徳島の締め
徳島市の繁華街は秋田町である。食べて、呑んで、締めるのは夜の基本だ。人によっては食べて、呑んで、呑んで、締めるだろうし、食べて、呑んで呑んで死ぬ人もいる。若い女性の壁ドンは心臓ドキドキの青春だろうが、おっさんの壁ドンは肝臓ボロボロ、壁に手をついて顔を下向けに吐いているだけである。
そんな壁ドンは嫌だ。
徳島、特に阿波は関西と讃岐に位置するために、双方の特徴を併せ持つ。ならば、秋田調で呑んだ締めは何かと言えば、うどんかラーメン。個人的には上品な鯛骨塩ラーメンが好きである。深夜0時オープンの大人気店だ。これは例外で、徳島ラーメンで締めるのもありだろう。
そういえば、何年か前の日曜日の夜だったろうか、徳島で嫁も一緒に飲んでいたときのことだ。美味いラーメンを食べたいと言ったら、地元民に連れてこられたのは、なぜかカラオケまねきねこ。なぜにカラオケボックス?ここのオーナーがラーメンに凝っていて、下手なラーメン屋より美味いのだと言われた。
確かに美味かった。
何人かでたらいうどんを食べたこともある。一人で食べるものではない。酔って胃がバカになっていれば、普段は食べられない量も食べてしまうのも若さと言うものだ。四十代まではいけたが、五十路には無理だ。
焼肉締めというのもある。糖質控えめのはずなのだが、脂のコクとタレの甘み、肉の旨みと相性がいいのはキムチとごはんだ。これに玉子の黄身など載せようものならものなら、立派な焼肉丼である。ネギも欲しい。ああ、食べたくなってきた。
なぜに中華料理?
居酒屋で食べ、スナックを二軒はしごして、今は午前一時半。眠いし、酔ってるし、腹も減った。何か食べて帰ろう、鯛骨ラーメンが食べたいという私に、地元民らはもっとがっつり食べに行こうという。連れてこられたのは中華料理店。その名は扇福。
え?私のリクエストからは程遠いのではないだろうか。いぶかる私をまあまあと地元民が連れて店に入った。
店内にはカウンターとテーブル席。昭和の一般的な中華料理店のレイアウトである。なかなか年季の入った店のように思ったが、そうでもない。
メニューは麺類。
ご飯と一品料理。いたってシンプルだ。老眼の酔っ払いにも分かりやすいように配慮したのか、酔客から「字が小さい!」とクレームがあったのか、アラフィフには読みやすいメニューである。
お通しは太いザーサイ。ドリンクはビールのみ。冷蔵庫から自分で取り出して、開けていた気がする。そういうシステムではないのだろうが、一緒に呑んでいる地元民がせっかちなのだ。いやあ、締めにビールはつらい。なぜだろうか。やはりハイボールが欲しい。せめてレモンサワーにしたいところだ。
深夜にがっつり中華を食べる
地元民のオススメはワンタン麺。個人的にはあまり食べる機会のない料理だ。どうして鯛骨ラーメンが、徳島ラーメンでもなく、ワンタン麺になってしまったのか、イマイチ納得いかないが、地元民のオススメだ。食ってみよう。
お。これはイケる。あっさりとしたスープにプルプルで舌触り滑らかなワンタンの皮。噛めばむっちりとしたひき肉からスープが溢れる。麺は細めのストレート麺。これも舌触りが滑らかだ。トッピングのもやしがシャキシャキしていい。うん、確かに美味い。呑んで疲れた胃が癒されるようだ。
そこに八宝菜。ワンタン麺で腹がいっぱいなのに、なんだか食べてしまうな。オーソドックスな味わいだ。日本の中華って感じだ。
もちろん餃子も頼んである。見た目もいいが、薄くてパリパリのクリスピーな皮とジューシーな具の取り合わせがたまらない。
トドメは酢豚。野菜にもしっかりと火が入っている。肉がゴロゴロと惜しみなく使われている。甘酢のとろみも味のバランスもいい。肉も野菜も美味い。つまみにいいね。この際、ビールでもいいよ。
すっかり腹がいっぱいになった我々は、会計を済ませて店を出た。帰り道に魅力的な看板を見つけた。
「ドMなバニーちゃん。」
なんじゃ、この店?ガールズバーか?スナックか?地元民がざわつく。私は言った。札幌にもこんな感じの店があるぞ。今度、来てみるか。そうだな、面白そうだ。そんなことを言って、皆と別れた。
翌日、冷静に店の画像を見た。ああ、ここは呑み屋ではないよ、エッチな店ではないか。そっちは不要だ。
残念である。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)