九州自動車道 基山サービスエリア
車をサービスエリアに入れる。停車すると、まずはトイレだ。長かった。用を済ませたらランチだ。さて、何を食べようか。
小籠包子か。腹にたまりそうにないうえに、外で食べるのは嫌だ。サービスエリアの建物内で、ゆっくりとは言わないが、落ち着いて食べたい。
これがサービスエリアの施設だ。お土産も充実していれば、なにか買うこともできるが、先ほどスーパーでいろいろと買ったので、パスしてもいいだろう。そもそもあれこれしてできるほど時間的余裕はない。
ラーメンへのこだわり
施設入口にラーメンとカレーの案内を見つける。九州だけに豚骨ラーメンだろうな。日本で独自の進化を遂げたインド料理であるカレーも、すぐれもののファストフードだ。しかし、正直、カレーを食べる心境にはない。汁物が食べたい。でも、豚骨は今の私には少々ハードに感じる。同じ豚骨出汁でも沖縄そばならウェルカムなのであるが…まあ、いい。中に入ってみよう。
食券を買いに向かう。とにかくラーメンイチオシらしい。サービスエリアの食堂らしからぬこだわり、力の入れようである。やはりラーメンを食わねばならぬか。
ふと反対側の壁を見る。手作り豚汁定食。これもまた旨そうだ。汁物である。ごはんも付いている。今朝は食事を食べただろうか。いや、食べなかった。目が覚めたのが九時前だったのだ。大浴場にも入れず、飯も食えず、何のためにルートインに宿泊したというのだ。
豚骨ラーメンイチオシの激しいPRの右下にある、異質な存在を私の眼は見逃さなかった。これだ。今の私にピッタシなのは、まさにこいつなのではないだろうか。食券機で6番のメニューボタンを押す。麺コーナーのカウンターに食券を差し出す。かしわ飯は不要だ。ラーメンだけで十分だ。
基山レストラン
柚子風味和風ラーメンを食べることにした。
平日限定、高菜取り放題。さすがは九州だ。高菜はソウルフードとでもいいたいのだろう。蕎麦屋で言えば天かす撮り放題、沖縄そばで言えばフーチバー取り放題、とんかつ屋で言えばキャベツ食べ放題と同じ趣旨であろう。だが、私の選択肢は和風ラーメンである。高菜とは分かりあえない間柄の気がする。そもそも私には高菜への執着も愛着もなりはしない。高菜であれば、むしろ浅漬けを食べたいと思うからなのだ。
時刻は11時21分。ランチには早すぎる時間のためか、カウンター席にはだれ一人座るものもいない。一人、隅の席で、ひっそりと息をひそめてラーメンを待つ。時間が刻一刻と過ぎていく。ラーメンはファーストフードだろう。なぜ、すぐに出てこない。私にはもう時間がないのだ。なぜだろう。サスペンスドラマの犯人になった気分なのだ。
柚子風味和風ラーメン
まずはスープを飲む。うん。鶏ガラの効いた、懐かしい醤油ラーメンの味だ。パンチはない。ガツンと来ない。胃に優しい。
麺は細麺ストレートがしっかりとスープをまとっている。あっさりしているが、きちんと味わいを楽しめる。今の私にぴったりの風味だ。目に狂いはなかった。
スープに付属の柚子胡椒を溶いてみる。スープを味わう。口の中にゆずの香りが広がる。出汁の効いた優しいスープに、トゲのないマイルドな刺激が加わり、さらに食欲が刺激される。シャキシャキもやしとコシのある細麺の相性もいい。
梅干しを崩す。甘酸っぱいマイルドな香りが加わる。自己主張がなくスープと一体化している。チャーシューは柔らかく、噛めば肉と脂の旨味が滲み出てくる。スープにはすでに、最初の一口目の面影は欠片もない。柚子胡椒と梅干しが、ノスタルジーあふれる醤油ラーメンを、現代風の豊かでリッチな味わいに改変してしまった。いや、改造か。調味料おそるべし、まさにレアメタル。
パーキングエリアで何か食えればいいやと考えていた私の期待をいい意味で外してくれた。パーキングエリアのラーメンと侮るなかれ。
さて、福岡空港へ向かわねば。気が付けばお昼前。タイムオーバーしている。ギリギリ間に合うかどうかだが、安全運転で自宅に帰ろう。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)