モッツァレラのハンバーグ

札幌駅 パセオ 牛忠 モッツァレラのタルタルハンバーグ

少し早めのランチ

gen昼頃に札幌駅を出るスーパーおおぞらで帯広に向かう。現在時刻は午前11時過ぎ。30分で食事を済ませれば間に合う。

したっけ、なにを食べようか。

札幌駅地下の飲食店街にある店はほぼ食べた。もう一度行こうという気になる店があまりない。カレーは昨日も食べた。ラーメンを食べたいが、駅の中には行きたい店がないし、ラーメン共和国は混んでいるだろう。

切符を買い、駅構内を歩く。パセオの飲食店街か。うーん、とんかつねえ。ハンバーグが気になるかな。とりあえず、飲食店街を歩いてみよう。

最初に目に付いたのは、カニの押し寿司と幌加内そば。美味そうだ。幌加内そば食べたい。だが、先日の定期診察で少し体重が増えていたので、来月の診察までには体重を二キロ落とさなければならない。

炭水化物は控えなければ。

時間のあるときにジムに行ければいいが、装備一式は結構な荷物だ。カバンに入らない。昨年の11月は割とのんびりしていた。天気のいい平日は、お腹の中のゆうたまと妻と三人でドライブに行ったものだ。けいたまは保育園に出勤していた。それが一転して、今年の11月は五泊出張が二回。北海道出張は三回。忙しすぎる。

牛忠(ぎゅうちゅう)

さらに歩く。スープカレー、昨日も食べた。お好み焼き、大阪で食べた。次は…ん?なんだこれ?

白いハンバーグ?

近づいてみる。とろけるモッツァレラのタルタルハンバーグ。すごい。なんだか美味そうだ。これにしよう。

店に入ると、客は誰もいない。まだ11時半にもなっていない。

「お好きな席にどうぞ。」

その通りにさせていただこうか。手前のテーブル席に陣取った。メニューを見るがら私の決意に変わりはない。店員が水を持ってきた。

メニュー

「メニューがお決まりになりましたら…」

私は彼女のセリフを遮った。

「これください、モッツァレラのハンバーグ。160グラムで。」

メニューは心に決めていたが、肉の量まで頭が回っていなかった。本当にそれでいいのか、自分に問いかける時間はもうない。賽は投げられたのだ。彼女は私に切り返してきた。

「ご飯の量は普通か大盛、どうなさいますか?」

ふふふ、これでどうだ。受けてみろ。

「少なめで。」

彼女は少しも動揺することなく「分かりました。」というと、笑顔で立ち去った。

やるな。

時間は11時18分。30分までにハンバーグが出てくれば、なんの問題もなく列車に乗れる。暇なのでメニューを見る。他のメニューもろくに見ずにハンバーグを頼んだことを、今さらなんの後悔もしないが、アンガス牛一押しだな。

アンガス牛とはイギリス原産の牛で、柔らかい肉質が特徴。世界の牛肉料理事情を変えてしまった品種である。肉牛の飼育には二種類ある。放牧と穀物主体の餌の違いである。草を食べた牛の肉は独特の香りが強く肉も硬い。対して穀物中心の餌で育てられた牛は肉質が柔らかく香りも控えめになる。オージービーフは放牧がメイン、和牛やUS牛は後者がメインだ。

そのために同じアンガス牛でも、オージービーフとUS牛で味がまったく異なる。オージービーフが苦手な人は、放牧で育った香りの強い牛肉が食べられない人なのである。

モッツァレラのタルタルハンバーグ

店員がお盆に載せたハンバーグを持ってきた。真っ白だ。グツグツ言っている。私の眼前に置きながら、いくつかの注意事項を説明してくれた。

「鉄板は熱いのでお気をつけください。」
「ハンバーグは中が赤いので、溶岩で熱して焼き切ってから食べてください。」
「ソースをかけると跳ねることがありますので、ご注意ください。」

沖縄のステーキと同じ食べ方だな。熱い鉄板のステーキが最初からウェルダンだと、最後には焼きすぎた肉となる。レアで注文し、初めのうちはナイフで切った断面を鉄板で焼きながら食べる。そのうちに肉にどんどん熱が入るので、断面は赤からピンクに変わり始める。

味噌汁のフタを開けると赤出汁だ。まずはサラダから。野菜がシャキシャキでみずみずしい。ドレッシングは酸味が効いた和風なのか、おろし玉ねぎなのか、野菜との相性も抜群だ。久しぶりにみずみずしいサラダを食べた気がする。ホテルはやはりダメだ。

ナイフやフォークはない。ライスは大きめの茶碗だ。箸と味噌汁だ。太めの割り箸であらびきハンバーグを切るのは、少し力が要る。箸でつまんで、溶岩の上で焼き、ソースにつける。チーズが伸びる伸びる。納豆より伸びる。口に入れる。

ん?なんだか予想してきた味とちがう。激しく肉肉しい。調味料はあまり入っていない。赤身肉が中心なので、和牛のこってりとした感じではない。さっぽりとした味わい。タルタルハンバーグと名乗るだけはある。

タルタルステーキは、言ってみればユッケみたいなものだ。生肉料理だ。改めてメニューを見てみると、牛肉100%に少しの塩胡椒だけで焼いたと書かれている。そうだろう。小麦粉で繋がないから、食感が滑らかではない分、肉本来の食感を楽しめるというものだ。

それならばナイフが欲しい。箸で切るには少し難儀である。意外に肉じるもある。肉にチーズのコクとソースの深み。三位一体で織りなす味は、洋食屋のものでも、レストランのものでもない。ハンバーグが発明される以前、野生的なという意味で「タルタル」と名付けられた、まさに生命感あふれるガッツリした味わいなのだ。

タルタルとは「タタール人」のことだ。日本語では韃靼人。ボロディンの曲は有名だ。透明感あふれるフルートの旋律から始まり、オーボエの官能的なメロディーが受け継ぐ。気持ちがホッと安らぐのに、なぜか涙が出てくる。その後はバストロンボーンの低音が響く、舞踏会のような華麗で豪華なサウンドから、アニメの戦闘曲のような展開へ。目まぐるしく曲調が変わり始め、終焉と向かう。「韃靼人の踊り」。曲名は知らなくても、聴けば「これか」と思うはずだ。

カリカリになった鉄板のモッツァレラチーズは、目玉焼きの白身のように鉄板から剥がれる。ハンバーグにのせ、ソースをつけて食べる。ご飯も食べる。もはやハンバーグではない、ステーキだ。

完食だ、ペロッと食べてしまった。現在時刻は11時40分。今日の夕食にありつけるのは、おそらく20時頃。だいぶ時間がある。このままではおやつを食べるのは間違いない。痩せるんじゃなかったのか?空腹には耐えられない。それに、昨晩は酒を一滴も飲んでいないから。

230gにすればよかった。

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