佐賀の思い出
佐賀には仕事で何度も来ているが、1番の思い出は佐賀牛だ。美味かった。他にも佐賀と聞いて思いつくものはたくさんある。伊万里焼だったり呼子のイカや有明海、はなわ?がばいばあちゃんも佐賀だったような。そして武雄温泉…いや、武雄といえば大問題になったTSUTAYA運営の図書館とかぶっ飛んだ元市長とか。あの市長には「FB良品」とかで沖縄の自治体にも手を出されて、ちょっと困ったことがあった。なぜ一介の民間人が行政の話に?と思われるかもしれないが、これも黒歴史なので語りたくない。
私と佐賀の関わり合いはロクなものではないのだろうか。
そういえば大学で一緒に留年した森原も佐賀出身だったな。いつだったか彼が私に言ったことがある。
「みんながさ、俺のこと、時間にルーズだって言うんだよ。19時集合なら、ちゃんと家を19時に出てるのに。おかしいよな。」
おかしいのはお前だ。
「えー?佐賀じゃそれでみんな時間に集まるよ。」
ここは東京だ。
今では、沖縄の「ウチナータイム」に宮崎の「日向時間」などを知っているので、なんとも思わないが、当時はひどく驚いた。南国はのんびりしてるんだな。森原とは彼の披露宴に出席して以来会っていない。最後の会話も、彼の奥さんが外出してる隙に電話で交わしたくらいだ。
「あ、嫁が帰ってきた。」
そう言って彼は電話を切った。
俺は浮気相手なのだろうか。一応、披露宴でスピーチもしたよな。
まあ、元気でいてくれればいいのだが、私は幼稚園から大学まで、学生時代の同級生らとの付き合いが一切ないので、彼の消息も分からない。まあ、私と連絡を取りたいと言う変わり者もいないだろう。なんせ嫌われ者だったからなあ。
そんな黒歴史に幕を閉じるべく(?)新しいミッション遂行のために、再び佐賀の地に降り立ったのだが、仕事の前にどうしてもしておきたいことがあった。それは、佐賀県民のソウルフード「シシリアンライス」を食べることだ。
これもいつのことか忘れたが、自宅で生姜焼きを作り、丼にご飯を盛り、キャベツスライスをのせ、熱々の生姜焼きを載せてマヨネーズで格子状に絵を描いて、豚丼と称していた。この話を誰かにした時、
「シシリアンライスみたいだね。」
と言われたのだ。それからずっと気になっていたのだが、食べる機会がなかった。それが、今回、ついにチャンスが巡ってきた。積年の想いを佐賀の地に込めて黒歴史を一掃するのだ!(なんのこっちゃ…)
まずは情報収集。「シシリアンライス 佐賀駅」でググる。いくつか候補が表示される。店によってだいぶ違うようだ。そんなにバリエーションがあるのか。その中でなんとなく古そうな、違った、歴史のありそうな店を探してみる。
探してみる。
決めた!アリユメだ!
喫茶アリユメ
今は便利だ。Googleマップに店名を入力すればすぐに経路が表示される。佐賀駅から県庁に向けて歩く。
暑い。
ここがメインストリートなのだろうか?店が微妙にある。シャッターが閉まっている店もチラホラある。人通りはあまりない。高校生が固まって自転車で通り過ぎて行く。典型的な寂れた街だ。まさに地域創生の必要があるのだろうが、全国あちこちに行ってよく感じることは、地域がダメになる理由は二つだ。
しがらみとエゴ。
変えなければならないと分かっていても、変えられないしがらみ。
変えなければならないと分かっていても、自分だけは嫌だと言うエゴ。
変えられないのだから変わらない。
変わらなければいずれダメになる。
そう、日本人は一度ダメにならないと次に行けない民族なのだ。
なんてね。(笑)
Googleマップによれば、この交差点を左に曲がれば着くのだが…銀行しかない。えー?
少し戻ってウロウロする。喫茶店らしきものはないが…あれ?なんだ、こののぼり?地下なのか?こんなところに地下街があるのか?フェイントだ!
そもそも地下街とは、戦後の闇市で路上にいた店をどかして収容するために作られたと宅建講座で習った。だから、最近は地下街なんて作らない、作る必要がないのだとも聞いた。
さすが古い、じゃなくて歴史のある店だ。
地下街の入口から薄暗い階段を降りると、そこに店はあった。
渋い。
喫茶店だ。昭和の喫茶店だ。ドアを開けて店内に入る。客層の年齢が高い。グラスもなんだか高級感があるが持ってみると軽い。プラスチック製?
シシリアンライス
テーブルに通されるとすかさずシシリアンライスをオーダーした。ほどなくしてそれは私の前に現れた。おシャンティーなカフェメシといった佇まいだろうか。メニューの写真で見てはいたが、やはり生姜焼き丼とはかけ離れたカラフルな見た目は美しい。
早速、スプーンで野菜とご飯を混ぜ、食べてみる。んー。肉のタレと野菜とマヨネーズに、コーンの甘みが渾然一体。トマトを合わせるとさっぱりした味に変化する。野菜まみれでヘルシーだ。肉は歯ごたえがしっかり。味も甘めで濃いめ。野菜と一緒に食べることが前提だから当然か。
あ、なるほど!
正直、このシシリアンライスは私にはヘルシー過ぎて物足りない。もっとガッツリとなくもコメも欲しい。店内を見ればこの店の客層は60代以上であることは明白だ。マーケティング的に主要客層にあったレシピにするのは合理的で、私はこの店には「お呼びでない」客なのだ。異物なのだ。異分子なのだ。
ということは、見方を変えれば自分の年齢と同じ客層が多い店に行けば、私の求めるシシリアンライスがあるのかもしれない。がっつり食べたいときは若者が集う店に行けばよい。そして二日酔いや病み上がりの時は、この店でヘルシーなシシリアンライスを食せばいいのである。
年寄りはB級グルメを食べないという固定観念を打ち砕かれたような感がある。また機会があれば、今度は新進気鋭のガッツリ系ライスを食べたいものだ。
喫茶 アメリア(佐賀市観光協会HP)
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)