サバの粒マスタード仕立て

沖縄県那覇市 maruCafe 絶品テビチ煮つけ

maruCafe

那覇市環状2号線、仲井間交差点から首里に向かう途中に、以前から気になる一軒の飲食店があった。車がよく停まっているので繁盛しているようだ。今日は平日。私も妻も仕事が休み。天気も良い。こんな日はふたりでランチを食べに行こうと、自宅から車を出したのだった。

店に着いたのはちょうどランチタイム、正午過ぎであったが。車を停めることができた。店頭にはテビチカフェののぼりがはためいている。本当に今日は天気が良い。青空と白い雲のコントラストがとてもまぶしいのだ。

店頭にメニューが掲示されていた。おしゃれだ。カフェだ。テビチとカフェ、豚足とカフェ、豚のつまさきとカフェ、どう考えても、このマッチしない2つの単語を、どのように折り合っているのか、とても興味がある。

カフェの食事と言えば、真っ先に思い浮かぶのがオムレツかオムライスである。そしてハンバーグだ。実際に人気ナンバーワンはハンバーグだとアピールされている。もちろん沖縄なのでステーキも欠かさない。やはりここは肉だろうか。だが意外なことに、私も妻も鯖のメニューが気になっていた。どうやってマスタードと組み合わせるのだろうか。

この店の基本スタイルは料理+サイドメニューだと書いてある。それはテビチ+サラダなのであろう。手作りのアップルパイも気になる。妻と協議の上、鯖の粒マスタードパン粉焼き及びサイドメニューを注文し、メインの料理をふたりでシェアすることにした。そしてデザートのアップルパイをやはり二人で分け合って食べることに決定した。

メニューが決まれば、後は突入するのみである。私は扉を開けて店に入る、妻も私に着いた。

店内

店に入ると、右手にはサイドメニューのバイキングコーナーがあった。正面にはカウンター、左手にはテーブル席。店内は混んでいる。カウンター席ならすぐに案内できると言われ、私と妻はカウンター席の隅に陣取ることにした。

客の大半は家族連れや、近所の奥さんらしい若い女性たちだ。今ならば我が家も子連れで訪れて問題ないだろう。お座敷席もあるから小さい子供がいる家族にはとても助かる。客が次から次へと入ってくる。予約席もあるので、ランチから予約が可能なようだ。

店内に流れる音楽は軽快な女性ボーカル、古い映画のサントラや懐かしい洋楽のカバーだ。今は”Close to you”がかかっている。カーペンターズの名曲だ。先ほどは「君の瞳に恋してる」であった。いずれも懐かしいナンバーだ。

カウンターでメニューを再度確認する。二人の決意は変わらなかった。

トイレは普通の洋式便座。温水洗浄便座でないのが残念だ。

サイドメニュー

スープは二人ともミネストローネをチョイス。普通にうまい。変に後味が残らない。滋養深い味わいが胃に優しい。酸味も控えめで、子供でも飲めるような味付けである。たっぷりの細かく刻まれた野菜とペーコンも柔らかい。お年寄りにも小さな子供にも気を使った気配りが嬉しい。

サラダは野菜の種類が豊富だ。特にこの豆腐がすごい。押し豆腐やチーズのような味わいだ。燻製にした島豆腐にも似ている。中国でよく売っている、硬くなった豆腐チーズ、いわゆる臭豆腐とも異なる。味わいは普通の豆腐、いや豆腐をかなり濃厚にしたものである。これはどこで売ってるのだろうか。ぜひ自宅でも食したいものだ。

そして、この店自慢のサイドメニューは「テビチの煮つけ」である。豚足である。沖縄県民が愛してやまない食材である。もちろん、私たちも大好物だ。

テビチの煮つけ

テビチの鍋の底には骨がたっぷりと沈んでいる。ここにお玉を突っ込み、鍋底に沈んだ重い骨を、手ごたえを感じながら表層に引きずり出す。このときに液体との摩擦で、とろとろになった骨周りの肉が引きはがされ、汁の中をたゆたう。骨から肉がこそげ落ちる。力ずくで剥がれされたテビチの肉と皮が鍋の中を舞うのである。茶色い液体の上層部に浮かび上がる。これをすかさずお玉で救い上げ、皿に盛り付けるのだ。

まずは皮だけを食べる。まったり、こってりでだがしつこくない。脂がきっちりと取り除かれている。とろとろの食感、口の中で融解しながら、甘辛い味わいを放出しながら消失していく。臭みは微塵もない。

これだけ味も濃くたっぷりの脂のテビチを活用すれば、野菜サラダにドレッシングは不要だ。スライスキャベツの上にのせてしまえばいい。我が家得意の生姜焼きサラダと同じだ。改めてサラダを取りに行くと、ちょうど新しいキャベツのボールが運ばれてきた。トッピングされたカイワレの緑が美しい。自然だ。みずみずしい。皿のキャベツを盛り、鍋底から剥がしたテビチを容赦なく載せる。もちろんカラシも忘れない。せっかくなので豆腐も添えてみた。

シミュレーション通り、キャベツがテビチをしっかりと受け止め、こってりまったりを和らげる。美味である。

鯖の粒マスタードパン粉焼き

こちらはサイドメニューのサラダとは趣向が異なる、見た目がカラフルな野菜の付け合わせに女子力を感じる。私には発送できない盛り付けだ。ワンプレートと言う小宇宙に必要な要素を重ね合わせ、融合を試みる。本来、別々に配置されるはずだった素材が有機的に配置され、カオスともアートとも受け取れるビジュアルを実現している。ベージュと白で構成されるモノトーンのサバのパン粉焼きが、サラダたちによってフルカラーの色彩に昇格される。まさに脳の錯覚を逆手に取った、計算しつくされた盛り付けなのである。

上品な粒マスタードの香りとサバの匂いが融合し、独特の味わいをパン粉がサポートする。欧米だ。カフェメシとはこのようなものか。味付けが薄いのにご飯が欲しくなる。

アップルパイとティラミス

アップルパイはほのかに温かい。中のリンゴは食感はいいが、味は妻が作ったコンポートの方が上だ。

ティラミスはコーヒーが自己主張しすぎだ。苦い、バランスが悪い。コーヒー好きにはいいかもしれないが、私はコーヒーを飲まぬ。

テビチは持ち帰りや全国発送も出来るように真空パックでも販売されていた。これだけテビチ推しにもかかわらず、サイドメニューのみで目立たない。ランチのメインはテビチではない。もう少々マーケティング的に戦略の修正が必要ではなかろうか。。

テビチとカフェ。それぞれの味わいはいいのだが、やはり両立していない。テビチが似合うのは飯だ。ご飯だ。米だ。もしくは沖縄そばだ。沖縄女子ならテビチ好きは多数派であろうから、もう少しメニューの組み立てを考えた方がいいと思うのは、余計なお世話だろう

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