今日こそ食べてやる
夏の北海道で食べたいものの一つに活イカがある。今年に入って、横須賀で食べ損ね、博多でも食べられず、これで三度目の正直だ。とは言え、まだ食べに行くと決まったわけではない。今日の会議は三時間の長丁場。懇親会の案内がないと言うことは、まだセッティングされていないはずだ。この状況を利用しない手はない。
思ったよりも内容が充実した会議となり、定刻通りに終了することができた。しかし、私にとって本番はこれからだ。さあ、懇親会ばどうする?
「メシ、食いに行くよね〜」
一人が皆に声をかける。
「ススキノに出るべさ。」
いいぞ、いいぞ。その調子だ。エレベーターで一階に降り、ビルの外に出る。
「誰か、店知ってる〜?」
キター!!!!
「泳ぎイカ食べない?活イカ。」
私の提案に一人が答える。
「あ、だよねえ〜。旬だからイカが入ってきてるよね〜」
想定通りだ。
「皆んなでイカ食べに行くべさ〜。」
反対意見は無く、満場一致で私の案は採択された。
ふっふっふ、計画通りだ。ところが、想定外のことが起きる。店の名前が思い出せない。三回も行っているのに、店の場所はだいたい分かるのに、思い出せない。曖昧な記憶を頼りにネットで検索しても、明らかに違う店が出てくる。
かいゆうてい、ではなかったのか?
三年前に一緒に食べに行った三重県民に電話する。覚えていない。次にススキノでよく遊んでいる、これも一緒に食べた岡山県民に電話する。
「よくぞ、私に電話してくれました。」
なぜか礼を言われる。
「その店はですね…」
もったいぶらずに早く言え。
「開陽亭です!」
そうか、「かいゆうてい」ではなくて「かいようてい」か!
「そこより『はちきょう』の方がいいよ。」
はちきょうは昨年4月に、それこそ岡山県民7名と食べに行ったし。おまけにあの店は羅臼だし。知床だし。活イカ無いし。
と言うことで、店が判明したので、タクシーに行き先を告げる。目指すは南6西4のホワイトビルなのだ。数分で目的地に着く。間違いない。ここだ、この店だ!しかし、満席だ。人気店だから当然だ。南7西5に新店舗ができたと言うことで、その場で予約を取ってもらい、ぞろぞろと移動する。目指すはTマークシティーホテル。その地下に新しく店ができたとのことだ。
開陽亭
まだ新しいホテルなのか、テナントは開陽亭しかないようだ。地下に降りる。なんと、このフロアすべて開陽亭らしい。個室がたくさんあるので、グループには最適だ。新しい建物なので、落ち着いた内装が一層清潔感にあふれている。
まずはお通し。白松前漬け。いきなりイカで攻めてきたかぁ。
今日のおすすめも豊富だ。
まずはサラダ。野菜が美味い。水々しい。玉ねぎも甘みがある。
活イカ
そして念願の活イカ!まだ足が動いている。型は小さいが、味は問題ない。身が透明で、食感も滑らか。ああ、幸せだ。肝を食べる。味がしない。そう、新鮮なキモは味がないのだ。イカは一日ほど置いてから食べた方が、身も肝も旨味が出るのだ。だが、鮮度もすぐ落ちるので、美味いイカを食べるタイミングは難しいのだ。
カニクリームコロッケ
続いては、これまた開陽亭名物のカニクリームコロッケだ。衣はサクッと中身はトロッと。お約束だ。これを食べると前妻を思い出す。オーストラリアに行った時、前妻がガイドに質問した。
「虫はどこで食べれますか?」
全員、目が点になった。原住民のアボリジニはカブトムシの幼虫を食べると聞いた。その話を前妻にもした。ガイドは思いっきり引いていた。
「すいません、ちょっと私には分からなくて…」
戸惑いながらも答えるガイドに、前妻は思いっきり落胆の表情を浮かべた。その後、会社でその話になった時、前妻が言った。
「中国ではね、セミを食べるよ。カイコも。おばあちゃんがよく炒ってくれてね。それを食べるの。外はサクッと、中はとろ〜っと。カニクリームコロッケみたいで美味しいよ。」
話を聞いていた全員がしばらくの間、カニクリームコロッケを食べられなくなったのはいうまでもない。
ちなみに私も虫を食べるのは平気だ。イナゴは好きだし、スズメバチも食べたことがある。中国でゲンゴロウを食べた時は…この話はいずれ。
どんどん料理が出てくる。カレイの煮付けだ。
ジンギスカン
これはなんだ?ジンギスカンだ。さすが道産子。
腹がいっぱいだ。この店は個室が多い。急なグループでの会食でも予約が取れそうだ。味は本店と変わらない。今回は「うにぎり」が食べられなかった。イカも小さかった。今度こそは大きなイカとうにぎりを食べたいものだ。
開陽亭
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)