高松市 古馬場 金比羅うどん
骨付き鳥を食べた私と3人は店を出て、ホテルに向かって歩いていた。このアーケード、ライオン通りを国道に出れば、たどり着けるのだ。我々酔っ払い四人衆の前に現れたのはうどん屋の看板だ。
「うどん、食べない?」
外川女史が提案する。確かに腹が減った。もう午前1時を過ぎている。鶴丸も五右衛門も閉まっている。我々は迷わず店に入った。
メニュー
店内に人はまばらだ。これから混むのか、すでにピークは過ぎたのか。平日の夜なので、こんなものなのだろう。テーブルに座るとカウンターの上にあるメニューを見た。うどんと蕎麦の両方があるのは珍しい気がする。私はうどんだ。それもしゃぶしゃぶ肉うどん。めいめいに食べたいものを注文する。
きんぴら?
「ねえねえ、この店って、なんて読むの?きんぴらうどん?」
青森県民の外川女史は、この辺りの知識に疎いのだろう。すかさず岡山県民の梶原氏が答える。
「こんぴらじゃけえ。こんぴら様言うてなあ、こっちじゃ有名なんよ。」
うんうん、と私もうなずくが、実は名前しか知らない。
こんぴらさんとは、この地の琴平山(ことひらやま)の中腹に位置する金刀比羅宮(ことひらぐう)の愛称である。平安時代より江戸時代までは金毘羅大権現(こんぴらだいごんげん)と呼ばれていた。これが「金毘羅さん」の由来だが、明治時代の神仏分離で現在の名前に改称されたとのことだ。なぜなら、大物主神(おおものぬしのかみ)をまつる神社でありながら、金毘羅大権現、つまり仏教の仏様が鎮座していたからだ。孔雀王が好きな方なら「宮毘羅(くびら)」でピンと来るのではないだろか。
今度、行ってみよう。私は無神論者だが、寺社仏閣は嫌いではない。訪れるなら早朝に限る。人気がない、静謐な空気感が好きだ。
おでん
店の入口の方におでんコーナーがある。讃岐ではうどんとおでんは必ずセットだ。しかもセルフだ。自分で好きなものをとって食べるスタイルなのだ。もちろん、コンビニおでんとはひと味もふた味も違う。
適当にとって味噌だれをかける。味が染みたおでんはどれも味わい深い。うどんが来るまで、おでんを肴に相変わらず酒を飲みながら話が盛り上がる。
しゃぶしゃぶ肉うどん
まずは私の肉うどんが来た。しゃぶしゃぶ肉うどん。讃岐で肉うどんといえば、甘辛く味がついた肉を入れたものが一般的だが、ここはしゃぶしゃぶだ。肉のうまみをダイレクトに味わうことができるし、煮込んで軟らかくした肉ではなく、絶妙な火の通り具合で柔らかく食べられるのがいい。個人的にはありだ。
なんといっても細麺だ。ラーメンとまではいわないが、手振りうどんのような麺がのどごしよく、コシもさほど強くない。個人的には大変好みだ。つゆはだしがきいて文句なし。美味い。飲んだ後で腹が減ってることもあり、箸が進む。薬味もバランスよく、食欲を刺激する。
三重県民の上山氏はざる蕎麦を注文していた。見た目にも美味そうだ。そば湯もついてきたということは、うどんと蕎麦を別の鍋でゆでているということか。個人的に、蕎麦とうどんの両方を提供している店は、どちらかが美味くなかったりする。なので蕎麦もしくはうどん専門店で食べたいと思うのだが、ここは珍しい。上山氏も美味そうに食べている。
やるな、金比羅。
まだまだ続く
腹もいっぱいだ。酒も十分に飲んだ。なんたって午後6時から午前1時半まで酒をかっくらってるのだから当然だろう。会計を済ませて店を出ようとしたそのとき、後ろから声をかけられた。
「なんや、もう帰るんか?」
そこには還暦の大先輩と三歳年上の荒川女史の二人がいた。
「冷たいなあ。ちょっとくらい付き合うてくれてもかまへんやろ?」
還暦の先輩が大阪弁でぐいぐい来る。
眠い。
しかし先輩の意向を断ることはできない。二人が座るテーブルに座り、一杯だけ付き合う。
釜玉うどん
先輩は釜玉うどんを食べようとしていた。写真を撮らせてもらう。美味そうだ。私が食べたうどんよりも太い気がする。見た目にも典型的な讃岐うどんだ。きっとコシが強いのだろう。
ざるうどん
荒川女史はざるうどん。薬味が豊富だ。
こちらもキラキラと輝くうどんによだれが出そうだ。一口食べさせてくださいと言いたかったが、そうするとさらに長居することになる。
重ねて言おう。眠い。
もう限界なので勘弁してくださいと断りを席を立った。二人とも鬼ではない。ただ、久々に顔を合わせたので話をしたかっただけだ。ありがたいことだ。
いつも食べている讃岐うどんとはだいぶ違った。いや、美味かった。これはぜひとも家族にも食べさせたい。お土産用のうどんを買って、店を後にした。
明日は家に帰れる。
※閉店しました
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)