群馬県 前橋中央駅 肉とワインのイタリアン酒場 more(モア)
群馬県前橋市、訪れるのは2年ぶりだろうか。あのときは最悪だった。社長と一緒に訪れたのだが、酒の席で客の一人が人がいい社長の性格に付け込んで絡みだし、イッキを延々と強要し、二次会のスナックでは社長がほぼ意識を失いかけていた。私が二人を引き裂くように、雨が降る中、社長をタクシーに押し込んでホテルの戻らせようとすると、その客は大声で罵倒し始めた。
なんて奴だ。
その客のことを私は7年前から知っている。酒を飲まないときはおとなしくて物静かな人なのだが、酒乱とは思わなかった。周囲の話によれば、酒だけは異常に強いらしい。どんなに酩酊したように見えても、一切記憶を記憶を失わない。だが、酒の席では気が大きくなるのか、とんでもないことを周囲に強要する、いわゆるアルハラが極端な人物だったのだ。
おかげで私は二次会の店にお気に入りの傘を忘れてしまった。もう手元に戻ってくることはないだろう。
本日は忘年会だ。全国から気の置けない仲間が前橋に集まる。指定された会場は前橋中央駅近くのmoreという店だ。
店内は割と広い。貸切ではないが、時間が早かったのか客はほとんどいなかった。イタリアン風のカジュアルな内装である。
メニュー
いわゆる「肉バル」というやつだろうか。メニューも若者向けにおしゃれだ。イチオシがシラスのブルスケッタ。海なし県がどの口で言うのか、などとはツッコまないでおこう。
店内の壁にも様々なメニューが掲示されている。群馬と言えば「もち豚」が有名だが、ブランド豚は10種類以上あるようだ。「もち豚」も「群馬麦豚」も統一銘柄である「上州麦豚」の一種である。
赤城牛に「はもんみなかみ」。おそらく水上で生産されるハモンセラーノの群馬版であろうか。水上と言えば、清水トンネルの入口。三国山脈の向こうは新潟県、越後湯沢。川端康成の「雪国」の冒頭に出てくるのは清水トンネルだ。さらに新清水トンネルに、上越新幹線の大清水トンネルと3本も掘られている。工事中に湧き出た水はJR東日本が「大清水」として販売している。ああ、もう12年も前に「From AQUA」に名称が変更されたのか。
ハモンセラーノはスペイン産の生ハムだ。日本で有名なのはプロシュートであるが、こちらはイタリア産である。
コース料理
全員がそろった。まずは乾杯である。食事も運ばれてきた。本日は呑み放題のコース料理となっていた。
シンプル野菜のサラダ
レタスメインのシャキシャキ野菜に、コクのあるシーザードレッシングの組み合わせ。ドレッシングに浸食されている表面部分を避け、トンネルをほじくるかのように野菜を摘出し、皿に取り分ける。
うーん、だいぶ味が濃い。
ドレッシングがわずかに付着しただけでも、しっかりとした味わいを感じることができる。かなりの塩気を検出する。こんなものがたっぷりとかかっていたら、塩っぱくて食べられたものではない。
牛ハツのカルパッチョ
バルサミコ酢とエシャレットのソースである。私が食べる前に無くなっていた。無念。当店の名物料理らしい。食べたかった。
ブリュケスッタ
シラスのブリュケスッタ。こいつが名物なのであるな。初めて食べる。「ブリュケスッタ」とは、パンに食材を載せた前菜を意味する。オリーブオイルをなじませたシラスは、とても香りが良い。パンにのせて初めてブリュケスッタと名乗れるようであるが、そのままつまみとしても悪くない。
少々塩の効きすぎたレバーペーストも美味である。香りがとてもよく、食が進む。バケットとの相性がいい。
レーズン入りクリームチーズはほんのり甘めで大人の味。バケットやクラッカーにのせて食べてもうまいのだが、そのまま食べてもなかなかいける。甘さが控えめなので酒のつまみにもなる。
洋風餃子
皮が厚めのモチモチ。中国の水餃子と言うよりは、ネパールのモモに似ているように思う。食べてみれば、コンソメスープのような、中華スープのような、不思議なオリエンタルの味わいだ。これが洋風と言うことだろうか。
牛肉の煮込み
柔らかい。繊維の粗い肉をしっかりと時間をかけて調理したのだろう。味も薄めだ。ナイフで切り分けはしたが、箸でたやすく切れるので、好みのサイズにちぎって食べる。やはりワインが飲みたくなる。
この店の飲み放題メニューは赤ワイン、白ワインともに五種類ほどを選べるのが嬉しい。カベルネソービニョンのミドルボディーのワインをお願いした。
赤城牛のランプとザブトンのステーキ
ランプをワサビのみでいただく。焼いてる時に塩を振っているのだろう、少々の塩気に脂の甘み、肉の旨味、わさびの刺激がバランスよく構成された味わいが口の中に広がる。ピンクの肉に黄緑のわさびはとてもよく映える。視覚的にも素晴らしい。
対してザブトンは、さっぱりしすぎて、減塩主義の私が塩気無しで食べるには向かない部位である。タレや醤油をつけてご飯と一緒に食べるのであれば、おそらく悪くないだろう。たかが塩を抜いただけで、かくも味気なくなるものかと、意外な一面を発見してしまった。
忘れないようにメモしておこう。ランプは腰の部分、一番あっさりとしたモモ肉の部位である。ザブトンは別名ハネシタ、肩ロース芯。焼肉屋では「特上カルビ」として供されることもある。
ん?
- 最初に食べたマッタリしたのはザブトンではなかろうか?
- 後に食べたさっぱりしているのがランプでなかろうか?
- 店の説明はランプとザブトンを逆にしていないだろうか?
- バイトが間違えたのか?
まあ、いいか。
牛肉のボロネーゼ
パスタの茹で方よし、肉の味付けも薄味である。コクもあり、まったりとしていて、ソースとの絡みも良い、酒を飲んでいるというのに食が進んでしまう。仲間の中年らも競うようにパスタを食べていた。
最後のデザートも甘さ控えめで良い。塩が入ってないから安心して食べられる。
店はとても賑やかだ。グループでカジュアルに肉を楽しむならいいだろうが、一人や少人数でじっくりと肉を堪能するには向いていない。
メニューも同様だ。リーズナブルな肉をうまく料理して出しているので、価格も抑えられている。若い人には向いているだろう。
心残りと言えば「はもんみなかみ」を食べることができなかったことである。
機会があれば、ホテルへの通り道に見つけた、落ち着いた店で肉を味わってみたいものだ。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)