蘭州牛肉麺

鹿児島市 天文館通駅 伝統手打ちラーメン 功夫 蘭州牛肉麺

鹿児島市 天文館ランチ

「鹿児島の名物ってなにかな。明日のランチの参考にしたい。」

昨晩、焼き鳥居酒屋で地元の知人に尋ねてみた。

「鳥肉は今食べてるよな。黒豚は…ああ、今日のランチがとんかつだったんだ。そうしたら、あとはラーメンか薩摩和牛かな。」

そうか。鹿児島県は蕎麦の作漬け面積もかなりあるので、日本蕎麦もいいのだが、やはり鹿児島ラーメンは食べたい。昨晩遅くに地元の有名店、ラーメン小金太を通ったが、とても食べられる状態ではなかった。それに朝6時起きだったので、早くホテルに戻って眠りたかった。

ラーメン小金太

そして今日、朝から雨が降っている。梅雨らしい、しとしとと強すぎず弱すぎず降る雨に、ホテルの露天風呂も水面がざわついていた。ホテルから10分以内でどこか美味しいラーメン店がないものかとネットで検索していたところ、ふいに飛び込んできた文字は蘭州牛肉麺。

なんだと?

中国 蘭州

麺料理の本場は、かつて唐の都だった長安で、現在の陝西(せんせい)省西安である。そのさらに西方にある蘭州と言えば、中国ではラーメン(拉麺)の本場として有名だ。ちなみに、上海からだと東京も蘭州も同じくらいの距離である。

20世紀の頃、北京で初めて食べた蘭州拉麺。「馬蘭(まーらん)拉麺」というチェーン店だった。注文してから手打ちで麺を打つ。テレビで見るような、腕に巻いた麺がどんどん伸びて細くなるやつだ。麺ができるまで、それほどの時間ではないが、前菜とビールで時間をつぶす。干し豆腐の千切り野菜和え(涼拌干絲)とキュウリのニンニクたたき(拍黄瓜)が私の定番であった。

その後、打ちたての麺がゆでられ、湯切りしてからどんぶりに投入される。スープを加え、牛肉をトッピング。これが牛肉麺だ。中国では一般的な麺料理だ。しょうゆで味付けをしたものが最も一般的で、紅焼(ホンシャオ)牛肉麺(ニューローメン)である。中国の醤油は日本のものよりも色が紅いのだ。

それはぜひとも食べたい!食べてみたい!

鹿児島名物などどこへやら、私の頭の中は牛肉麺でいっぱいになってしまった。

功夫 蘭州牛肉麺 伝統手打ちラーメン

外に出ると雨はやんでいた。すぐにまた降り出すだろう。そそくさと道を歩く。四分ほどで到着。

これは期待できそうか。店内に入ると客はカウンターに一人。席への案内は無い。好きなところに座っていいか尋ねると、どうぞと言う。愛想がない。客が来たのに嬉しそうではない。

分かりにくい。整理すると、麺は断面の丸い麺は太さが1/2/2.5/3/8mmの五種類。寛麺は幅が5mm~50mmの三種類、そして三角麺が一種類。調べてみると、中国では次の通りだ。

・丸麺 毛細(1mm)/細麺(2mm)/三細(2.5mm)/二細(3mm)/二柱子(8mm)
・平打ち麺 韮葉(5mm)/寛面(25mm)/大寛(50mm)
・三角麺

蘭州ラーメンの特徴は注文してから麺を打つと書いてある。その通りだ。北京の馬蘭ラーメンもそうであった。

注文をしようとして食券機に気づく。そうか、これで買えばいいのだが、その前にメニューはどこなのだ。自販機の前に置かれたやつがそうか。

本場のジャージャン麺が供されている。本格的じゃないか!これも食べたい。水餃も美味しそう。中国では水餃子などとは呼ばぬ、水餃(スイジャオ)なのだ。油潑麺は西安の名物料理。熱乾麺もいい。うーむ、どれにしようか迷うのだが…

自販機で選べるのは油そばと牛肉麺だけである。6つのメニューのうち、2つしか選べない。空きボタンがたくさんあるのに、なぜだ?瓶ビルは瓶ビールのことだろう。中国人は伸ばした音や詰まった音が苦手だ。「マッサージ」を「マサジー」と発音するのが好例である。押したボタンは「パクチー大盛り」。チャーシューも大盛りにしたかったが、両オプションはなかった。う、チャーシュー大盛りにパクチー単品にすればよかったのか。焦ったが故の失敗だ。今後に生かそう。

カウンターで食券を渡す。無言で受け取る店員。麺の太さも聞かれない。なにかリクエストをしてはいけないような圧を受けて、無言で席に戻った僕。

テーブルの上もシンプルだ。おそらく水餃子用の黒酢とつまようじの身。静かな店内は静謐ではない、音楽が流れているが、空気が重い。長居できる雰囲気ではない。

はたしてどのように麺を打つのだろうか。突然、厨房から大きな機械音がした。カウンターに座っていた客が驚いて立ち上がり、厨房をのぞき込んでいた。おそらく製麺機であろう。手打ちの麺など、今の中国ではノスタルジーだ。現在では刀削麺ですら機械で削って鍋に入れる。拉麺のようなシンプルな麺は、手で打った生地を機械で延ばすのだろう。日本蕎麦だって、機械で切ってもそば粉を手でこねるのならば手打ちと称しているのだから、同じことである。

蘭州牛肉麺

お盆にのせられて運ばれてきた牛肉麺はシンプルだ。鶏ガラと牛コツで出汁を取った、澄んだスープに麺と牛肉が入る。トッピングはラー油と刻まれたパクチー。大盛でもこの程度の量なのか。箸とレンゲを取り、軽くまぜてスープを飲む。優しい味わいに刺激が潜む。辛みが後味を引く。軽く汗ばんできた。

美味い。

麺はもっちりとして、舌触り滑らか、伸びもコシもある。日本のラーメンよりも小麦粉の味がストレートに感じられる。新千歳空港で食べた富川製麺所の麺にも似てるように思う。スープがよく絡む。パクチーの香りが食欲を加速する。これはいい。

湯気の立つ、もちもちの麺と出汁の効いたあっさり塩味仕立てのスープ。日本人の口にも合うはずだ。辛いものが苦手な人はトッピングのラー油を入れなければいいだけだ。

牛肉はスパイスと煮て柔らかくしたものだ。チャーシューではない。これが中国式だ。牛肉麺たる所以なのだ。

スープもすべて飲み干して完食。食後の余韻に浸りたいところなのだが、この店は許してくれない雰囲気がある。カウンターで食べていた一人客も、食べ終えるとそそくさと店を出て行った。味はいいのだが、店の雰囲気がぎすぎすしていて、とげとげしくていただけない。

午後は夜九時開店のようだ。この時間ならば雰囲気が変わるのだろうか。それとも酔客なので空気を読まなくて済むのだろうか。HSPスコア77点の私には分からない。

いずれにしろ、この店の空気は私には合わない。食べたらとっとと退散するのである。

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