カニ甲羅詰め

北海道札幌市 すすきの 鳥八

札幌も今日は雪

「犬が人を噛んでもニュースにならないが、人が犬を噛めばニュースになる。」という言葉を思い出した。ここは札幌。雪が降るのは当たり前。昨晩の東京の雪など、話にもならない所だ。

「あれくらいの雪で大混乱するんだね。」

北海道民が言う。その通りだ。札幌に雪が降るのは、犬が人を噛むようなものだ。対して、東京の大雪は人が犬を噛むようなものだ。もしも沖縄にあんな大雪が振れば天変地異だ。実際、今朝は沖縄の自宅前の丘や、5階からいつも見る家の屋根屋根に雪が積もった夢を見て焦った。

この日の札幌は、昨晩の東京と雪の振り方が似たようなものだったが、雪質が違う。誰一人、慌てない。日常とはこういうものだと思い知らされる。とはいえ、道民だって雪を被りたくないし、寒いのは嫌いだ。タクシーですすきのの五条ビルに向かうことにした。

すすきの 鳥八

一緒にタクシーに乗った知人が、数日前のメールに書いていた。

「夜の店、予約しておいたから。美味しいよー!」

彼曰く、私好みの店だから、きっと気にいるとのことだ。開店して間もない店には、客はほとんどいなかった。まだ午後五時だもんな。

我々四人がお座敷に通されると、メニューを見た。

さて、なにを食べようか。

突き出しの揚げ出し豆腐が美味い。お通しの美味い店は、料理が美味いというジンクスがあるが、お通しだけかやたらと美味い店もあるから注意だ。

厚岸産の生牡蠣は「かきえもん」だ。殻の先が丸まっているからすぐに分かる。これだ!牡蠣のエキスが詰まった濃厚な味。もちろん臭みなどなく、レモンの酸味と牡蠣の塩気がサッパリと食べさせてくれる。昨日食べたものも同じかきえもんなのに、これほどの味の差はなんだろうか。

毛ガニ甲羅つめ。ものすごい量が甲羅に詰め込まれている。これで1450円は驚きではないか。知人によれば、このカニは毎日仕込んでいるとのことだ。売り切れ御免なのだろう。

レモンをかけていただくと、これまた濃厚なカニの味が口の中に広がる。うみゃーだが!昨晩のカニとえらく違う。なぜだ?

「美味いでしょ?」

知人が皆に確認する。一同、異議なし。すごいよ、すごい。

続いてたちポンだ。たちとはタラの白子のことだ。北海道手羽真鱈の白子は「真タチ」、スケソウダラの白子は「スケダチ」と呼ぶ。もちろん、真タチが一番美味い。濃厚でクリーミーな真タチをポン酢ともみじおろしでいただく。うーん、美味い。日本酒が飲みたくなるが、ここはハイボールで我慢だ。まだまだ平日だ。明日も明後日も夜は酒席がある。

イカリングは普通に美味い。グラタンコロッケが、またすごいな、これ。クリームコロッケよりも濃厚だ。居酒屋のレベルじゃないぞ。

コマイの焼いたものが余っている。これでも食えと、すっかり冷えたコマイを渡されて、仕方なくかじる…ん?なにこれ?美味いじゃん!え?こんなに冷えてんのに、なんで美味いの?

もずく…はいいよ。どうせ沖縄産でしよ?地元で食うから、いらない。食べてくれ。

最後が中札内のシンコ焼き。へー、コハダの小さいやつね。どうやって焼くのか、不思議に思っていたのだが、出てきたそれは明らかにチキンだ。

「鳥の半身をシンコと言ってね。」

それは反則だろう。初耳だぞ。中札内ってどこだよ?

「十勝の方ですよ。」

まあいい、食ってやるよ。なんか、中華みたいだな。

すごい。これ、多分、塩して炭火で焼いただけだよな。柔らかくて適度にジューシーなのに、味が濃い。ついつい食べてしまう。酒にも合う。ザンギよか美味いんじゃね?

四人で焼酎二本を空けてフィニッシュ。オープンラストで呑んでいた。今夜はこれで解散でしょう。

「もう予約しちゃった。」

一人が来週の接待にこの店を予約していた。今後、私もこの店を使うことにするよ。

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