茄子の煮びたし

帯広 うさぎのしっぽ

帯広は今日は雨だった

帯広に来るのは一年ぶりだ。とは言っても、昨年は釧路からの帰りに寄っただけで、買い物中に地震が起きたことを覚えている。もちろん、今回も用事があって来たわけだが、いつもは行事があって来ていたので、人に会うためだけに来るのは初めてだ。

帯広と言えば、豚丼を思い浮かべる人が多いと思うが、私はあまり興味がない。北海道グルメは廃品利用や代替品から始まったものが多い。ジンギスカンしかり、室蘭やきとりしかり、美唄焼鳥しかり。そして、豚丼もうなぎの代わりに豚肉を使ったのが発祥だ。まあ、いずれもうまいからいいのだが、それでも私が帯広と聞いて思い浮かべるのは「カレーのインディアン」なのだ。うまい。安い。ただ、今回は食べに行く時間がないのが残念だ。

待合せは19時だ。雨が降る中を繁華街に向かって歩く。指定された店は、地図によるとどうも細い路地を入ったところにあるようだ。Googleマップに従って歩いて行くと、それらしき路地の入口に着いた。

「なごみ小路」

なんかオシャレだ。路地を入って行く。渋い。

どの店も客で賑わっている。なんかいいなぁ。建物も新しく、道には清潔感があるのだが、目的の店が見つからない。反対側の入口に出てしまう。道を戻る。目を凝らして店を探すの、やはり見つからない。

なぜだ?

もう一度地図を見る。GPSが頼りとは言え、制度はまあまあだから、数メートルの誤差はある。数メートルあれば隣の建物や裏の建物を指すこともある。そう、もしや裏に何かあるのではないかと考えたのだ。

あった。しかし、これは道なのか?表通りに出て、裏通りを探す。

「恵小路」

これか?でも、これは小路と言うより通路だ。本当にこの道なのか?だが、看板には尻尾の大きなウサギの絵がある。

これに違いない。

…本当かな。

シトシトと雨が降る中、不安になりながらも進んでいくと、通路がひらけたところに目的の店はあった。自分好みの店構えだ。

階段を上ると店名が書いてあった。当たりだ。

うさぎのしっぽ

カウンターには待ち合わせをしていた友人たちが、先に呑んでいた。そんなに私は遅れたのかな…ん?なんで焼酎ボトルが開いてるのだ?全員、顔が赤い。できあがっている?

「どうもー!先にやってました!」
「我々、18時から呑んでますー!」

酔っ払い達が私に冷酷な事実を告げる。な、なんだと?私は18時では時間が早すぎやしないかと、わざわざホテルで風呂に入ったり、一眠りして時間をつぶしていたんだぞ。どう言うことだ?

「いやー、お忙しいと思って、敢えて言わなかったんですよー。」

言い訳か。まあいい。私も節度ある大人だ。アラフィフのおっさんがこんなことにいちいち目くじらを立てても仕方がない。気を取り直して店内を見回す。この店の売りはおでんと大皿料理ということだ。まずはナスの煮浸しをいただく。

見た目に綺麗。プロは包丁の使い方が違うなぁ。鰹節すらも美しく見える。これを一口がぶり。

んまい。

上品な出汁がしっかりとナスにしみて、噛むたびにジュワーっと溢れ出してくる。これをビールで流し込む。

幸せだ。

次にレタスの肉巻き。これも上品な出汁が染みていて…以下同文。

おすすめは「つくね」です

酔っ払い達に、この店のお勧めを聞いてみる。

「ここはつくねも美味いんですよ!食べてみてください。」

そう言われたら、食べないわけにはいかない。つくねのタレと柚子胡椒、山わさびを注文する。

本日の酔っ払いは3名。私を入れて4名だ。うち、3名が新婚だ。しかも、全員の嫁さんが一回り以上、歳下であることが判明。なにか同盟でも作ろうかな。

そうそう、まずは山わさびがたっぶりのったつくねから。思ったほどツーンとこない。わさびの風味とつくねの甘みがマッチする。美味い。

北海道民は山わさびが好きだ。蕎麦にも入れるし、ご飯にもかける。寿司屋に行けば、山わさびの細巻きがあるくらいだ。これがまた癖になる。おろし方は鬼おろしを使うのが多いように思う。歯で噛んだ時にわさびの風味がにじみ出るとでもいうのだろうか。

刺身には向かない。

次は柚子胡椒。つくねは雑味がなく、鳥肉の旨みを濃縮したような、そこに柚子の香りと辛みが相まって味に深みが出る。これまた美味い。

最後にノーマルつくね。

美味いんだけど…物足りない。食べる順番を間違えたらしい。

おでんも美味し!

ハイボールが進む進む。話も盛り上がる。ヤバい、このパターンは腹に入れずに飲みに走るパターンだ。だが、炭酸で腹が膨れて、もう食べられない。

「ぜひ、おでんを食べてくださいよ〜」

勧められては食べないわけにいかない。ここは北海道特産の姫タケノコとなんとなく卵をチョイス。

やはり、この店の出汁と味付けは上品だ。店の雰囲気が味にも滲み出ている。いい店だ。

気がつけば2時間がすぎていた。勘定は酔っ払い達がすでに済ませたという。ゴチになってしまった。

今度は最初から参加して、味を堪能したいものだ。帯広の街の新たな魅力を見つけた夜だった。

うさぎのしっぽ(北の屋台HP)

※現在は別の方が店を切り盛りされています

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