札幌駅前で晩飯は厳しい罠
札幌の繁華街は間違いなくススキノである。食事もいろんなものが揃っているが、蕎麦だけは美味い店がない。しかしアクセスの中心地は札幌駅前だ。ここから空港にエアポート快速で向かう。十二年後には新幹線が開通しているはずだ。なおさらターミナル駅としての重要性が増す。
特に朝が早い時は駅前のホテルが便利だ。雪が降っても、地下空間を通れば濡れずに済む。足を滑らせることもない。大丸やパセオ等のデパートもある。地下街もある。
しかし札幌駅前が賑わうのは昼間だ。夜は早い。大抵の店も午後九時に閉まる。よって夜八時半以降に食事をしようとすると、札幌駅前での選択肢は極端に狭まる。いいなと思う店があっても、店内に入った瞬間に「終わりです。」とファイナルアンサーを告げられ、ノーフードで終了となるのだ。
この日もそうだった。ディナーを求め、かれこれ四十分ほどさまよっている。店はどんどん閉まっていく。選択肢が狭まる一方だ。駅地下にはカレー、てんや、吉野家、ハンバーガーに立ち食い蕎麦。どれも却下だ。焼肉も…一人焼肉は平気なのだが、気分ではない。なんせ、昨晩飲みすぎだ。今日は食事がしたい。身体にいいものが食べたい。
ならば北海道名物スープカレーを食べて、スパイスでデトックスだなどと、高架下の店に行けば閉店時間を過ぎている。
うーむ、分かった。
ススキノに行けばいいんだろ!
地下鉄に乗って不夜城へと向かった。
スープカレー ショーリン
ススキノにはいくつものスープカレーの店がある。その中で今回セレクトしたのはこの店だ。おしゃれな外観。ドアを開けると長めの通路。奥のドアを開けると眼前に店が広がる。渋い店内。カウンターに通される。
メニュー
さて、何を食べようか。
チキンかラムか悩むところだ。ノーマルかベジタブルか悩むところだ。昼の失敗が頭をよぎる。ベジタブルはボリュームがありそうだ。
まてよ。
メニューに選び方が書いてある。スープ、辛さ、ご飯の量、トッピングを選ぶとある。
ふむ。
ここは人気ナンバーワン、柔らかなチキンをセレクトしよう。ベジタブルは無しだ。スープはココナツがいい。海老味噌カレーに海老味噌ラーメン、そういえば昼のラーメン店にも海老味噌ごあったな。そんなに海老味噌って旨いものだろうか。いや、私も海老味噌は好きなのだが、ココナツも好きなのだ。よってスープはオリジナルだ。辛さは激辛…いや、昨晩痛めつけた胃腸を慮(おもんばか)って辛口の4番に留めておこう。ご飯はノーマルだ。大盛にしてはならぬ。トッピングはオクラにも惹かれたが、やめておこう。
BGMはセクシーな店でよくかかっている洋楽だ。いや、深夜のバーでもかかっているか。正統派の方じゃない。青い光が似合う、アメリカンなバーの方だ。
トイレは店外にある。男女共用だ。便座は洋式だが、温水洗浄便座ではない。
なかなか出てこない。客はそれほどいないのだが。カウンターの上に置かれたカバンに気づく。これは保温バッグ。そうか、近くの店への配達もしているわけだ。ここはススキノ、飲屋街。当然のことだろう。
チキンカリー
まずはライスがきた。続いてカレーのお出ました。旨そうだ。まずはスープを一口。スパイス香る辛口の液体が胃にしみる。もう一口。食感はさらっとしているが、コクのある辛さが後を引く。汗が出てくる。旨い、気持ちいい。
肉は柔らかいほろほろにほぐれていく。人参が甘い。チキンカレーはしっかりと煮込んだ肉がカレールーと一体化するが、スープカレーは違う。スープがソースの役割をして、しっかりとチキン本来の味を楽しむことができる。
スープと具材を食べたらすぐにご飯を口に追加投入だ。
旨い。
じゃがいも、たまご、ピーマン、人参にチキン。具材の組み合わせを変えながら、味を楽しむ。野菜は素揚げではなく蒸してあるようだ。さっぱりしている。
コリコリした軟骨がうまい。
完食だ。
うーん、物足りない。やはりベジタブルで大盛が正解だったか。
いや、夜も遅い。これくらいで済ませておこう。今日はおとなしくホテルに戻るのだ。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)