すすきので見かけたかわいい羊

毎年お盆は上砂川町の仮装盆踊り大会を手伝うために北海道を訪れる。那覇から千歳までの直行便に乗ると、千歳着は午後５時。そこから砂川まで行く気力はないので、札幌に泊まることにした。たまたま知人が一緒にご飯を食べようと声をかけてくれたので、それならば行きたい店があると、火鍋を食べることを提案したのだ。

場所はすすきの交番のちょうど真裏、ＬＣ拾六番館の二階である。可愛い羊のキャラで店があることはすぐにわかるのだが、入口がわかりにくい。この羊のキャラには少々思い出がある。

数年前になるだろうか。すすきの交差点から裏に入ったところにある羊の看板を見つけたのは。なんぜこんなところにあるのが不思議であったが、四川火鍋の店と書いてあるのをみて、なるほどと思ったものだ。

小肥羊（シャオフェイヤン）、中国では大変人気のあるアニメである、と勘違いしていた。それは喜羊羊（シーヤンヤン）である。けいたまの姉に当たる、長女で一子相伝の腐女子ことハルハルによれば、中国のアンパンマンなのだそうだ。

中華火鍋専門店 小肥羊

以前、一人で店を訪れたことがあるのだが、入口で何度となく声をかけたにもかかわらず、店員が誰も出てこなかった。次回は複数人で訪れようと決めていたのだ。店に入ると個室に通された。まずはメニューをチェック。

「火鍋スープを作るのは世界に数名しかいない鍋師だけ」

鍋師…ねえ。 簡体字中国語は锅师。検索してもなにも出てこない。この店のウェブしか表示されない。中国語で検索しても、そんな資格は出てこない。世界中に500店舗を展開しているのに、スープを作れるのが数名しかいないって、どうなんだろうかと突っ込みたくなるが、やめておこう。この店をディスりに来たわけではない。火鍋を味わいに来たのだ。美味ければ、それで、いいんーだ。

当然、アラカルトにする。コースは食べきれそうにない。白湯＋麻辣の二種スープとし、中辛にする。

火鍋はまだまだ日本では一般的でないのだろう。食べ方まで案内が付いている。香辛料はすべて取り除くだと？そんな食べ方は中国では絶対にしないと思う。面倒なので香辛料は鍋の中に放置なのだ。え？雑炊の時の話か。なんだ。

まずは前菜。拌干絲とかいてあるが、日本語では「干し豆腐のパクチー和え」となっている。ならば中国語も香菜拌干絲とするべきではないか、というツッコミは置いといて、うん、いいね。好物なのです。干し豆腐とパクチーを油と塩で和えた中国では定番の前菜メニュー。麺のような豆腐なのでヘルシーなのです。日本でもっとはやりそうだけどなあ。こいつが不味い店は料理がおいしくないと、個人的には思うのです。

パクチーサラダ、見た目にカラフル。独特の香りと玉ねぎの刺激が見事に調和している。マニアにはたまらん。

ピータン豆腐。薬味がパクチーとガリってのが不思議な感じ。通常は刻みネギである。まあ、これも悪くないか。

火鍋を食べよう

そして鍋だ。二色である。野菜は白、肉は赤。麻辣スープに野菜を入れると、なかなか刺激的な体験をすることになるので、注意が必要だ。

独特のピラミッド状に積み上げられた肉は、もちろん羊。凍った肉を機械で薄くスライスすると、くるくるっと丸まってしまうのだ。これを積み重ねたものである。つまり、このにくはれいとうものなのである。だが、極薄なので鍋に浸せば、たちどころに火が通るのであーる。

ぐつぐつと煮立った麻辣スープに肉を投入。数十秒ほどでサルベージする。うん、火が通っている。長く入れておくと硬くなるので、煮えすぎ注意なのだ。これを口に運ぶ。ああ…辛みとしびれ、コクと香り、中華ならではの香辛料とハーブを生かした、リッチな味わいが口の中に広がる。刺激的かつスパイシーで、なおかつ脂の甘みと肉の旨味が素晴らしい調和を作り出しているのだ。癖になるのも当然である。

野菜はレタス、豆苗、春菊、きのこに凍み（しみ）豆腐である。和食ではあまりレタスを加熱して食べることがない。だが、私は加熱したレタスが大好きだ。豚肉とレタスの炒め物、レタスのオイスター炒め、スープに入れても美味いし、鍋の具材にも合う。特に中華鍋では最高なのだ。さすがに味噌汁に入れたことはないのだが。

そして凍み豆腐。これも中国人が好んで鍋に入れる具材である。白湯スープで加熱し、パクチー満載のゴマダレにつけて食べる。ああ、いいなあ。この独特の食感、タレがよく絡む。春菊のような香りの強い野菜は具材に向いているのだ。豆苗は火を通しすぎずに、シャキシャキで香りと食感が消えないように加熱する。

最高！

肉をお代わりなのだ。今度は富士山のようなスタイルで出てきた。二人前だからだ。ひたすら麻辣味の肉を食べる。ゴマダレで野菜を食べる。ハイボールで流し込む。ご飯は要らない。炭水化物は不要だ。ああ、羊肉最高！ジンギスカンも美味いが、火鍋もいい。なんだか、北京の涮羊肉（羊のしゃぶしゃぶ）が食べたくなってきた。日本に店はあるだろうか。

肉と野菜でおなか一杯。満足だ。また訪れてみたい。全国にも店があるようだが、沖縄にはないだろうなぁ。いや、一軒ある。だが、宮古島だ。遠い。また札幌で食べにこよう。