大通付近の気になる店
中華料理、タイ料理、ベトナム料理など、個人的にはエスニック系の料理が割と好きだ。だが、インドネシア料理だけはあまり縁がない。知っているのも、せいぜいサティとナシゴレン程度だ。やはり唐辛子とココナッツミルクをうまく生かしたタイ料理、刺激的な味わいとリッチな香辛料が特徴の中国料理、そして唐辛子はそれほど使わないが、薄味で優しい、ほっとする味わいがベトナム料理。
もちろん、インド料理も好きである。北インド料理だけじゃなく、南インドのサラっとしたカレーも好きだ。出張先でもエスニック料理の店があると、どうしても気になってしまう。例えば狸小路、西7丁目あたりに、以前からずっと気になっているシンガポール料理の店がある。シンガポールと言えば海南鸡饭。海南チキンライスが有名だ。先日、夕食に食べに行ってみたが、定休日でもないのに店は営業していなかった。まさか潰れてしまったのだろうか。未だ真偽は定かでない。
今回はいつもの宿とは違うホテルに泊まっているため、昨晩もこの辺をずいぶん徘徊した。悲しいことに、入ってみたいと思う店が見つからなかった。結局、諦めてコンビニで軽いつまみと酒を買い、部屋飲みですました。実は気になった店が一見だけあったのだが、エスニックを食べたいと言う気分ではなかったのでスルーした。いずれ食べに来ることもあるだろうと、店の場所だけはチェックしておいた。
それが、今現在、このときにチャンスが訪れるとは、なんと幸運なのだ。会社の食事会が終わり、さきほど一次会で解散した。ホテルに戻る途中、少々飲み足りなかった私は、たまたまこの店の前を通り過ぎて「ああ、昨日入ろうと思った店だ」と思い出したのだ。今日はもうフリーだ。誰にも会社にも拘束されることもなく、心置きなく一人で飲める。早速、この店に入ってみることにした。
ASIAN MARKET スタンレー
手前のテーブルに案内される。一杯やる前に準備を済まさねばならぬ。まずはトイレに行く。
用を足しながらメニューを確認できるのはなかなか便利だ。アジアンマーケットを名乗るだけあって、各国の代表的な料理が並んでいる。おまけにパクチーも充実している。沖縄のような南国ならともかく、この北の大地でパクチーは決して安くないはずだ。だが、パクチー無くしてエスニックは語れない。
だいたい食べるものは決めた。よし、Ready perfectly! 席に戻るぞ。
ドリンクにハイボールを頼もうとしてやめた。デュワーズと書かれている。苦手なやつだ。よい、ならばここは空知エール、ビールなのだ。
フルーティーで香り豊かなきめ細かいビール。これは二軒目でも飲める。つまみはパパド。インドのスナックだ。豆を潰して焼いたものであるが…ん?豆の味がする。豆の旨味ではない。ただの豆だ。
料理をいただく
食材には、どれしもいい面と悪い面がある。いい面のみを引き出し、悪い面を隠す、切り落とす、剥がす、覆い隠すのが料理だと思っている。素材の旨味を引き出すことと、素材のまんまを味あわせるのは異なる。それなら生のものを食べれば良いだけだ。このパパドは素材の旨味を引き出したものではない。インド料理店で食べたものとは大違いだ。おまけに私にはしょっぱすぎる。ビールのつまみだからいいのかとも思ったが、無理だ。食べるのを諦めた。
そういえば子供の頃、北海道の祖母がたらこに醤油をかけていたので驚いた。確かにこちらのものはうす塩だったりするが、それでも醤油をかけるのは体に良くない。たらこの味が消えるように思ったものだ。
気を取り直して、おつまみパクチー。
食べる。苦い。なんでだ?
ああ、よく見るとパクチーは一部だ。大半は水菜だ。苦味の正体はこいつだ。さっき食べた店で、社長がこの葉っぱが嫌いだと、水菜を箸で避けていた。小学生か?と笑って見ていたが、今ならわかる。あなたは正しかった。
パクチーと水菜は相性が悪い。
見た目が似てるからごまかされそうになったが、食べれば分かる。これはおつまみパクチーではない。おつまみ水菜パクチー入りと名乗るのが妥当である。水菜はつまみにはならぬ。
ここで珍しくスマホに連絡が入った。私は基本的に電話に出ない、夜は連絡も取れない人なので、この時間にリアルタイムに連絡欲しがる人間はそうそういない。画面には、知人の名前が表示されていた。なんだろう。電話に出てみた。
「今どこにいますか、ススキノで飲んでるんですけど、こっちにきませんか?」
渡りに船だ、このまま食べるのはどうかと思っていた。この店の食事は、私にはしょっぱすぎて口に合わない。雰囲気は良かったのに残念だ。全国を出張していると、こんなことも珍しくない。雰囲気やよし、メニューもよし、味の方向性も良いのだが、しょっぱすぎる。ただそれだけで、すべての料理が私の口に合わない。珍しく連絡をくれた知人に感謝だ。
私はそそくさと会計を済ませ、店を後にした。きっとここ訪れる事はもうないだろう。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)