたので、それに乗り込む。バスを降りると、祝賀会で同じテーブルだったチャラが言った。彼とは三年前に一年間、同じ委員会で苦労を共にした仲だ。妻も彼を知っている。
「腹、減りません?」
私は焼肉が食べたいぞ。ちょうど目の前に焼肉店がある。ここでいいかな、美味いかな。私の勘はうまいに違いないと告げている。二人して店の前で思案していると、目の前を綺麗なお姉さんが通りかかった。おもむろにチャラは女性を捕まえて尋ねた。
「この焼肉屋、美味い?」
「ええ、美味しいですよ。」
女性は答えた。チャラがさらに畳み掛ける。
「ねえねえ、ワイらと一緒に焼き肉食わん?」
彼はいつも岡山弁全開だ。なるほど、ナンパってこうやってするのかと、五十歳にもなって感心する。女性が答える。
「えー、行きたいけど…無理。」
すごく残念そうな顔をしている。まんざらでもないようだ。チャラがさらに話を続ける。
「お姉さん、どこの店の人?」
なんと焼き肉店の隣のビルのスナックで働いていると言う。ならば私も言おう。
「同伴にしたらいいじゃない。一緒に食べようよ。」
女性が困った顔で答える。
「えー、食べたいけど、無理ですー。」
キャバクラならともかく、スナックでは女の子が少ないから、同伴したら店の戦力が激減するので難しいのだろう。仕方がない。店の名前を聞いて別れた。今は美味い焼肉店であることが分かれば無問題だ。よし、入ろうではないか。
メニュー
店内は細長い形をしていた。奥の四人がけのテーブルに案内される。
さて、何を食べようか。その前にハイボールだ。それと香川県民を呼び出さねば。チャラが香川県民に電話する。
「あいつ、電話取りよんのですよ。」
チャラがムッとして言う。そのうち連絡がくるだろう。先に食べよう。私は脂ののった肉が食いたいぞ。カルビじゃ!
「ワイも脂のってるのが食いたいんですよ。」
だよなあ。牛肉は脂がのったのがいいよなあ。最近は和牛が食えないとか赤身がいいとか、脂が抜けたような奴が多い。四十代で枯れ専の対象にでもなるつもりか?脂が抜けても、歳を重ねなければ、枯れ専は興味を示さんぞ。こないだは目の前の肉をかっさらわれてしまったが、今回は違うぞ。心ゆくまで食べてやる。藍セット持ってこーい!ついでにトマトスライス。おお、こいつはなかなか美味そうだ。焼くぞ!
焼いてる間にトマトスライス。うーん、ちょっと若いかも。固いよ。
藍セット
藍セットとはカルビとロースのお値打ちセットなのだ。肉が焼けた。タレにつけて食べる。脂の甘みが口の中に広がる。カルビ美味い、ロース美味い、焼肉万歳!
ホルモン六種盛り
そこに香川県民が現れた。三人で改めて乾杯だ。この店はホルモンがお勧めということだ。ならばここは六種盛りじゃ!レバ、ハツ、ミノ、センマイ、マルチョウ、ホソ…ってなんだ?コプチャン?小腸のことか。
それ、焼いてまえ!
うまー。酒が進む。話が弾む。二人にこのブログのことを話す。チャラが言う。
「ワイも酒と女のことなら、ブログ書けるわ。」
確かに、それは言える。独身貴族であちこちに行っては女に手を出すもんなあ。伝説もいろいろあるし。そういや昔、焼肉に誘った女のワキガが酷くて、お持ち帰りできると思ったのにそれどころじゃなくなって、ホテルに戻って焼肉全部戻したとか言ってたよなあ。
「あのな、だけどな、問題なのは、こまめにブログ書いたりできん、ワイの性格じゃけえ。」
意味ないじゃん(笑)
ネギ塩ハラミ
ネギ塩ハラミだ!
焼いてまえ!(笑)
上カルビ
これも美味いけど、ちょっと物足りない。やっぱ、焼肉は脂じゃ!サシじゃ!上カルビ持ってこーい!あとハイボール。
おう、これだこれだ!焼いてまえ!
美味い。この肉、なに?店長らしき人物に尋ねる。臭みなく甘くてコクのある肉。
「阿波黒牛と言って、ここ三年ほどでとても美味しくなったブランド牛です。」
へー。さて、腹もいっぱいになった。飲みに行くぞー!
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)