ラルゴ 再び
宮崎の夜を仲間と楽しんだ。三軒ほどハシゴして皆と別れたのち、再びバー ラルゴを訪ねる。一人でクールダウンしながら、美味いハイボールが飲みたい。腹が減ったので、かちゅ麺をどうしても食べたくなったのだ。
ドアを開け、カウンター席に座る。同じカウンター席で、昨晩の女性客二人がカジュアルな格好で飲んでいた。そこで衝撃の事実を告げられる。
「この店って11時で閉店なんですよね。」
え?もう1時回っていますが。マスターが言った。
「飲んでいる方がいるうちは閉めませんよ。」
早速、かちゅ麺もオーダーする。
「美味しいですよね。もう、何度も食べてますけど美味しくて…」
一人の女性客が呟いた。そこまで言わしめるとは、どんだけ美味いのか。期待が高まると言うものだ。
数分後、マスターがカウンターの中からどんぶりを差し出した。これか。
さっそくいただく。まずはスープ。カツオ出汁の効いた、少し甘めの深い味わいのスープ。和食のテイストか。なかなかいい。ああ、飲みすぎた胃にしみていく。癒される。
「お好みで七味をどうぞ。」
すでにスープにはピリリと効いた辛みがあるが、物足りなければ増量しろということらしい。
いや、このバランスで私は十分だ。
刺激を求めて食べているわけではない。うん、スープが美味い。続いては麺。細めのものすごく滑らかな、それでいてコシのある独特の麺だ。手延べうどんにも近いが、いや、これは冷麺だろうか。
「どちらかと言うと冷麺に近いです。」
凝り性のマスターが打つオリジナルの麺なのか、それとも海外から取り寄せている日本では知られざる麺なのか。
「札幌ラーメンのような、なめらかな麺が好きなんですよ。」
ああ、西山製麺のような透明感あふれるつるつるのちぢれ麺を指しているのだろう。わかる気がする。もしや、これって辛麺につかうやつなのだろうか。この地で食べたことがないので分からぬ。
「こちらではモツのことをカチュと呼ぶんです。」
マスターが解説する。揚げたモツがまるで大阪のかすうどんのようだ。あれは背脂を揚げたものだが、感覚的に似ている。しかしモツ上げの方がコクも存在感も段違いだ。これにとろろ昆布が追い打ちをかける。甘み、辛み、酸味が一体化して豊かな風味を奏でるのだ。箸が止まらない。一心不乱に食べつくすのみである。スープまで飲み干して完食した。
満足だ!
お腹も心もいっぱいになった私を、この場が捉えて離さない。帰るつもりが、美味いハイボールに杯を重ねてしまう。なにか隠し味を入れているのだが、それが何なのか分からない。女性客とマスターと四人での会話が弾む。楽しい。やばい。ここは異空間だ。このままでは絡め取られて朝になる。すでに三時を回っているではないか。
帰りたくない、もっとこの時間を楽しみたい。
後ろ髪を惹かれながら店を後にした。おそらく、明日の夜も最後に飲みに来るだろう。明後日の夜には沖縄だ。
追記
翌日の深夜も一人で訪れた。ハイボール一杯で帰ったつもりが、水餃子を食べたらしい。まったく覚えていない。次に来る機会があれば、ランチのカレーと水餃子リベンジといきたいものである。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)