沖縄県那覇市松山 サウザンドステーキ

締めのステーキ

沖縄では、飲んだ締めにステーキを食べると言われるが、正解ではない。間違ってもいない。深夜に腹が減ったとき、食べられる食事の選択肢が多いだけだ。たしかに朝4時まで空いているステーキ専門店がある。土日は二十四時間営業のステーキ店もある。

勘違いされると困るのは、ステーキはステーキ専門店以外でも食べることができるのだ。那覇市内で二十四時間営業している代表的な食堂といえば、三笠、ミカド、一銀食堂だ。これらの店でもステーキを食べることができるはずである。もっとも、三笠とミカドには何年も行ったことがないのだが。

沖縄の定番の締めのひとつ。那覇市松山の「すばや」ヨモギそば

一時期は沖縄でも締めラーメンが流行った。締めの沖縄そばも相変わらず根強く人気がある。その他に締めで食べるものといえば、カツカレー、タコライス、ちゃんぽんにすき焼き。全部ご飯ものだ。

あとは寿司だろうか。深夜までやっている、正統派の鮨店もある。深夜から営業を始める、安くて美味い寿司店というのもあるが、十年以上前に行ったところ、ボラれるは美味くないわで怒って帰ったことがある。それから二度と行ってない。

かのように、沖縄では締めのレパートリーは決して少なくないが、県外に比べて、深夜にステーキを気軽に食べられることは間違いない。これが沖縄で締めにステーキを食べる理由の一つだろう。近年の糖質制限ブームもあって、肉なら太らないからと、中年男性ほど締めにステーキを食べたがるが、罠があることを分かっていないのだ。

仙台からの来訪者

仙台から江西氏が遊びに来た。滞在時間22時間の一泊弾丸ツアーだ。なんでも全日空のマイルを貯めるのが目的で沖縄に来たので、飲んで帰るだけだという。彼とは三年前、一緒に日本全国を回った仲だ。そして糖質制限により10キロの減量に成功していた。私にはできない技だ。

那覇市内の繁華街、松山のど真ん中に位置するホテルで待ち合わせると、歩いて知人の店に向かった。江西氏は何度も来沖しているので、今さらコテコテの沖縄料理でもないかと、そうは言っても多少は沖縄の料理も食べられる、カジュアルな店を選んだのだ。ちなみに、そのホテルの隣にあるファミマでは刺身が売られている。

県外からの来客を連れて行く店選びのポイントはいくつかある。初来沖の人ならば、うりずんやパヤオと言ったコテコテの沖縄料理店がいいだろう。何度か来ている人ならば地元の居酒屋がいいだろう。普通のものも沖縄料理も食べることができる。沖縄に何日か滞在している人ならば、沖縄料理にも飽きがきているので、煙人や肥後勝、金五郎にきしみーるといった、普段使いの店に連れて行く。

絶対にしてはいけないこと、それは客の地元の店に連れて行くことだ。以前、北海道から来沖した方の懇親会場が北海道料理の店だった。当たり前のように、その方は沖縄料理を食べてみたいと言ったが、置いてあるはずもない。なぜこの店にしたのか幹事に尋ねたら、私が北海道料理を食べたかったからと、しれっと答えた。理解不能だ。こういう自己中の人とは付き合いたくない。トラブルメーカだからだ。事実、この人にはその後も何度か問題を起こされたので、今ではだいぶ距離を置いて、同じ空気を吸わないようにしている。

一軒目を後にすると、二人で馴染みのキャバクラとスナックをハシゴした。大いに楽しんだ最後、江西氏は当然のようにステーキを食べようという。

沖縄で代表的な締めのステーキはジャッキーステーキハウスか、ステーキハウス88である。ちなみに私は88派だ。碧があるではないかという人もいるだろう。あの店の肉は和牛で、メニューもコースメインだから、締めに食べることはできない。「やっぱりステーキ」(いきなりステーキの間違いではない)は、深夜は営業していない。しかし今では第三の選択肢がある。それが「サウザンドステーキ」なのだ。

サウザンドステーキ

店名の由来は店を見れば一目瞭然だ。ステーキ200グラムにスープ、サラダ、ライスが付いて千円なのだ。二人とも200グラムの食券を買い、注文する。ステーキ以外でもチキンステーキやタコライス、ネギしゃぶ鍋定食など、若干のメニューがある。ドリンクはビールかハイボール、赤ワインなどだ。ステーキは400グラムも選べるが、分厚い肉ではなく、200グラムが二枚載っているだけだ。

まずはサラダとスープ。酒で酷使した胃にポタージュが優しく染み渡る罠である。ポタージュにはルーとして大量の小麦粉が使われているのだ。糖質制限の大敵なのだが、酔って飲み疲れて腹が減った状態でポタージュの誘惑に抗うのは、相当な覚悟が必要なのだ。

そしてステーキにライス。沖縄では熱々の鉄板で出されるのが一般的だ。肉の焼き加減だが、強くオススメするのはレアだ。生肉は嫌だという人でも、レアを頼んで欲しい。なぜならば、ステーキは熱い鉄板に載ったまま出てくる。最初のうちは鉄板が熱いので、ナイフで切り分けた肉の赤い部分を鉄板に押し付け、焼いて食べるのだ。こうすれば肉が固くならない。

食べてるうちにも、熱い鉄板のために肉にはどんどん火が入る。レアで頼んだステーキも食べ終わる頃にはほぼほぼウェルダンに近い状態になってしまうのだ。これが最初からウェルダンやミディアムを頼もうものなら、しまいには固くて不味い肉が残るだけになるのだ。

味付けは醤油ベースのステーキソースかけA1ソースだ。いずれでもニンニクをたっぷりつけるのがオススメである。そしてライス。食べてはいけないとわかりつつ、これらのソースと肉とライスが奏でるコンチェルトに酔いしれずに済ませることは、ポタージュ以上に困難だ。ご飯を残す人は少なくないが、箸をつけない人はほとんどいない気がする。

こうして腹が満たされたら、この日は解散だ。締めのステーキ、確かに美味いのだが、翌朝、激しい胸焼けに襲われるのが欠点だ。しかし松山で飲むと、無性にステーキが食べたくなる衝動を止められないのだ。

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