二度目のビストロ椿
まるでデジャヴである。漢字で書くと既視感だ。「がいしかん」ではない、「きしかん」と読む。同じ施設の同じ会議室で、同じような会議をした。私と同席するはずのもう一名はドタキャンだ。前回もドタキャンだった。季節も変わらない。何もかも、一年前と同じだ。そして、会議後に連れていかれた店もまた同じであった。二度目の訪問となるビストロ椿だ。
ここでも前回と同じ個室に通されて、料理がスタートした。
サクラマス、さよりと八角のカルパッチョ。 南蛮エビとホタテも添えてある。新潟では甘エビとは呼ばず、赤唐辛子に似ていることから「南蛮エビ」と呼ぶそうだ。いや、待てよ。そもそも唐辛子のことを「南蛮」と呼ぶものだろうか。九州では柚子と青唐辛子を混ぜた調味料を「柚子こしょう」と呼ぶ。
ん?
私にとって、こしょうは胡椒、ペッパーである。南蛮は長ネギをぶつ切りにしてから縦に割り、さらに縦に切った食材を指す。これを入れた料理を「~なんばん」と呼ぶのだと、若い頃バイトしていた叔父の蕎麦屋で教わった。鶏なんばんやカレーなんばんが該当する。社会に出てから知ったことは「なんばん」の由来には諸説あるので、どれが正しいとは言えないようだ。
これもまた北海道では「ねぎなんばん」なるものがあるのでややこしい。刻んだねぎと唐辛子を醤油に付け込んだものだ。北海道にはもともと三升漬が存在する。しょうゆととうがらしとしょうゆを一升ずつ混ぜて漬けたものだ。そういえば、これも「青なんばん」と呼んでいる。つまり、ねぎ南蛮とは三升漬の青なんばんを赤にしてにネギを混ぜたものに他ならない。
コース開始
二品目は焼きはまぐり。実は新潟ではハマグリが良く獲れるらしい。しかも旬だ。上品な出汁が美味い。あさりはシジミもいいのだが、やはり高貴さと言うか、パンチの無いふんわりとしながらも上品な香り立つ、グイグイとこない味わいが好きなのだ。こいつとへちまを炒めた中華料理は絶品である。
穴子のグリル。ソースとの相性も抜群。和の素材が新しい形で料理となるのがすごい。さすがに新潟で穴子は獲れないと思うのだが、どうだろうか。調べてみると日本各地の沿岸で獲れるとのことなので、新潟産かも知れない。基本的にこの店は地元産の食材しか使わないはずである。
メインディッシュ
ほうぼうのアクアパッツァ。新潟ではなじみの深い魚のようだ。こいつは刺身にしても美味い。私も好きな食材である。一緒に煮たムール貝やアサリの出汁と野菜の旨味を魚に吸わせることで、淡白な白身魚をリッチな味わいに変化させる。魚介のエキスをたっぷりと含んだスープに浸る野菜は、見た目にも色とりどり、まさに乳白色の温泉に浸かっているかのようだ。
メインの肉料理は和牛ステーキ。村上牛、冷めても美味い牛肉だ。ミディアムレアの絶妙な焼き加減。最もおいしく味わえる調理をしてサーブする。ステーキの焼き加減を問うのは洋式だろう。和牛はグリルも調理人に任せるのが正解だと思う。
締めは牡蠣を豪快に使ったペペロンチーノ。牡蠣のエキスをたっぷりと吸ったシンプルな味付けのパスタである。美味い。量的にもかなり腹いっぱいだ。
ごちそうさまでした。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)