陸の孤島 玉野
玉野商工会議所青年部の三十周年祝賀会に参加するために函館から伊丹行きの便に乗る。空港からバスで新大阪に向かい、新幹線で岡山へ。サンステの山田村で高菜明太を買おうとしたら、人が並んでいた。相変わらずの繁盛ぶりだ。バスの時間までに買えるか不安になったが、テキパキとした店員の働きで、さほど待つことなく買うことができた。
岡山駅東口の2番バス停からバスに乗り、ここまでくれば玉野にはすぐに着くだろうと思っていたが甘かった。バスが渋川海岸マリンホテルに着いたのは1時間35分後だった。函館から伊丹まで1時間50分だ。大して変わらない。
ここ玉野は、かつては大変栄えた土地だ。瀬戸大橋ができるまでは、本州側の玄関口だった。宇高連絡船。人も車も、ここからフェリーで高松に渡った。ホバークラフトも運行していた。東京からはブルートレイン瀬戸が走っていた。今はサンライズ瀬戸として、東京から瀬戸内海を渡り、高松まで走っている。
日本には、空港もない、高速も通っていない、新幹線もない、鉄道も不便な地域が多数ある。必然的に車社会になるので、公共交通が廃れてしまう。今はいいが、高齢化が進み、自分で車を運転できなくなれば、車社会は維持できない。この切り札がuberのような低額で車に乗れるサービスだったり、自動運転のタクシーだったりするが、前者には法規制の問題が、後者には技術的な問題がある。自分が後期高齢者になるまであと25年。それまでに実現してるだろうか。
19時半までの祝賀会に参加するのに、到着したのが19時過ぎ。スーツに着替えなければと焦る私に、LINEで「そのまま来ても大丈夫!」とトークが流れてくる。仕方ない、このまま参加だ。会場に入ると、懐かしい顔が多数あった。私の席の隣には真椎さんが座っていた。とりあえずビールで乾杯すると、すぐにステージで記念撮影。そして閉会。私はステーキをいくつかつまんだだけだ。山田村を食べておいて正解だった。
大勢の参加者はそのままホテル地下の二次会会場に向かったが、地元の梶原氏が一部のグループだけ、別途会場を手配してくれた。ホテルのバスで宇野駅前に向かい、スナックで二次会となった。
満月堂食堂
久しぶりの再会で大いに盛り上がった二次会から居酒屋で三次会。ここは美味かった。そして三次会も終わり、締めを食べに行く。店を出ると正面にラーメン店があった。満月堂食堂。梶原氏曰く、この店はラーメン店だが、ラーメン以外は美味い。ラーメンはマズイので食べないようにと厳重に注意される。では、ラーメンを食べたい人はどうすればいいのか?それは近くに美味い店があるから、そちらに行くようなとのことだ。
ラーメンが食べたい。
よって、その美味い店に向かったのだが、すでに閉まっていた。
仕方ない。満月堂に行くことになった。梶原氏は酔ってることもあり、店の前でしつこく「この店でラーメンを食べるな。」と注意喚起している。そこまで言われたら、むしろ興味が湧くではないか。とりあえず店に入り、カウンター席に座る。
メニュー
メニューはラーメン、ご飯物のいずれも充実している。
壁には様々なメニューがあり、居酒屋のようだ。
やはりラーメン屋だからいろんな麺のメニューがある。仲間は梶原氏の忠告に従って、カレーやオムライスなど、ご飯物を注文していた。
よし、ならば私は満月ラーメン(温玉、海苔入り)を頼もうではないか。さあ、食わせてもらおうか、その不味いラーメンとやらを。
店主は愛想がないというか、職人肌と言うか、とっつきにくいことは間違いない。梶原氏は玉野に訪れた多くの人に店を案内するために、どうしても店の出入りが増える。戻ってくるときには客を連れてきている。なのに、店主は梶原氏に冷たく言い放った。
「今日はさ、あんたがたの仲間にやたらと店を出入りされて、迷惑なんだよね。」
嫌味で言ってるのか、本気で言ってるのか、それとも冗談なのか。梶原氏がムッとして店を出て行ってしまったので、本気のようだ。何を考えてるんだろうか。
満月ラーメン(温玉、海苔入り)
さて、ラーメンだ。見た目には特に問題はない。豚骨醤油系のスープに温玉と海苔。
麺は細めのストレートだ。
腹が減っているので、いきなり麺を食べてみた。
なんだこれ?
もう一口食べる。
なんだ、この味?変だ。覚えのある味だ。なんだっけ。
さらに一口。
分かった。かん水臭い。不味い。これ、マジで食えないよ。何故だ?疑問を持ったまま、食べ続ける。チャーシューや温玉は問題ない。なんでこんなに不味いんだ?半分ほど食べたところで箸を置いた。無理だ。気持ち悪くなってきたので、トイレに行き、食べたものを戻してしまった。仲間らはオーダーしたものをぺろっと食べていた。ご飯物は美味かったらしい。
恐るべし。地元の人間のアドバイスには耳を貸すものだ。ハイボールで口をさっぱりさせると店を出た。
一人が言った。
「あの店主、客に向かって失礼じゃありませんか?」
本当だね。梶原氏、出て行って戻ってこなかったもんね。どこに行ったんだろう。酔った頭で、ふと思った。もしかして、梶原氏が店の前で言ったことが店主に聴こえたかな。彼は声がでかい。それで店主が怒ったのかもしれないな。
「この店のラーメンはマズイから食べるなよ!」
今度来るときは言われた通りにするよ。
満月堂食堂(食べログ)
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)