昨晩、娘のハルハルに三者面談は九時三五分からだと言われた。九時半に予備校のロビーで待ち合わせだ。ホテルは素泊まりにした。東京だから朝飯を食うところなどいくらでもあると思ったのだが、それは平日の話であり、日曜の朝は店がほとんどやっていないことを忘れていた。
それでも新宿に行けばなんとかなると思ったが、朝からチキンカツやがっつりカレー、ラーメンなどは食べる気がしない。ションベン横丁改め想い出横丁を通ってみたが、何か違う。
どうしよう。
西口の大ガードを横目に小瀧橋通りに入る。うーん、店がない。
富士そば。ここしかないのか。時間もない。朝蕎麦で済まそう。
さて、何を食べようか。富士そばはキライではないが、冷たい蕎麦は流石に無理がある。それに汁物が食べたい。かき揚げ天そば…いや、春菊天だ。沖縄では食べられない。香り野菜好きの私にピッタリなのはこいつだ。
自販機で食券を買い、カウンターで店員に渡す。席を確保し、蕎麦ができるのを待つ。自慢のつゆは毎日手作りか。新鮮な蕎麦つゆって初めて聞く表現だ。
さて、私の蕎麦ができた。カウンターに取りに行く。席まで運び、ようやくブレックファーストの時間だ。どんぶりの端に口をつけ、つゆを飲む。ああ、甘めの優しい味だ。疲れた胃を優しく包み込んでくれるかのような、滋味にあふれたつゆだ。
お次は蕎麦だ。一口すする。コシも伸びもある、バランスのとれた麺。そこらの立ち食いそばの麺とは違う。確か四割蕎麦のはずだ。
そしてメインだ。春菊天を箸で割る。ん?サクッとしない。いやな予感。小さいかけらを口に入れる。
香りいいのに粉っぽい。
そばつゆに溶けないように、しっかりと衣をつけたのかだろうか、これはつけすぎだ。もはや天ぷらというより、ダマの詰まったお好み焼きだ。
食べられない。
温かいそばだからいいものの、これを冷やしにのせたら惨劇だ。
薬味はシャキシャキのネギ、ほんのりした辛味がいい。七味はそれほど辛くはないが、長野でのインパクトがまだ尾を引いているのだろう。ワカメがたっぷりでよかった。半熟タマゴを一気に吸い込み、残りのそばをかっこんだら終了だ。
天ぷらは仕方ない。カリッと揚げるのがうまさの秘訣なのに、ベタベタとかふにゃふにゃでもなく、ネチョネチョの天ぷら。
おかしいでしょう。
何かの記事で、富士そばの社長がインタビューに答えていた。当社の蕎麦は各店の店長の裁量が大きいのですと。店によってメニューにばらつきがあるのもそのせいなのだと。
蕎麦とつゆの基本は変わらないはずなので安心して食べられるが、肝心の天ぷらがこれでは残念だ。
ああ、うまい春菊天が食いたい。いつどこで出会えるのやら。
さて、ハルハルとの邂逅点に向かうとするか。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)