冷やし二日酔い蕎麦

東京都西新宿 蕎麦と酒菜 孝林 冷やし二日酔い蕎麦

西新宿の住宅街

新宿はオフィス街というイメージが強いが、実は住宅街でもある。新宿駅付近に住宅はほとんどないが、西に向かって歩いてみればよくわかる。西口から高層ビル群を抜け、新宿中央公園や熊野神社あたりになると、高層ビルとマンションが混在しだす。そこから北に向かうと、ビルやマンシャンの高さが低くなる。少し路地に入れば、一戸建てが多く建つ、静かな住宅街となる。家の背後に高層ビルが並び立つ光景は圧巻だ。

ふと、同じような景色を他所でも見たような気がした。デジャブ?そうだ、幡ヶ谷だ。ここよりさらに西に数キロ行けば、幡ヶ谷、笹塚となる。21歳の頃に知人と興した会社は、笹塚のマンションの一室だった。その後、24歳の時に独立して、父のつてで幡ヶ谷のマンションの一室を借りた。

さらに7年後には笹塚に新築マンションを購入して、上の子供たちが生まれた。そこから幡ヶ谷のオフィスまでは徒歩通勤。道中、細い路地から西新宿のビル群を見上げながら会社に向かった。あの頃はがむしゃらに働いていたから、家に毎日帰れるわけではなかった。

徹夜明けだと、朝方に帰宅するのも珍しくない。早朝に無精髭を生やしたボサボサの頭で、帰宅途中に商店街にある酒屋の前の自販機に立ち寄り、登校中の女子高生の前でビールを買う。ホームレスを見るかのような、あの冷ややかな目で見られるのが快感だった(笑)

当然、出勤時間もまちまちだったから、ビルの光景も様々だった。夕暮れに窓の灯りが綺麗な時もあった。快晴の空にビルが映えている日もあった。いちばん手前に見えたのがオペラシティ。その後ろにドコモのビル。あとはぐちゃぐちゃっとひとかたまりに見えた。

おそばと酒菜 孝林

先々月、とんかつ伊勢に連れて行ってくれた中本氏の会社は、そんな西新宿の雑居ビルの3フロアを借りている。会社での打合せが終わったのは13時前。まさにランチの時間だ。今日は中本氏が蕎麦店に連れて行ってくれるという。

会社の近くにある蕎麦屋は2つ。安くてボリュームはあるが、常に蕎麦は伸びていて、真っ黒な油で揚げた天ぷらは、まるで焦がしたかのような色をしている店と、高くてボリュームもそれほどないが、丁寧な仕事で美味い蕎麦を食わす店とのことだ。

私は蕎麦にボリュームは求めない。美味い蕎麦を食べたいのだ。

熊野神社近くの大通りから裏に入ると住宅地だ。この辺りは通り沿いこそ高層ビルが並んでいるが、裏に入ると一軒家の多い閑静な場所になる。路地をいくつか曲がって着いた先に目的の蕎麦店があった。

メニュー

13時過ぎと言うこともあって、店内はさほど混んでいない。テーブル席に案内されると、メニューを見た。蕎麦は冷たいのに限る。暖かい蕎麦は立ち食いでしか食べないのだ。どれにしようか。

冷やし二日酔いそば。なんだこれ?

気になる。前日は自宅にいたので二日酔いではないが、さっぽりしてるに違いない。こってりした二日酔い蕎麦なんて嫌がらせでしかないだろう。ただ、腹が減っている。これだけでは物足りない。ミニ天丼付きだ。さあ、みせてもらおうか、冷やし二日酔い蕎麦とやらを。

冷やし二日酔い蕎麦

はたしてそれは、ぶっかけ蕎麦であった。大根おろし、梅干し、大葉に海苔とネギ。大根に含まれるジアスターゼが胃の調子を整え、梅干しに含まれるクエン酸が飲み疲れた体の疲労回復に効き、大葉は胃の粘膜を修復する。

蕎麦は見た目は悪くない。食べてみると喉越し良く、ツユとのバランスもいい。まあまあ美味い。私好みの蕎麦だ。子供の頃から私が食べていた蕎麦だ。東京はこのような感じの蕎麦が多い。

天丼はミニだけあってちょっと物足りないか。他店でもミニ天丼は珍しくないが、これはちょっと。味はこちらもまあまあだ。正直、大勢で話しながら食べてたので、ゆっくりと味わって食べるわけにもいかず、雑な感想になってしまった。だが、嫌いな味ではない。やはり、味わうにはひとりか、食事こだわる人と少人数で食べるのがいい。

また来る機会もあるだろうから、その時は冷やしたぬき蕎麦、ぶっかけで豪快に食べたいものだ。

蕎麦と酒菜 孝林(食べログ)

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