さっちゃん
連日の飲み会で、すっかり疲れていた。昨晩もあっさり寝るつもりが、社宅で一緒に泊まった一石常務と部屋飲みで話が盛り上がり、寝たのは2時半だった。流石に今日はさっくり飲んで帰りたいと思い、誰も誘わずに一人飲みすることにした。では、どこで飲もうか?ネットで一軒の店を見つける。ここ、良さげだな。鬼怒川温泉駅前で商売をしている知り合いに尋ねると、いい店ですよとの回答があった。場所はホテルから遠くない。途中で鬼怒川の夜景を楽しみながら、歩いて行くことにした。
店の手前で店を見つける。鬼怒川スーパー。中に入って野菜を見る。安い。モノもいい。お土産はこの店で決まりだ。
そして、真っ暗な道を歩く。本当にここに店があるのかと不安になったが、さっちゃんはそこにあった。店には入るとカウンターに通された。先客は二組のみだった。
お通しは煮付け。少し甘めで薄味のつゆがしみて美味い。漬物はキムチときゅうり一本漬け。キュウリがうまい。キムチは気分ではなかったのだが、悪くはない。
鶏皮塩焼きは串ではなく、フライパンで炒めたもの。ベーコンのように皮の油でカリカリに仕上がっている。塩加減も絶妙。レモンをかけて水菜と一緒にいただくと、焼き加減もいい感じだ。美味い。
揚げ出し豆腐。絹ごしどうふだ。出汁も上品な味だ。美味い。
豚バラもやし炒め。肉の脂の旨味が引き出されている。美味い。
名物はポテトサラダ?
来る客来る客、みんながポテトサラダを頼んでいる。美味いのか?だが、無理だ。すでに腹がいっぱいだ。食えない。
BGMは昭和歌謡。
経験上、「酎ハイ各種」と書いてある場合、缶チューハイだ。大将に、レモン酎ハイは焼酎に炭酸とレモンか確かめると、そうだと言う。じゃあレモン酎ハイをオーダーしたところ「プシュッ」という音が聴こえた。え?炭酸水だよね、缶チューハイではないのよね、と言う思いも虚しく、缶チューハイだ。
話が違う!
仕方ない。こうなれば、最終軍事オプション、いわゆる飽和攻撃とやらをするしかない。
「すいません、いいちこボトルください。それと炭酸水にレモンスライス。」
炭酸水はサンガリアだ。関東では珍しい気もする。ウィルキンソンかサントリーの天然水スパークリングが欲しいところだが、まあ、仕方がない。グラスに氷を入れ、いいちこを入れる。レモンスライス二枚を絞ってグラスに落としてから、炭酸水を注ぐ。軽くステアして口に運ぶ。ああ、これだよこれ。私の中のレモンサワーとは、こいつなのだ。
カウンターの客と話をしながら、何杯かグラスを飲み干した頃、店のおかみさんから重大な事実を告げられる。
「この辺りはタクシーの営業が10時40分で終わるので、タクシーで帰るなら、いま呼ばないと間に合わないですよ。」
タクシーって一晩中走ってるものではないの?初めて聞く話だが、地元民の忠告に従って、退散することにした。
ボトルを入れたし、また来ることもあるだろう。その時はまず、ポテトサラダを食べてみたいと思うのだった。
居酒屋さっちゃん(食べログ)
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)