三次会
会議は予定通りにつつがなく進行し、懇親会、二次会も時間通りに終わった。やっと三次会だ。飯が食える。しげ寿司に向かおうとする私を地元民が静止した。
「今、満席です。」
マジですか?なら、どこに行けと言うのだ?滝川で知ってる店は数件と無いのに。
「この上の店を取りました。」
二次会のスナックはビルの地下であったが、同じビルの一階に鮨屋があると言う。言われた通りに地下から階段で地上に登りビルの一階を見ると、寿司屋の店構えが目に入ってきた。
暖簾には「おくの」とだけ記されている。鮨屋とはどこにも書かれていないが、雰囲気的に居酒屋ではない。割烹か鮨屋であろうことは想像できた。
「この店もなかなか旨いですよ。」
地元民の一言に胸が高まる。そうか、旨いのか。北海道で地元民による評価であれば間違い無いだろう、鉄板だ。ハンマーで地球を叩くようなものだ。ハズレっこない。ああ、タイタニア、小説は二十年越しに無理やり完結したようだが、私はアニメかコミックで続編が見たいぞよ。小説は読むのが面倒だぞよ。
店に入るとお座敷に通された。広い。ゆったりと食事ができそうだ。今晩の繁華街には全国から集まりしスーツを纏った酒鬼達が餌食を求めて徘徊している。下手に出ると巻き添えを喰らう。ゆったりと酒を嗜み、寿司をつまむのが僥倖と言うものよ。
鮨おくの
注文まで済んでいるとのことで、メニューを見る機会も与えられなかった。まずはドリンクで乾杯だ。
しばらくして大量の寿司が運ばれてきた。すごい迫力だ。巻物が多いが、握りもなかなかのもの。北海道の食材で埋め尽くされているではないか。
いくらにトビコ。こいつら魚卵の軍艦巻で北海道に勝てるのは、はっきり言って北東北くらいだ。南東北の一部や新潟北部の村上など、鮭の稚魚を放流している地域を除けば、イクラは北海道から取り寄せるしかない。
トビコは飛魚の卵であるから、理論上では全国どこで獲れる。沖縄本島辺りでも飛び魚はいるようで、半島南部の八重瀬町には出汁に飛び魚を使った沖縄そばである「トゥブー(飛ぶ)そば」を出す店があるが、先日訪れたときは、トゥブーが不漁のために豚骨出汁になっていた。にもかかわらず、トビコの卵は北海道産とのイメージが私にはある。プチプチした食感がたまらない。
寿司ネタも中トロ、赤身、帆立にカニ。昔は北海道で美味しいマグロを食べることが難しかったが、今は違う。もちろん、帆立は北海道が誇る食材だ。
カニにつぶ貝。内地だとカニのほぐし身を軍艦巻きにしたものが主流だが、握りで出てくるところが北海道なのだ。もちろん、甘みがあって美味い。つぶ貝はしっかりとした食感と磯の香り、つぶ貝の旨味。生でも煮てもイケるのである。
しめ鯖は浅く締めたものが好みなので少し残念。鉄火巻きはなかなかの迫力だ。
お好みを追加注文する。シャコ、真イカにウナギ。北海道では穴子ではなく鰻の握りが一般的である。シャコは大きなものが獲れる。特に石狩湾のシャコは有名だ。真イカは言わずもがな。
締めは何と言っても雲丹。オレンジ色が強いのはバフンウニだ。味もパンチがある。甘みが強い。握りに適したウニだが、私は海鮮丼でもぜんぜんイケる。こんなウニばかり食べていたら、内地の鮨屋のウニが食べられなくなってしまった。
満足!
三次会を終えた私は、タクシーで深川へと向かった。滝川市内はホテルが満室で、予約できなかったのだ。明日も朝早い。起きれるかな。
結局、翌日もここで締めの寿司を食べたのだが、かなり酔っていたのか、写真が一枚も無いのであった。
ついでに記憶もほとんどない。無念。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)