きしめん 住よし 新幹線ホーム
昨晩は飲みすぎたので、なんだか調子がイマイチだ。こうなることは予測できたので、ホテルは素泊まりである。
正解だ。
こんな予測が当たるのは嫌なのだが、仕方がない。これから東京に移動しての会議だ。名古屋のモーニングといえば、私にはきついものばかりの印象がある。小倉トーストやら具沢山サンドイッチとか、今は見たくもない。
そもそも私は和食派だ。パンが大好きな妻は、私がいない出張中に食べている。帰宅して冷蔵庫を開けると食パンが入っている。別にパンを敵視しているわけでもないし、たまには私もパンを食べる。イマイパンは大ファンだ。
昼までに東京に着かなければならない。ベッドから出て、もそもそと支度を始める。ルーチンワークで準備を終えると、最後のチェック。ほら、洗面所にシャンプーを忘れていた。ホテルをチェックアウトしてメーエキこと名古屋駅に向かう。新幹線のぞみのチケットを買うと、ホームへと向かった。
そうだ、名古屋駅の新幹線ホームといえば、きしめんの住よしがある。食べないわけには行かない。店は5号車のあたりにある。一分とかからずにたどり着いた。
さて、何を食べようか。
天ぷらか味噌か、それが問題だ。いつも食べているのは、味噌玉子入りきしめん。名古屋コーチンとも思ったが、高い。カレーはルーがかけてあるタイプなので、重い。天ぷらか味噌か、それが問題だ。
問題だ。
味噌だ。
ボタンを押し、スマホで決済すると店内に入った。客は誰もいない。カウンターの奥の席を陣取る。
目の前に冷凍されたきしめんがうず高く積まれていた。こいつが美味さの秘訣だな。
みそ(玉子入り)きしめん
きしめんはすぐに出てきた。カウンターから下ろして眼前に置く。エプロンも出してもらえた。味噌が服に跳ねると、なかなか取れないのだ。
ん?
玉子が見当たらない。いつもは目立つ黄色いアイツはどこに行った?まさかこのベテランのかあさまたちがミスったか?いや、焦りは禁物だ。そっとネギを避けてみる。ほら、いるではないか。まるで岸辺の草の根に潜む釣り針を警戒する魚のようだ。しかしもう見つけてしまった。あとは餌食にするのみだ。ふはははははは。
さっそく食べるとしよう。うん、野菜の甘み、味噌のコクがたまらない。きしめんはツルッツル。旨味をタップリと吸い込んだ刻みあげ。やはり味噌きしめんは玉子入りなのである。それにエプロンをつけているから口も拭ける。
名古屋飯の謎
先ほどまで誰もいなかっ店内に続々と客が入ってくる。食券をカウンターに置くと、店員がオーダーを読み上げる。
「牛肉にトッピングイカ!」
え?まあ、牛肉うどんに天ぷらは、あまり聞かないが、おかしくも無いか。食券を置いたのは中年女性だ。朝からガッツリ食べるなあ。
「カレーにトッピングエビ!」
はあ?カレーにエビ天?!ここのカレーはご飯にかけるカレールーと同じものである。カレーを麺つゆで割って、片栗粉でとろみをつけたものでは無い。この辺りのカレーうどんは麺にカレールーをかけたものが主流らしい。以前、愛知県刈谷市で食べた時もそうだった気がする。
それでもねえ、カレーに天ぷらって組み合わせ、どうよ?
店員は何の疑問も持たずにオーダー通りに注文をこなす。カウンターに完成品が置かれた。スーツを着た若い男性は、ゆっくりとどんぶりを手に取り、眼前に置いた。そして一味の入った缶を手に取ると、躊躇なくどんぶりの上で激しくシェイクし始めた。
ええ?!
そんなに一味をかけてしまうのか?
横目で驚く私をよそに、彼は一味缶を元に戻した。どんぶりのカレールーの上は一味パウダーで朱に染まっている。天ぷらには一切かかっていない。激辛と化したカレーをきしめんと混ぜながら食べている。
激辛カレーとエビ天。斬新な組み合わせだが、名古屋では当たり前なのか。
またもや名古屋めしの謎が増えてしまった。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)