再訪したかった蕎麦カフェ
もう一度、食べてみたいとかねがね思っていた蕎麦屋がある。北海道北見市の更來だ。二年前、網走からの帰り、女満別空港に行く前にたまたま見つけた店だった。更科蕎麦が絶品で、妻に食べさせたくて、蕎麦をお土産に買って帰ったくらいだ。
「更科はゆで方が難しいので、気をつけてください。」
帰り際に言われた店主のアドバイスを無視して普通にゆでたら、大変なことになった。次回はきっと成功させるぞと心に決めていた。きっと今年の秋まで女満別空港を使うことなどないと思っていたら、急に紋別で会議が入り、せっかくなので女満別空港からのんびりと行くことにしたのだ。
定刻に到着した女満別行きの飛行機を降りて、レンタカーの手続きを済ませると、早速、車を店に向けて走らせた。16時くらいまでは営業しているとネットには書かれていたので、おそらく間に合うだろう。
蕎麦カフェ 更来(さらい)
30分ほどで店に着いた。ドアを開けて中に入る。14時前だというのに、店内には客が大勢いた。私はカウンター席に通される。
「すいません、本日は更科が売り切れて、二八と田舎蕎麦のみになります。」
なんだと?!
私はなんのためにここまで来たのだ?!
メニュー
現実は残酷だ。沖縄から三千キロもの距離を旅してここまで来たというのに、北の大地は私を拒むというのか。
ならば、いいだろう。二八にしようじゃないか。
さて、何を食べようか。前回は天ぷらを食べたはずなので、今回は違うものにしよう。
北見せいろだ。ごぼうと豚肉のあたたかいつゆ、美味そうだ。
それだけでは物足りないな。今朝はおにぎり一個しか食べていない。蕎麦大盛りもいいのだが、せっかくだからご飯物も食べてみたいぞ。
蕎麦屋のカレーも惹かれるのだが、よし。ここは更來丼ハーフだ。
私が注文を終えると、店内の客がパタパタと帰り始め、じきに店内の客は私一人になった。そばの食べ方を説明した貼り紙を見つける。
北見せいろ
しばらくして、色々と載ったお盆が私の前に置かれた。せいろはともかくとして、つゆや丼の容器がカフェだ。オシャレだ。そばカフェを名乗るだけある。
せいろには細くて角のたった二八蕎麦。更科もうまいが、こいつもなかなかだ。辛口のつゆに薬味も入れず、そばを少しつけて一気にすする。そばの香りが口の中に広がる。
これだよ!
次にせいろだ。熱いつゆにつけるとそばが少しふんわりする。辛口のつゆに豚の脂が甘みを足している。今度は蕎麦にたっぷりとつゆをつけ、肉と一緒に食べる。
美味っ!
なにこれ?そばだけじゃない。豚肉も美味い!箸が止まらない。
一気に食べてしまった。
更来丼
さて、次は更來丼だ。柔らかくて甘い鶏肉とご飯に海苔がポイント。あるとないとで味が変わる。海苔のおかげで二種類の味を楽しめる。
次に半熟玉子の黄身を玉子を潰す。よく混ぜる。甘くなるのだが、店員の言う通り味が薄くなった。タレを追加。食らう。
おおう!これはうまい。卵と鶏肉とご飯が渾然一体となり、口の中で広がるのだ。
炭水化物万歳。
漬物がいい付け合わせだ。箸休めだ。
「蕎麦湯をどうぞ。」
店員がオシャレなポットを運んできた。女子か?まあいい。まずは冷たい麺つゆに蕎麦湯を入れる。そこにネギとワサビを追加する。うん、オーソドックスに美味い。蕎麦屋に来たら締めは蕎麦湯だよなあ。
このシンプルさがいい。
蕎麦湯だけで飲むのも好きだが、蕎麦湯で暖められたつゆの香りもまたいいんだよな。次はせいろのつゆに蕎麦湯を入れる。肉とつゆと蕎麦が相まった豊穣な香りが口の中に広がる。をを!これはもうスープといっても過言ではない。
締めまで美味い!
さっきまでシンプルがとどうとか思っていたが、これもありだ。
デザートに蕎麦クッキーと麦茶が出てきた。本来はそば茶なのだが、今日は無くなってしまったとのこと。クッキーは甘さ控えめと言うか、クルミの甘さしか感じない。酒飲み向けのクッキーだ。やるなー。
お土産にそばを頼んだら、すべて売り切れたそうだ。私の後には客が一組。中国語と英語と日本語で会話をしている、私と同じ年頃の男性と、妻と同じくらいの中国人女性と、四歳くらいの子供の三人。謎の組み合わせだ。そこで閉店。ギリギリだった。下手したら更科どころか、蕎麦自体が食べられなかった。
次回は早い時間に来るようにしよう。もしくは平日だな。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)