十割そば

札幌市 大通駅 蕎麦群 ミニ親子丼蕎麦セット

大通駅で蕎麦を食べる

宿泊したホテルの真ん前が空港行きのバス停。電車よりも時間はかかるが、乗り換え不要だ。地下鉄で大通駅から南北線でサツエキこと札幌駅まで行って、エアポート号に乗り換えた場合、座れるとも限らない。指定席はすぐに売り切れる。新千歳空港駅でも、地下のホームから保安検査場までは、かなり歩かなければならない。

だが、バスであれば、ホテルの真ん前から乗って、空港で降りた後はエスカレーターで上がるだけで、チェックインカウンターにたどり着ける。先日、札幌駅前に空港行きのバスが停まっていたので、反射的に乗り込んでみたところ、なかなか快適だった。それ以来、時間に余裕があれば、バスに乗るのはやぶさかではない。

本日は15時の便で広島に飛ぶ。正午まで仕事をしてから13時4分のバスに乗る間にランチを済ませなければならないのだ。

さて、何を食べようか。

昨晩は開陽亭で会社の役員交流会であった。海産物中心の食事であった。北海道に来たのだから蕎麦は外せない。だが、この辺りに美味い蕎麦屋などあっただろうか。竃のハンバーグを食べた方がいいのではないか。

ネットで調べると一軒の店を見つけてしまった。その名は蕎麦群(そばむれ)。ホテルからも近い。外は土砂降りの雨だが、地下道で向かえば濡れることもない。だが、その店は札幌ルトロワ、旧丸井今井大通別館のビルにあった。ふと、嫌な予感がしたが、脳内で振り払った。

蕎麦群(そばむれ)

エレベーターで7階に上がる。レストランフロアだ。目的の店に向かう。途中、函館五島軒がすごく気になったのだが、煩悩を追い払い、一心不乱に蕎麦群に向かう。

着いた。幌加内蕎麦イチオシのようだ。これは嬉しい。北海道が誇る蕎麦産地である。

夏蕎麦メニュー。最近、ピリ辛蕎麦をあちらこちらで見かけるが、邪道というか、あまり食指が動かない。一度食べたら癖になるかもしれぬが、個人的にはピリ辛ではなく、麻辣のほうが好きだ。ならば刀削麺を食べればいいのだ。日本蕎麦の香りを殺すような香辛料とは相いれぬ。カレー蕎麦も好きではない。カレーうどんは好物だ。

こちらはちらしと蕎麦セットだ。いかにも北海道らしい。かに、いくら、ねぎとろ、サーモンエビなど、内地ならば天ぷらにするようなネタも、生でグイグイ攻めてくる。だが、蕎麦と鮨を一緒に食べる気にはならぬ。

レギュラーメニューも豊富だ。しかし、いずれも決めの一手に欠ける気がする。とりあえず、店内に入ろう。

メニュー

おひとり様なので、当然のようにカウンター席に案内される。客席はそこそこ埋まっていた。さて、何を食べようか。

この店の蕎麦が100%幌加内産のそば粉を使用した十割そばとのことだ。うーむ、グルテンフリーはどうでもいいのだが、十割そばは当たり外れが多いので、身構えてしまう。そもそも私の好みは二八蕎麦だ。幌加内、十割そば、この二つのキーワードは、本来、美味いそばを保証するはずなのだが、今までにも何度か憂き目にあってきた。うーん、再び不安がよぎる。脳内で払しょくする。

これだ、ミニ丼セットつけ蕎麦!どんぶりは親子丼にしよう。決定、ミニ親子丼蕎麦セットなのだ。

これでもか!と思うほど幌加内そばイチオシだ。気持ちは分かるが、原材料と製法以外にウリは無いのだろうかと、またまた不安になるが、これ以上は考えないようにしよう。

ミニ親子丼蕎麦セット

オーダーしてから15分ほどが経過して、ようやく蕎麦セットが運ばれてきた。現在時刻は12時31分、バスは13時4分。20分以内に店を出たいところである。

なんじゃ、こりゃ?運ばれてきた食事を見て、愕然とした。蕎麦は見た目にダメダメ感が半端ない。透明感が微塵もない。親子丼に至っては…これは、だめだろう。客に出していいのか?それとも、これが当店のスタイルです、と開き直るのだろうか。店主を呼べい!などと海原雄山のようなロックなことはできないが、代弁者がいたら拍手したいところだ。

とりあえず、蕎麦を食べる。麺は太めで、コシがあり、のどごしはまあまあ良いのだが、香りが弱い。これは本当に十割蕎麦なのだろうか。らしからぬ食感と味わいだ。好みを言えば、もう少し香りがあって、細めの蕎麦なら言うことなしである。問題は返しだ。つゆだ。完全に蕎麦に負けている。バランスが悪い。

親子丼は見た目にダメだ。煮立った跡がある。トロトロなのは白身の一部のみ。親子丼とちゃんぽん(注:沖縄のどんぶり飯)の上に頂く卵は、トロトロの半熟でなければならないとである。70度で1分も加熱すればサルモネラ菌は死滅する。その程度では玉子は完全に変性しない。75度では黄身が完全に固まってしまう。つまり、70度〜75度手前の温度で丁寧に加熱すれば、理論上はトロトロになるのだ。

さらに言えば、ごはん側、つまり玉子の下側は少しくらい固まってもいい。上側がとろとろに黄身と白身が絶妙に混じり合い、カオスにも似た模様を描くのが理想だと思うのである。

それが、明らかに強火で火を通し過ぎた見た目では、幻滅するのも当然だ。

薄くスライスされた鶏肉は、出汁をとった後のように感じる。旨味があまりにも薄い。鶏モモ肉の持つはずの力強い味わいが感じられない。卵の甘みはほんのりするものの、玉ねぎの甘さは微塵もない。

蕎麦湯も香りが弱い。なんだこれは。十割蕎麦は名前だけなのか。原材料だけ正しく表記すればいいものではない。機械打ちなのも構わない。日常で手軽に蕎麦を食べるのならば、この店はいいだろう。だが北海道で蕎麦の実力を味わいたい、魅力を感じたいのであれば、相応の店に行くべきであった。私にはミスマッチであった。不覚のいたすところである。

こんなことなら直感に従って、五島軒で食べればよかった。

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