亀かめそば 沖縄そば

沖縄県那覇市若狭 亀かめそば 沖縄そば

かめーかめー攻撃

沖縄には食事に「亀」が欠かせない。食材を意味するわけではない。俗に「おばあのかめーかめー攻撃」などと揶揄されるが、かめーは「噛め」、つまり「食べなさい」を意味する。田舎で祖母が朝から大量の食事を用意して、閉口した経験がある人は少なくないだろう。

おばあは出した料理が「すべて食べられたら負け」と思っている。足りなかったと感じる。おもてなしが不十分だったと反省する。タイ王国の作法ではないが、残すのが礼儀であり、身を守る処世術なのだ。幼い頃から「出されたものはすべて平らげろ」と厳しく教育された私は、田舎のおばあ攻撃などつゆ知らず、二十歳そこそこだった頃に泊まった知人宅で、用意された朝食をすべて食べてしまった。かなりきつかった。昼めしを抜いたくらいだ。

「おまえ、なんてことするんだよ!」

朝食後に知人から叱責を受けた。

「全部食べちゃったら、朝飯がエスカレートして大変なんだよ!」

そして彼は付け加えた。

「それと、絶対にばあちゃんの前で『うまい!』とか『美味しい!』なんて言うなよ!しばらくそればっかり大量に食わされる羽目になるんだからな!」

これが私とかめーかめー攻撃との邂逅であった。

亀かめそば

駐車場が少し離れた場所にある。歩いて1分ほどの住宅外の中に、非常に不思議な止め方をするはいつくばっている。空いていたので良かったのだが、混んでいる場合は注射で相当苦労するだろう。

駐車場案内

車から降りて店に向かう。途中食べ終えた二人組の男性客とすれ違った。

「スープが素晴らしい。」
「やっぱりうまいね、そばもおいしいよ。」

口々に沖縄そばの賛辞を並べていた。

店舗外観

これは期待できそうだ。入口にかけられた真紅の暖簾、力強い明朝体で描かれた店名の黒字。アンダーラインは沖縄の伝統、ミンサー柄。琉球国時代、女性がミンサーと呼ばれる織物を作って想い人に渡したものだそうだ。5つの四角と4つの四角が交互に織りなす模様は「いつの世も(五の四も)」と音(おん)をかけたものだ。これに「あなたをお慕いしています。」「あなたを想っています。」と続く。いわゆる手編みのセーターと同じ、重く深い人の情念が込められた、恐ろしい造物に使われていたのである。

店舗入口

「いつの世も」
「噛め噛め」

この2つのキーワードが意味するのは「いつまでもそばを食べなさい」という、沖縄そばに込められたおばあたちの執念であろう。

メニュー

扉を開けて店内に入ると券売機が待ち構えている。外国人対応の英語表記もばっちりなのだ。

券売機

フーチバーそばも沖縄そばも同じ価格である。英語では”Mugwort”と訳されているが、標準語には訳されていないフーチバー(よもぎ)は決して安くない。それが同価格。その謎はすぐに解けた。

フーチバーはセルフで食べ放題だったからだ。しっかりと容器に入れる。私も妻も大好きなのだ。独特の香り、そして苦味、大人の味。内地ではあまり食されることがないが、沖縄では身近な食材だ。まさに琉球ハーブである。表記も「よもぎ」と訳されている。

フーチバーコーナー

ランチタイムを過ぎたからか、店内はガラガラであった。

店内

壁には大量の色紙。岡村隆史、香川真司、キャンキャン、右から左へ受け流す…など、ざっくり分けると、お笑い系、スポーツ系、地元ローカル系の三種類の有名人に大別されるが、異色なのが、なぜか中央に掲示されたMr.KINJOの社長である。ただの一般人である。コミカルなCMと安価な宿泊料金で沖縄観光界を席巻し、アパホテルの女社長をリスペクトした雇われの女性社長がCMに出演しているが、いろいろと黒いうわさも絶えない会社である。とてもブログに書けないようなことも…以下自粛。

壁のサイン色紙

沖縄そば

すぐにどんぶりが運ばれてきた。さすがオキナワンファストフード。コシのある細麺、スープは豚骨とカツオのバランスが良く、どちらも自己主張がない。完全に融合し合った味わいはまさにマリアージュ。

沖縄そば

三枚肉は肉本来の味わいと、しっかりと肉に染み込んだ甘めの味付けとのバランスが見事である。柔らかい肉の感触とともに、沖縄そばの魅力を引き出すことにひと役買っている。

三枚肉と軟骨ソーキ

対して軟骨ソーキは、軟骨がとても硬い。コリコリ、いやボリボリだろうか。いやいや、ゴリゴリだ。かなり硬い。味付けは三枚肉ほどでは無い。軟骨部分が硬すぎて妻は残してしまった。

フーチバーのせ沖縄そば

スープを支えているのは、しっかりとした塩味だ。これに負けないように出汁がとられている。この2つのバランスが、素晴らしいスープの味わいを組み立てているのだが、私にはしょっぱい、飲み干すのは困難だ。いや、一口飲むだけでもかなり塩気が口の中に広がる。水が飲みたくなる。

玉屋の沖縄そばにも似た、古き良き、良い意味でのオーソドックスな沖縄そば。生麺ほどではないが、ぐちゃぐちゃでぶよぶよのたるんだ麺ではない。しっかりとスープとからみ、口の中にスープと麺のハーモニーがじわりと広がっていく。

麺

これだけのうまさで、しっかりとしたクオリティーとパフォーマンスで、一食550円。三枚肉そばも軟骨ソーキも550円。

素晴らしいコスパだ。

行きがけにすれ違った人たちが感心していたのは当然といえよう。納得だ。

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